君のダメなところ


頭の後ろで腕を組んで、上機嫌に鼻歌をうたいながら歩いている赤い背中を見ている。
今日は久しぶりのデートだっていうのに、相変わらずデート先はおなじみの競馬場。
毎度毎度、デートする先はパチンコか競馬場か、近所の公園かまさかの実家。
隣で楽しそうにしている顔をみるのが好きだから行き先に不満なんてないって思っていたけど、流石に少し食傷気味になってきてしまった。
おそ松の後ろ頭で元気よく跳ね上がっているアホ毛を見ながら、無意識にため息がこぼれおちる。

「ん?どうかしたぁ?」
「……どうかした」

ため息を聞きつけて振り返ったおそ松が、いつものようにへらりと笑う。
そんな風に笑われたら困る。
楽しそうに、上機嫌に笑っている彼に弱いのは自覚済みで。
いつも彼のやらかすどうしようもないことに腹が立って怒ろうと力をいれても、おそ松の顔を見てしまうと力が抜けてしまう。
毎回そうだ。それがよくないのかもしれない。
今日こそ文句くらいは言わせてもらおうと、なるべくおそ松の顔をみないようにして拗ねた態度で顔をそむけて見せる。

「ありゃ、どったの?急にヘソまげてぇ」
「胸に手を当てて考えてみたら?」

彼の語尾を伸ばす癖にも弱い。
甘えるような口調で顔を覗き込まれると、何しても流されていいかなと思ってしまう。
今日は強気の対応をしなきゃと、慣れないつんとした態度で虚勢をはっているのに。
おそ松はいつも通りふにゃふにゃした態度で、え?いいのぉ?と人の胸に手を伸ばしてくる。
お約束にすぎる!
伸びてきた手をぺちりと叩き落とす。

「じーぶーんーの!」
「俺のおっぱいなんて触ったって面白くないでしょ」

どうしてかおそ松が不満顔で私に訴えかけてくる。
触る触らないの問題じゃなかったはずなのに!
彼はこうやっていつも話のすじをズラして茶化そうとする。

「面白いから触るんじゃないの!今は、自分の行いを振り返る為です」
「行いねぇ」

半目で何か考えるようなたくらむような顔をしたおそ松が、彼の手を叩き落とした私の手を掬い取った。
ああ、この目にも弱い。
こういう顔のおそ松は私を誑し込もうとしていると解っているのに、いつもいつもこの顔の彼に逆らえた試しがない。
脳内のアラームを聞きながらも目の前のおそ松から目を逸らせずにただじっと彼の言葉を待ってしまう。
もう随分と彼に毒されてしまっている。

「一緒にいられるだけで嬉しいってだけじゃダメ?」

なんて、普段は下がらない眉をへにゃと下げながら。
指と指をからめるように手をつないでくるものだから。
絡めた指が思いのほか骨ばっていて、心拍数があがってしまうものだから。
ね?なんて言って、いつもの笑顔を見せてくるものだから。

「…………もう、仕方ないなあ」

今日だけは許してしまおう。
繋いだ手が嬉しくて、ピタリと肩も触れるほどに寄り添いながら歩く。
いつもいつも、自分の都合のいいように私を振り回す悪い人。
だけど、盗み見た頬がゆるんで目が合えばにじむように微笑んでくれる。
その笑い方は私にだけ見せてくれる顔だって知っているから、今日も私は彼を許してしまう。

「んじゃ、お財布もカラだし今日はもう家帰ろっかー」
「ちょっと嘘でしょ!」

それでもいい加減に一言くらい文句は言っておいた方がいい気がしてきた。


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