『そのヒーローの中にはデクやウラビティ、ショートといった人気プロヒーロー達も多くいたようで、迅速かつスムーズな連携でしたね』
朝。慌ただしく準備をしながらもテレビの電源を入れてニュースを聞き流す。
今日もどこかに蔓延る敵を、見過ごすことなく鎮圧するヒーロー・・・それをメディアが取り上げる、という流れはこの世界において日常的なものだった。
『ええ。中でも活躍が目ざましかったのは、ショートですかね。彼の氷の"個性"によって道路や建物への被害を最小に抑えられたのが大きかったかと思います』
もう何度もニュースでは登場する名前にぴく、と反応してしまう。
弁当を作りながら、ラジオと化していたテレビにちらりと目を向けた。
ー赤と白の鮮やかな髪色に、火傷跡を込みにしても整った顔立ち。紺を基調としたヒーロースーツからは筋肉質な腕が見えている。
そんな風貌の彼が、巻き込まれた一般人を救助しているところが遠目から映されている。
『ショート・・・』
プロヒーロー、ショート。
この名を聞かない日は無いと言うほど、彼の社会への貢献度や注目度は高い。プロヒーローとして独立したのが数年前にも関わらずこの支持率、人気。そのルックスから女性人気No.1とも言われているがそれを鼻にかけることも無く、彼は『ヒーロー』として目の前の救える人を救うことを全うしていた。その飄々とした態度もまた人気を沸かせる理由のひとつなのだけど。
〇
ガタンガタン、と電車に揺られて5駅先。ここが私の職場だ。
「おはようございます」
「お、おはようみょうじちゃん。今日は?」
「あ、今日は調書を・・・」
「あの例の事件の被疑者のだっけ?精が出るねえ」
からからと笑う上司に、笑いごとじゃないんだけどな・・・と内心ため息をつきながらも席につき、今日当たることになる被疑者の情報やそれらに関連する事件の概要をざっと目に通す。最近厄介かつ世間を騒がせている事件ともあって、いつも以上に気も引き締まる。今回の取り調べが事件を収束させる手がかりのあるものになれば・・・。これ以上犯罪人をのうのうと世に放っておくわけには行かない。
『・・・頑張ろう』
検察官として、できることを。