呪われる運命

 ―――『エクソシスト』・・・・それは、神に魅入られた者達。彼らは闇より現る禍禍しきものを葬るために在る。

 黒の教団に来てからというもの、何度も何度も耳にタコができる程、半ば洗脳させるかのように聞かされ続けてきた話だ。
 しかし、その話を思い出せば、常に彼女はこう思うのだ。

(本当に葬らなければいけない存在とはなんなのか。)

 聞かされ続けた言葉たちをあざ笑うように、彼女は歪な笑みを浮かべるのだった。

 彼女が向かい合うデスクは、雑多に物や書類の類が置かれ、お世辞にも綺麗とは言い難い。
 けれど、机の上の汚さには目もくれず、肩につく赤い髪を軽く乱すように頭を掻いて、彼女はかけていた赤いフレームの眼鏡を机に置いた。
 眼鏡の側に置かれたマグカップの中身は既に冷めきっているのか、湯気のひとつも上がっていなかった。
 しかし、冷めた中身にも気にする素振りもなく、彼女はカップを手に取り冷めた中身に口をつけた―――その時だった。

<<こいつアウトォォオオ!!!>>

「・・・・・・・・」

 城内に響き渡った大声は、当然、彼女の部屋にまで聞こえてきた。
 冷めきったコーヒーを一口飲むと、彼女は溜め息を吐いて、眼鏡を掛け直してゆっくりと椅子から立ちあがる。

「やっぱ、あの門番ヤるか・・・・」

 一人で使うには大きすぎるベッドの上に転がされていた赤いサーベルを手に取ると、彼女は不敵な笑みを浮かべ部屋を後にするのであった。
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