それぞれの口実-後日譚-
【それぞれの口実-後日譚-】
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エナガのうっかり滑らした言葉からムウの想いが成就して数日後。
今日もまたエナガは白羊宮にやって来た。
相変わらず律儀に手土産を持参する彼女に、ムウが気を遣わなくていいと言うところまでが二人の挨拶、日課になっている。
「本当は言い逃げしようと思ってたの」
「言い逃げですか…もしかして私の答えは必要なかったのですか?」
「違うよ。断られるのが怖かっただけ。今となっては笑い話だけど」
「全くです。それに言い逃げなど私が許すとでも?」
「う、許さないと思う……結果論だけど」
バツが悪そうに肩をすぼめるエナガもまた愛らしいと、ムウは内心そう思うも、そこは敢えておくびにも出さず、この際とばかりに話を続けた。
「話ついでに一つだけ忠告しておきます」
「な、何?」
「いいですか、好いている者から他の男の話を好き好んで聞きたいと思う者はいません」
「え、…あ!もしかしてあの時機嫌が悪くなったのって……」
「そういうことです。情けない話なので貴方に言うのはどうかとも思いましたが、言わないと伝わらないこともありますから」
「そう…だね。私、見事にムウの機嫌を損ねることばかりしてたよね」
過去を振り返っているのか、盛大に後悔していますとばかりにエナガはテーブルに両肘を付き頭を抱えている。
「ごめんなさい」
「いいのです。結果良ければ全て良しですから」
「ありがとう。これからは気を付けるよ」
「是非そうしてください…と言いたいところですが、構いません」
「え?」
「但し話すのなら……」
どうなるのか、と、抱えていた頭をエナガが上げれば、視界に飛び込んで来たのは至近距離にあるムウの微笑と―――。
「今以上のことをしますので、覚悟してください」
一瞬ばかり口に触れた温かで柔らかな感触が何であるか。
思考が完全停止した彼女が理解するのは、あと数秒後のことだった。
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