これはこれであり
執務を終えて自宮に戻ったサガを待ち受けていたのは、弟ともう一人。
時間帯を考えるとよもやいるはずのない彼女が、いた。
「こんな時分に何の用だ」
「それは……」
「怖くて一人では眠れんから共に寝てほしいそうだ」
「なにを馬鹿な!?」
カノンの口からから出た言葉に、サガは夜中ということも忘れて声をあげた。
当のエナガはと言えば、サガの声に肩を竦めているばかり。
ばつが悪そうな顔をしているあたり、エナガ自身愚かな頼みだということは自覚があるらしい。
そうでなくては困るし、そもそも分かっているなら最初から頼みに来なければいいものを。
……と、考えたところでサガはふと我に返る。
頼むにしても、誰に、正確には自分とカノンのどちらに頼む気でいたのだろうか。
始めこそ呆れ返っていたサガだが、よくよく考えたらこれは無視できない点だ。
口でこそとやかくダメ出しをするものの、彼女を慕っているのだから。
そして、それはカノンもまた然り。
どちらかと言えば、普段からエナガに厳しい自分の方が部が悪いとサガは思っている。
そんなサガの思考を見透かしたかのように、カノンは苦笑する。
「言っておくが、エナガは三人で眠りたいと言ったんだ」
カノンの言葉にサガは絶句する。
思わずエナガを凝視すると、エナガは気まずそうなぎこちない笑みを向けた。
「ほ、ほら、二人きりならいけないかもしれないけど、三人なら…三途の川……」
「それを言うなら川の字だろう」
「縁起でもないことを言うな」
「やっぱり駄目か…」
ため息をつくエナガを他所に、双子の間で無言のやり取りが交わされた。
その間僅かに数秒。
二人とも答えは一致した。
「駄目とは言っていない」
「えっ?」
サガから出るとは思いもよらなかった言葉に、エナガは自分が言い出した頼みだと言うのに呆然とした。
まじまじとエナガがサガを眺めていると、それを面白くないとしたカノンが続けて口を開く。
「なんだ。まさか冗談だったわけでもあるまい」
「そ、それはそうだけど…本当に良いの?」
「「当たり前だ」」
おずおずと不安げに見上げてくるエナガに、サガとカノンはきっぱりと言い放った。
要するに、ここで断って他の男のもとに行かれるくらいなら、断然マシということだ。
勿論、サガかカノン、どちらかだけに頼んでいたなら、話はまた別であったが。
あの数秒の間に、二人が互いに妥協点を見つけ出したなど、エナガは知るよしもない。
そんなこんなで、三人(正確に言えば二人だが)の短くも長い夜が始まろうとしていた。
(完)
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2015/4
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