至って落ち着いた声色で、抑えた声量。
そんな喋り方で、アンジェは電話越しのコムイへと「いいか、落ち着いて聞け」と声をかけ、「実は・・・・」と本題を切り出した。
「ケビン・イエーガーがやられた・・・・遂に奴らが動き出したようだ」
電話越しにコムイの動揺する声が聞こえてくる。
けれど、アンジェは言葉を止めることなく続けた。
「ジジイの背中に『神狩り』と書かれていた・・・・ああ、恐らくそういうことだろうな」
焦った様子も、動揺する様子もなく、淡々とアンジェは言葉を続けていく。
「わかった、私は一旦戻ろう。ジジイの遺体はどうする・・・・そうか、ならそうしよう」
言葉を続けながら、アンジェの表情はいつになく明るく、嬉しそうだった。
大体の一連の流れを見ていたティキは、頬を引き攣らせ、冷や汗を流していた。
―――怖ぇ女・・・・。
内心、肝を冷やされたティキだったが、嬉しそうに表情を緩ませるアンジェの横顔を眺めているのは悪くはないと思い至ると、ティキは通話が終わるまでアンジェを凝視し続けた。
やがて話がまとまり通話を終えれば、アンジェは表情を一点させ、ジトリとティキを睨みつける。
「なんだ、じっと見つめやがって・・・気色悪い」
「気色悪いって・・・・酷くね。俺はただ、『あーやっぱりアンジェは美人だなー』って見とれてただけなのに」
「・・・・見物料でもとってやろうか」
ティキの言葉に一瞬呆気に取られたような表情をしたアンジェだったが、すぐに呆れたような表情になり、溜め息を吐いた。
そうして部屋へ戻ると、当然のように後ろを着いてくるティキ。
けれど、特に止めることも無く部屋への入室まで許したアンジェは、やはりどこか上機嫌なようだった。
「なあ、もしかして、あの爺さん殺れて嬉しいわけ?」
「あ・・・・?」
「いや、さ・・・あの爺さんにトドメ刺してから機嫌良さそうだから」
「・・・・嬉しい、か。そうだな・・・嬉しいのかもしれないな」
僅かに考える素振りを見せたアンジェだったが、少しして素直にティキの問いに肯定してみせた。
しかし、どこか含みのある笑みを浮かべて答えたアンジェに、ティキは引っかかりを感じる。
けれど、そこに触れたところでマトモな答えは返ってこないだろうと考えたティキは、開きかけた口を閉ざし、先程アンジェが電話しに行った直後のことを思い出していた。
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