バレンタイン/灰羽リエーフ
皆でつまんでね、と既製品のチョコ(お徳用)を練習前の部室に差し入れに行った
「えー!手作りじゃないんですか?!」
「手抜きだー!」
「文句言う人は食べなくてよろしい!!」
ブーブー言う後輩たちにぴしゃりと言い放てば、いそいそと自分の分を確保し始めた
…リエーフ以外は。
「嫌です。俺、先輩の手作りじゃなきゃいらないです」
拗ねた子供のような態度に思わず溜息が溢れた。
この大きな駄々っ子に困らされたのは一度や二度じゃない。とは言え、
もうじき後輩が入ってきて先輩になるというのに、こんな調子で大丈夫なのだろうか
「リエーフ…先輩だって忙しい中わざわざ来てくれたんだから…」
芝山が宥めるけれど尖らせた唇はそう簡単に元通りにはならない
「じゃあリエーフは無理に食べなくていいよ。リエーフ以外の皆で分けて?」
俯いてしまったリエーフを放置して部員の皆に軽い謝罪と激励の言葉をかけて部室を後にした。
練習にまで響いてしまったら申し訳ないな、行かない方が良かったのかな…。
善かれと思ってやった事が裏目に出てしまった気がしてかなり落ち込んでしまう。
そして次の登校日。
リエーフは私の下駄箱の前に大きな身体を小さく折り畳んでしゃがみ込んでいた。
「こーら。こんなとこで体冷やして何してんの」
「先輩…」
綺麗な銀髪をぐしゃぐしゃと撫でれば、捨てられた子犬のような瞳が私を見上げた。
「ほら、邪魔になるから立って。温かいとこ行こ?」
「この間は、スミマセンデシタ…」
「もういいって。ほら歩く歩く」
「先輩、俺のこと呆れちゃいましたか?」
「あのね、リエーフ。呆れちゃったら、わざわざこんなの持ってこないから」
小さな紙袋をリエーフに差し出す。結局私はこの駄々っ子に甘いのだ。
「これ!!手作りですか?!」
「リエーフの分しかないんだからね。自慢したりしないこと」
「はいっ!」
紙袋を掲げて、本当に嬉しそうに笑ったリエーフ、絶対自慢するなこれは。
「先輩!大好きッス!ホワイトデー期待しててくださいね」
ああ、また夜久に「あんま甘やかすな!」って怒られちゃう。なんて苦笑いが浮かべた卒業間近の和やかなひと時。
2015.02.13
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