虹村形兆は救われたい
(二次)
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「もうすぐお兄ちゃんになるのよ」と、大きくなったお腹を撫でながら、穏やかに微笑む母に、幼き日の虹村形兆は頷いた。
 いいお兄ちゃんになるんだと張り切る形兆に、えらいわねと母親が褒める。弟をよろしくねと母親に頭を撫でられた形兆は、その心地よさに頬を緩ませた。
 母親に言われて、形兆は母の腹部におそるおそる触れた。ここに弟がいるのだと、幼いながらに理解する。

「ほーら億泰君、お兄ちゃんですよ」
「……動いた」
「形兆も話しかけてあげて」

 お兄ちゃんだよ、産まれてきたらいっぱい遊ぼうね。そんな言葉を掛ける形兆に応えるように、母のお腹の内側からはぽこぽこと震動が伝わる。弟が蹴っているのだ。
 歓声を上げる形兆に、母が優しい目をする。

 ――うまれてくるの、まだかなまだかな。
 虹村形兆は、弟が産まれることを心待ちにしていた。




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 産まれて程経たない弟に、掛かり切りになる両親。いい『お兄ちゃん』でいたい気持ちと、両親の愛を取られたくない気持ちがせめぎ合い、幼い形兆の内心は複雑だった。
 そして、遂にある時、弟に手をあげた。悪いことだとは分かっていた。形兆の手にあまり力が入っていなかったせいか、弟は何をされたかも理解していないようだった。
 きょとんとしている弟に、酷い罪悪感と、とんでもないことをしてしまったような気持ちが湧く。そこに叱る両親が加わって、形兆は不安と恐怖に、大声を上げて泣き出した。自分に非があり、両親は味方をしてくれない。愛されていたい、取られてしまう。

 どうすればいいかも分からずに、感情のままに泣きじゃくる。いつも「いい子」でいた彼が、そんな様子を見せるのは、両親にとっても珍しいことだった。
 そんな形兆を、困ったように母親が撫でる。父親は、彼を高い高いと持ち上げた。彼もまた愛する我が子なのだと示すように、形兆をあやす両親に、形兆の目に先程までのものとは違う涙が溢れる。
 安堵とも呼ぶべきその感情の中、父親に抱えられながら、形兆は言う。

 ――おとうさんすき、おかあさんすき。おくやすもすき。ごめんなさい。
 その日、虹村形兆は、後悔に占められた心の内で漠然と、弟は自分が守るのだという思いを抱いた。




- 2

 兄として張り切る形兆は、率先して弟である億泰の面倒をみるようになった。
 父がいて、母がいて、弟がいて。そうして過ぎ行く日々は、幸せに満ちていて。それがずっと続くものなのだと、信じていた。




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 変化は突然で、そして、あっという間だった。
 父の会社の経営不振に重なるようにして、病に倒れた母はすぐに儚くなってしまった。

 増える借金も相まって、荒れた父親は形兆達に暴力を奮い始める。はじめのうちは、手をあげたことを謝っていた父も、次第に謝るより怒鳴る回数の方が増え、理不尽を言うようになり、形兆が反抗すると更に殴るという行動に出るようになった。そこに、かつての父の姿を見ることはできない。
 形兆は、そんな変わってしまった父が怖かった。痛いのは嫌で、悲しくて、震えて。殴られる億泰を庇うこともできない、惨めな自分に歯噛みした。
 泣く億泰を、そんなじゃ駄目だと諌め、耐えることで父親をやり過ごす。
 ――嫌いで、相容れない。あんな風にはなりたくない。

 もう居ない母が、戻らない日が、幸せの象徴だった。
 母に会いたいと繰り返し言う億泰に、もう会えないのだと何度も伝える。できないものはできないのだ、億泰だってそれは分かっているのだろう。それでも会いたいと、億泰が泣く。母とは二度と会えない。そう告げた形兆の頬を、一筋の涙が流れた。




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 借金を返すあてができたと話す父親は、ここ暫く類を見ないほど上機嫌な様子だった。返すどころか、余るほどだと。子供の形兆にも、その余りにうますぎる話に何かがおかしいことは分かった。それが何かは分かることなく、程なくして、父の言う通り、以前より金銭に余裕のある生活ができるようになり、父も穏やかさを取り戻し始めた。だがその生活の中に、母の姿はない。

 ごめんな、と久方振りに口にした父親は、それで許された気になったようで、昔のように形兆の頭を撫でた。虫のいい話だ。父親にされてきたことを思うと、形兆は到底その一言だけでは許せなかった。昔はあんなに嬉しかったはずの頭を撫でられる行為も、今は不快感を抱くだけだ。同時に湧いた、父親への不信感は、今もなお形兆の中に渦巻いている。

 ――また同じようになったら、殴るくせに。
 胸の内のわだかまりは消えない。何も考えず、撫でられて喜ぶ億泰の気楽さが、羨ましくもあり、腹立たしくもあった。




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 形兆の目の前にいるのは、既に人の形をしていない、肉の塊となった自身の父親だった。こんな姿になっても、父親は生きている。
 一年ほど前の事だった。昼の二時頃、形兆が学校から帰宅すると、尋常ではない様子で苦しむ父親がいた。救急車を呼ぼうとする形兆に、無駄だと言った父親は、はじめこそ会話が成立したが、そのうち錯乱したようにわけのわからないことばかり口にするようになった。
 幼い虹村兄弟にこの現象の対処ができるはずもなく、父親の庇護なく日々を生きるのに精一杯でいるうちに、月日は過ぎる。父親のその身体が異形と化す頃には、発するのは、意味を成さない音ばかりになっていた。

 異形となった彼はどうやら、自身の息子――形兆と億泰のことを、正しく認識できていないらしかった。

「そんなもの漁ってないで、しゃんとしてくれよ、親父」

 一心にガラクタ箱をあさる父親は不気味で、呼び掛けにも応えない。
 虹村家はかつての大きな借金で、父に金銭の工面を幾度も打診されたことにより、親類や知人とはことごとく縁が切れていた。形兆と億泰は頼るべき大人もなく、居るのはたった一人、父親だけだったのだ。
 その父親が、このさまである。不安そうに形兆の服を掴む己の弟に、形兆自身が何とかする他ないのだと――この幼い弟には、自分しかいないのだと、形兆は理解した。




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 父親が錯乱しながらも零していた単語を繋ぎ、形兆が調べて分かったのは、父親は邪悪に加担したがためにこうなったという事実だった。
 あの大金は、まっとうではない方法で手に入れられたもので、父親はその報いを受けたのだ。

 ―― 親父は、馬鹿だ。
 苦い気持ちが、形兆に付き纏う。調べるほどに出てきた情報は、DIOの邪悪さと悍ましさを形兆に伝えた。金欲しさに、そんな奴の配下になった父親の気が知れない。
 浮かぶ軽蔑と、罵倒してやりたい気持ち。しかし、その感情をぶつける相手は、既に言葉も通じない異形と化している。

 形兆の父親が肉の塊となった原因は『肉の芽』――DIOの不死身の細胞にあった。
 DIO、肉の芽、吸血鬼、スタンド――。父親という実例を、目の当たりにしているからだろうか。超常的な内容ながら、形兆には、不思議とそれを疑う気は起きなかった。

 そうして、形兆が父親の置かれている状況を知る一方で、父親の姿を戻す方法は、一向に見つからなかった。
 DIOを倒した人物でもある空条承太郎が、過去に肉の芽を埋め込まれた人間から、それを取り除いたという記録はあったが、形兆の父親は、埋め込まれた肉の芽と一体化してしまっている。

 ―― 一体化。
 まさかと思った形兆が、ガラクタ箱を漁る父親の手を掴む。箱の中にはガラス片もあったはずだが、父親の手に怪我は見られなかった。形兆は、恐ろしい想像をする。
 突然手を掴まれた父親は、邪魔をするなとでも言いたげに、形兆を振り払った。その勢いで、ガラクタ箱の中に振り降ろされた父親の手には、無数の傷ができる。
 そして、形兆は見てしまう。蠢き、盛り上がった肉が、たちどころに傷を埋め、怪我を治すのを。

 ―― 親父は、不死身の化け物になってしまった。




- 7

 肉の芽を取り除くにも、一体化してしまっていては、どうしようもない。
 形兆の父親は、その“どうしようもない”状態になっていた。父親は、決して治らない。

 ――じゃあ、どうしろってんだ!
 叩きつけた拳は、痛みを訴えるだけで何の解決も齎さない。認め難い現実に、形兆は憔悴していった。

「あにき、あにき」

 呼びかけてくる弟を、形兆は無視する。最初は可愛くて仕方なかったはずなのに、最近はそれに苛立ちが混ざるようになってきた。

「なあ、これどうすればいいんだ」
「知らん」

 無視されたのにも関わらず、億泰は尚も訊いてくる。形兆が答えなければ、ずっとこのままなのだろう。
 形兆自身も精一杯だというのに、頼ってばかりの出来の悪い弟に、無性にイライラする。

「あにき、」
「そんなことも分からないのかッこの愚図!」

 億泰を怒鳴りつけた形兆は、これ以上纏わりつかれないためにも指示を出し始める。億泰は目元を赤くしながらも、嬉しそうに形兆の話に耳を傾けた。
 ――ああ。
 弟がかわいくて、憎らしくて、鬱陶しくて、嫌い切れないのが苦しい。




- 8

 全てを、投げ出してしまいたい気持ちになった。
 苦しみから逃げてしまいたくて、嫌なこと全て忘れてしまいたくて。

 ふと形兆に、あの異形を見捨ててしまえばいいのではないかという考えが浮かぶ。
 あれがいるのが問題なのだ。その入手方法こそ嫌悪すべきものだが、父親の残した金銭があれば、兄弟二人が生きていくことはそう難しくない。実際、この日まで、形兆達はそうして生きてきている。
 異形をここに置いて、父親のことは忘れて。新しい生活を始めて、そうしたらもう、思い悩むことも、弟に怒鳴る必要もなくて。

 それで、――それで?
 形兆には、その未来を選んだ自分というものを、思い描くことはできなかった。自分が何をしたいのか、どうなりたいのかも分からない。思考に付き纏うのは、残していく異形の事ばかりだった。

 父親には、自分達しかいないのだ。その自分達が見捨てれば、父親は本当にひとりになってしまう。
 ……残された異形は、ずっとあのガラクタ箱を漁りつづけるのだろう。形兆達がいなくなったことにも、気が付かないに違いない。気が付かず、変わらず、居続ける。
 ――死ぬこともできずに、そのまま?
 そう考えて、形兆はぞっとした。あの化け物に、「父親」は期待できない。だが、かつては確かに、形兆達の父親だった。その血の繋がりは否定できず、思い出は離れることを許してくれない。
 やるせなさに、唇を強く噛む。口に広がる血の味は、どこか苦かった。




- 9

 どうすればいいのか。決められないままに時間が過ぎるほど、不安は募っていく。
 八方塞がりで、出口がない場所にいるような気分だ。実際、出口なんてものはなく、このままではいけないと、何かに追いたてられるような気持ちが、形兆を焦らせていた。
 わけのわからないことばかりしている父親、形兆におんぶに抱っこな弟。形兆には何もかもが気に障って、心は荒んでいく一方だ。

 そして気付いたときには、形兆は平然と父親や弟に暴力をふるうようになっていた。
 最初の内は、酷い罪悪感を抱いていたような記憶がある。やめようと思って、でもカッとなった、その次の瞬間には手が出ていて――。自分を止められるだけの、心の余裕がないのだ。

 それを自覚した時、形兆は愕然とした。
 ――所詮自分も、親父と同じか。

 追い詰められている人間の心理というものを、形兆は己が身で理解してしまった。今なら、借金で苦しむ父親が、自分たちに暴力をふるった時の気持ちが分かる。
 謝罪を口にしながら、後悔の滲む顔をしながら、それでも暴力をふるった父親。その父親の行いを、肯定するわけではない。その行いを、正しいとは思わない。だが、そう行動してしまった気持ちには、同情できるところがあった。

 形兆は震える。
 冷たくて重いものが、肺にのしかかっている。息を止めてしまいたいような、このまま水底まで沈んでしまいたいような気分だ。
 父親の立場が、心地が分かり。それを、かつての自分は許さなかったのだと、形兆は漸く理解する。
 そう、許さなかったのだ。いかな理由があろうと、父親の行いは悪いことだと断じた。そんな形兆が、今の自分を許せるはずもない。

 苦しい、と言葉を紡ぐはずの唇は、動かすこともできずに、ただ、弱い息だけが、形兆の唇の隙間から抜け出ていった。




- 10

 父親を死なせる。それが、治せないなりに、手を尽くせないか考えた形兆の出した答えだった。化け物となった父親を、元に戻せないのならば、せめて普通の人と同じように死なせてやりたかった。
 ――だが、あの化け物は、普通の方法で殺すことはできない。再生能力を持つものには、それを上回るほどの攻撃が必要だ。

 一本の矢が、形兆の視界に入る。
 これはただの矢ではなく、『スタンドの矢』と呼ばれる、スタンド使いを選別する道具だ。選ばれた者は能力を得、選ばれなかった者は命を落とす。
 形兆がまだ、父親を治す手掛かりを得ようと、情報調査に奮闘していた頃。エンヤという老婆について調べた折に、その弓と矢の存在も知り、父親が管理を任されていたらしい隠れ家のひとつに保管されていたものを手に入れたのだった。
 あの頃の形兆は、父親が決して治らないことを知り、不安と絶望に駆られるばかりで、この矢のことを気にしている余裕はなかった。今となっては形兆も、超常的な現象を引き起こせるという『スタンド』が、そこまで万能なものではないことを理解している。
 ――そう。だから、これは一種の賭けだ。




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 父親にスタンドの適性があったことから、自分達も矢の選別で生き残れる可能性は高いと、形兆は予想していた。
 ……それでも、自分と同じく矢を受けた億泰が、生きていたことに、形兆は心底安堵する。彼だけは、自分を一人にしない。それを感覚的に理解して、無性にほっとした。
 弟の存在が、重荷でもあり、支えでもあった。




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 己のスタンドの能力を確認した形兆は、その威力の高さに息を呑む。これなら、あの化け物が再生する前に、その身体を潰し切ることができるだろう。ようやく、これで終わりに出来ると目を閉じる。――これで、父親を死なせてやれる。
 嫌なものは、すべて消えてしまえばいい。そう思いながらも、壊して、消して、取り返しがつかなくなってしまうことが恐ろしかった。
 震えを抑えつけ、覚悟を決めて、形兆は父親――否、父親だったもの、異形の化け物と対峙する。

「『極悪中隊』、全体戦闘態勢ィーッ!」

 喉が裂けそうな程に叫ぶ。形兆の前に隊列を組み並んでいた『極悪中隊』は、一斉に攻撃の構えをとった。

「攻撃開始!」

 重みのある破裂音が響く。身体の底から、揺さぶられるような衝撃。
 抉れた血肉、爆ける化け物。それでも形兆は、攻撃を絶やさなかった。化け物は無抵抗に攻撃を受け、次第に形を失っていく。

 口元が、歪む。唇から、ふっと息が零れた。それに引きずられるように、形兆から笑い声が漏れる。
 暫くの間、くつくつと喉奥で笑っていた形兆は、やがて大声を上げて笑いだした。形兆の瞳からは、幾筋もの涙が流れる。

 ――息が整わない。
 恐怖と興奮で、ハイになっているらしい。何が何だかも分からず、ただ、これで終わりだ、終わったと思うと、涙が溢れてくる。
 形兆は、自分が喜んでいるのか、悲しんでいるのか、よく分からなかった。頭の中はぐちゃぐちゃで、感情はもうとっくに振り切れてしまっている。

「……ああ」

 上がった息も落ち着いてくると、今度は急に悲しみの塊が込み上げてきた。いや、悲しみというには、あまりに辛さと苦しさの度合いが強い。

 ――もう、いいだろう。
 そう、形兆が思ったと同時に、『極悪中隊』がふっと消える。先程までスタンドを向けていた場所には、化け物の残骸が飛び散っていた。原型を留めてもいない。
 ……形兆の父親は、死んでしまった。

「ッあああああ!」

 慟哭。父親は、手の施しようがなかった。どうしようもなかった。
 形兆には、その事実を認め、受け容れることしかできなかった。その「受け容れる」ということが、あまりに辛く苦しかった。
 遠くに置いてきたはずの感情が、一気に追い付いては、溢れてくる。一度溢れてしまっては、もう止めようもなかった。

 ひとしきり涙を零した形兆は、心身共に疲れを感じながらも、どこかすっきりした心持ちでいた。

 ――片付けなければ。
 そう思い、形兆は血に濡れた床を見る。……何かが、おかしい気がした。

「……」

 音がする。己の呼吸音に霞んで、聞こえていなかった。何かを引き摺るような音。
 ――この染みは、こんな場所にあったか?
 ――この部屋の光景は、もっと凄惨ではなかったか?

「っひ、」

 ずるり、と。分かりやすいまでに音を立てて、形兆の視界にあった血肉の染みが動いた。いや、もう染みではない。不定形ながらも塊となっている。
 形兆は一歩後ろずさる。化け物がいた場所では、蠢く肉片が、元の形をとろうとしていた。その意味を、理解する。

 足りなかったッ! 届かなかった……!
 形兆の力では、どうしようもなくッッ!

 その場に崩れそうになる身体を、形兆は押しとどめる。ここで折れてどうするのだと、己を叱咤して、形兆は弓と矢を手に取った。




- 13

 自分の力で不可能ならば、他人の力を使うまで。
 そうして形兆は、人殺しになった。
 矢の選別で、選ばれなかった幾人もの人間が死んだ。……父親を殺そうとしたのだ。人を殺すことに、今更何を怖がることがあるのか。これが自分の決めたことだと、そう己に言い聞かせて、形兆はその『作業』を続けた。

 弟のスタンドでも、父親を殺すことを試みた。削り取るよりも、化け物の再生の速度の方が勝った。……果たして、どこに消えるかもわからないものを、「死」とは呼べるのだろうか。削り取る速度が再生に追いつかなかったことに、形兆は少しだけ安堵してしまった。

 立ち止まれば、すぐにでも不安が己を殺しにかかってくる。先が見えないから、計画を立てて、それをこなすことで安心を得た。
 何が最良だったかなんて、今でも分からない。正しいともわからないものを、破綻させてはならないと、必死になっている。繰り返し、続けていれば、いつかは父親を殺すスタンド使いが見つかると、それだけを信じて。

 虹村形兆は、今日もそうして弓を構え、矢を放つ。




 ただ、形兆は思うのだ。もし、もしも自分に、手を差し伸べてくれるような。物語のヒーローみたいな、お人好しがいたのなら。
 ……馬鹿らしい話だ。誰かを頼るには、もう、自分は戻れないところまできてしまっていた。






そうして、原作に続く。






・あとがき
アニメ38話ニキの優しい目に死にそうになりながら妄想していたネタでした。ニキに救われて欲しいと思いながらも、苦悩するニキも好きだから困る。書きたいネタをうまいこと書けない文章力が悔やまれます。うごごごご。
半分を越えたあたりから、書くのに詰まって、三人称で書き切れなかった感じがします。何人称だコレ。内容が分かればいいよねと開き直ってしまいました。すまねえ兄貴。最後なんてソードマスターヤマトしてしまった。兄貴の覚悟が親父を救うと信じて!(完)
うまい言い回しが思いつかなかったとです。かなしいなあ。

弓と矢を手放せない形兆兄貴。まあ、今更止めるには、殺しすぎちゃったよね。
この妄想を下地にして、原作兄貴を見ると、仗助の父親治す発言にンアアアとなれておすすめです。たのしい。つらい。
彼が計画やルーチンに執着するのは、やること決めてこなしてないと不安になる・決めたことをこなさなきゃって強迫観念に駆られてるんじゃないかなって想像をしています。ニキーー! 養生してくれーー! 責任感強いニキ。

それでは、読了おつかれさまでした。




・写真
写真を破いたのは、- 3の頃の、妻を亡くし借金に喘ぐ虹村父という作中設定。その場の感情で、八つ当たり気味に破いてしまった写真。
家族も写真も、今更取り戻せないものを、それでも探して、取り戻したかった。幸せな頃に戻りたい。
ダメになっちゃったのは、全部自分のせいだと思って追い詰められてそう。


・形兆ニキと悪
スタンド名も「極悪中隊」なあたり、自分が悪だという自覚がはっきりありそう。
だからこそ、仲間にできるとすれば、正義も何もない自分のような人間だけ・悪人こそ同類とか思って、犯罪者をわざわざ弓と矢で射たりしたんですかね。

救われたいけど、救われてはいけないとも思っていそう。なでなでしたい。

過去の出来事調べてる上で、アレッシーさんの能力知って、父親を戻せるんじゃないかと考えたとき。そのアレッシーさんの身柄が財団預かりになっていたことに、「悪を助けてくれる正義なんていない」「そんな虫のいい話があっていいはずがない」と、うちひしがれるニキとか居そうな気がします。


・没ネタ
スタンド能力を手に入れる前。父親を殺すことを試みる際、金属バットを持ち出しボコしたり、包丁持ち出し、何度も突き刺して、死なない父親に「死んでくれよぉ……」って、父親を傷つけるほど自分も心傷つきボロボロ泣きニキ。
グロと暴力表現が心臓に悪くて、親父殿に(私が)酷いこと出来ない!ってなって、途中まで書いてポイしました。


なんで形兆のアニキしんでしまうん……。


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