「やあ。君が沙羅ちゃんかい?」


そしてついにデビューの時はやってきた。
建物の一室で今まさに1人の男と向かい合っている。
週末にくる金髪の若い男で名前をサンジと名乗った。


「はじめまして。よろしくお願いします…」


「緊張してる?いいよ。オレの前では気ィ抜いてて。君の姉さんからよく話は聞いてるし。」



黒のスーツをきちんと着て、慣れたように言葉を紡ぐ。
一緒に部屋の奥へ進むとサンジさんはネクタイを解きジャケットを脱いで几帳面に壁のハンガーへかけた。


「今日がデビューなんだって?」


どうしたらいいかわからず動けずにいると、サンジさんが自分の腰掛けたベッドの隣をポンポンと叩いて呼んでくれる。失礼します、と一言添えて隣にお邪魔した。


「そうなんですよ。ずっと憧れてた世界だし、ママや姉さんに色々教えてもらってはいるんですけど、やっぱりいざ男の人を目の前にすると緊張するっていうか…」


「そっか。そうだよね。オレの前では本当に、緊張しなくていいんだよ?仲良くさせてもらってる女の子の妹なんだから。オレ本当に君に会いたかったんだ」


綺麗なお口が三日月のように弧を描いて釣り上がる。
誰にでも吐いてそうな台詞なのに、
とても綺麗に、純粋に笑う人だなあ。
ママはこの人の何に気をつけろって言ったんだろう。



「そう言ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます。」


「敬語じゃなくていいよ。オレのこと呼び捨てにしていいし。」


「あ、えっと…じゃあ、初対面だし、徐々に…」


「おっけー。沙羅ちゃん本当に可愛いね。仕事以外ではこういうの経験したことあるの?」


「い、いや…私ずっとここでは世話役で外には出られなかったから…経験もなくて…」


「そうなの?」


サンジさん…サンジくんは、驚き少し困ったように目を見開いていた。



「…そっか。驚いたよ。今日のために大事にあっためられてたんだろうね。沙羅ちゃん、すごく可愛いし」


「か、可愛くないですよ!もうっやめてください!」


「ハハッ、やっと笑った。」



そう言って彼は同じように笑って私のこめかみにちゅっ、と音を立て吸い付くようなキスをした。


「きゃっ…」


「沙羅ちゃん。オレ仕事終わりで大分汗かいちゃったからさ、一緒にシャワー浴びよ?」


 - BACK -
 - TOP -