約束しよう


「うおおおおお」

ラブーンと、その仲間の海賊達。
そしてキキ自身の話を聞いた後、静まり返った双子岬にルフィの雄叫びが響いた。
手には自分達の船のメインマスト。
勢い良く駆け上がるのは、ラブーンの図体。

「何やってんだあのバカはまた」
「ちょっと目を離したスキに…」
「山登りでも楽しんでんのかね」

ゾロとサンジが呆れ声を上げる中、キキは複雑な表情を浮かべてルフィを見ていた。
何をしでかそうと言うのか、興味と不安と少しの期待が少女の胸を覆う。

「ゴムゴムのォオオオオ、“生け花”!!!!」

期待は消え去り、不安だけが的中した。
瞬く間に大声を上げて暴れ出すラブーンと、ルフィに怒りを向けるクルー達。
ルフィはラブーンに振り回されていた。

(ラブーン…!)

キッと目を変えたラブーンが灯台の方へ突っ込んでくる。

「危ねェ!」

逃げる気配のないキキがサンジに抱えられ、何とかその場を回避するが、ルフィはその巨体の下敷きになっていた。

「大丈夫さ、あいつはゴムなんだ」

飛び出そうとするキキを、サンジが制止する。
納得の行かない表情ではあったが、キキはただ、ルフィとラブーンの戦いを見ている事しか出来なかった。

「ルフィ!!てめェ一体何がやりてェんだ!!!」

ラブーンに弾かれ、灯台に叩き付けられてそのままズルズルと降りてきたルフィは、ゾロがそう問い掛けても真意を語らない。
岬にはラブーンの声が響いている。

「クジラが心配なのかい?」

不安そうなキキに、サンジが問い掛けた。
少女は小さく頷いて、雄叫びを上げるラブーンを見上げるが、その声は止まることなく響く。

(ああ、…優しい子だ)

今にも泣き出しそうな雰囲気が漂うキキの横顔を眺めながら、そんな事を思った。
サンジが深く被ったフードの上からキキの頭に手を乗せて優しく撫でると、彼女は彼を見上げ、瞳を揺らした。

「引き分けだ!!!!」

そんな時、沈黙を破るルフィの声。
ラブーンは一旦に大人しくなり、その言葉に耳を傾ける。

「おれは強いだろうが!!!!」

何が言いたいのか、誰にも掴めやしなかった。

「おれとお前の勝負は、まだ決着がついてないから、おれ達はまた戦わなきゃならないんだ!!!お前の仲間は死んだけど、おれはお前のライバルだ。おれ達が偉大なる航路を一周したら、またお前に会いに来るから、そしたらまたケンカしよう!!!!」

ルフィの声がこだまする。
ラブーンは泣きながら声を上げて、キキは嬉し涙を零しながらふわりと微笑んだ。

(良かったね、ラブーン)

キキの声は届かない。
けれど想いが溢れるのを、サンジは隣で感じていた。

「やるだろ?うちの船長」

キキは大きく、頷いた。