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自分が息をするのも躊躇ってしまうくらいに静かすぎるこの場所は、普段賑やかな学校とは大違いで、図書室とはそういうものかも知れないか何故かこの一角がしんと静まり返った場所だ。
だが、その中でも気にすることなくバラパラとページを捲る奴がいる。
「……ここ隣いい?」
私が少し遠慮がちに話しかけると、その人は視線だけを此方へチラリと寄越し「ああ」と無愛想に返事をした。
「ありがとう」
それに私は少し苦笑いをし、席へ着いた。
彼はセブルス・スネイプ君で私と同じスリザリン寮生だ。
私と彼が出会ったのは最近だ。もう私達は4年になるのだがそれまで互いに名前以外はほとんど知らなかった。多分それは彼も私もスリザリンでは異質とされてきたからかもしれない。
「スネイプ君はもう魔法史のレポート済ました?」
羊皮紙と教科書を開き、羽ペンにインクを浸けたところで彼に尋ねた。
「……ああ。お前もしかして今からか? 提出は明日だぞ?」
羊皮紙に要点等を下記写している私は下を向いているから彼の顔は分からないが、多分呆れているか、信じられないという顔をしているのだろう。
「うん、知ってる。だからスネイプ君に見せて貰おうと」
さらりと言った私の言葉に彼は「はぁ」と深い溜め息をついた。
「お前はいつも僕を頼る……」
グチグチと何か言っていたがそれでも椅子を寄せてくれて、読んでいた本をパタリと閉じ教える体勢に入っているスネイプ君を見て、やっぱり彼は優しいっと思った。
「ありがとう」
素直にそう言えば「くだらない事を言っていないで集中しろ」と言われた。
「はい。スネイプ先生」
今度は冗談で言えばまた溜め息をつかれた。
「……っと。うーん!終わった」
あれからスネイプ君にあれやこれやと教えてもらい、何一つ手をつけていなかった魔法史が終わった。……奇跡だ。
「……ありえない」
「え? 何が?」
「君の馬鹿さ加減にだ」
「えええ! 酷い!」
急になんてことを!
スネイプ君は私を睨み付けるようにして言った。
「#name2#、君は何を考えてるんだ! 魔法史のレポートはもう2週間前に出された課題だ! それを提出期限ギリギリにやり始めるだなんて……」
「いや、スネイプ君がいるしなぁって」
「君は最初から僕を頼っていたのか?!」
「あ、ははは。……うん、ごめんなさい」
私は魔法史が苦手なので後回しにしていたらこうなってしまった。そう言えばまた彼から溜め息が聞こえた。今日でこれ何回目だ?
「おい、お前らちょっと煩いぞ」
何となく微妙な空気の中、さも鬱陶しそうに此方へやってきた人物に、今まで緩まっていた彼の表情が急にキッとなりその人物を睨み付けた。
「……ここに何よ用だ? ブラック」
「はっ、スニベルスには関係ないな」
二人は私を挟んでいて距離があるが、いつ杖を出すか分からないがくらいだった。
「……はぁ。ちょっとお二人さん、ここ図書室よ。喧嘩なら別の所でして」
呆れたようにそう言うと、二人は互いに舌打ちをした。その舌打ちのタイミングが同じで吹きそうになったのは秘密だ。
「それとシリウス、スネイプ君のことをあんな風に呼ぶのやめてくれる?」
今度は私がシリウスを睨み付けて言えばまた舌打ちをされた。
彼やジェームズ、ピーターは私の幼馴染みでもあるリーマスの親友で、私がリーマスの見舞いに医務室へ行った時に偶々いて、彼が私の幼馴染みだと言えば最初は吃驚していたが、次第に仲良くなっていった。まぁシリウスは今でも良く思ってないみたいだが。
「それで? シリウスは何しにここに?」
単純に疑問に思っていた事を口にすれば「ああ、リーマスがこれを渡しといてくれって」と言いポンと何かを私の手に落とした。
そちらに視線をやれば、ハニーデュークスのお菓子で私はそれを見て「何時でもいいって言ったのに……」とやや笑いを交え言った。
「まぁ、あいつらしくていいんじゃねぇの」
少し面白そうに言ったシリウスは「じゃ、俺もう行くわ」とくるりと向きをかえ、右手をひょいと上げさっさと行ってしまった。
「あ、うん。ありがとう」
そうお礼を言ったが、聞こえているのかわからなかった。
「それは……?」
スネイプ君が小さく眉間に皺を寄せながら、シリウスに渡されたモノを見た。
「ああ、うん。これね、この前私風邪引いちゃってホグズミートに行けなくて、それでリーマスが私の好きなこのお菓子を買って来てくれたみたい」
手の中でコロコロ転がしながらそう言う私は「でもリーマス病気がちで今医務室みたいだからシリウスが届けてくれたみたいね」と笑って言った。「本当に何時でもいいって言ったのよ?」と付け足すのを忘れずに。
「……これ、好きなのか?」
「え? ええ。大好きよ」
ややムッツリとした顔で聞かれ、一瞬戸惑ったもののそう返し、手にあるそれを鞄にそっとしまった。
「あ、スネイプ君もう夕食の時間よ!」
鞄に入れた腕にしている時計を見てそう言うと、慌てて散らかったままの羊皮紙や羽ペンなどを片付け始めた。
「落ち着きのないやつ……」
羊皮紙の上のインクが乾いたか確かめている時にコソリと聞こえたがそれは無視をした。
「あら? 二人ともこんな所にいたの?」
「え? あ、リリー! ええ、そうなの。スネイプ君に私の魔法史のレポートを見て貰ってたらこんな時間になって」
離れた所から声がしたと思ったら、そこにはスネイプ君と幼馴染みという綺麗な赤い髪を靡かせたリリーがいた。
彼女とは、スネイプ君と今日みたいに互いのレポートをこの図書室でしていた時に出会った。その時彼女は私がグリフィンドールの自分に嫌な顔をしなかった事にとても驚いていた。だが、私にとって寮なんてただの組分けで、しかも曾祖父がグリフィンドールだったらしいので寮なんてこれっぽっちも気にした事はない。それを話すとまた驚いた顔をされた。
「そうだったの。 ……って魔法史? そ、それもう2週間前に出された課題じゃない!」
「ええ。知ってるわ」
ケロリとして言うと彼女は呆れた顔をした。
「……こいつは僕を頼って2週間もほったらかしにしてたんだ」
「……セブルスも大変ね」
顔を見合わせた二人は、ほぼ同時に溜め息をついた。何故だろう、グサリと何かが刺さった。
「あ、ねぇ。もう夕食が終わっちゃう! 早く行こう!」
ふと時計に目を移した時、思い出したようにガタリと席を立ち、急がすように二人に言った。そうすれば二人はやれやれといった表情で私の後を追ってきた。
その後は大広間に着くまで、リリーと私と代わり番こにこの前の授業の話や、ホグズミートの話しなんかをしていた。
その様子を端から見るととても異様に見えただろう。
いつもいがみ合っているグリフィンドールとスリザリンが仲良くお喋りしながら歩いているのだから。
だけど、それが私の日常だった。だからこれからもそれは変わることがないと思っていた。
後ろにいるスネイプ君はいつも無表情で、でもたまにリリーに向ける視線がいつもとは違い熱が込もっていて、でもその視線に気が付いていないようなリリーが隣にいて、そんな二人を見て何故か少し切なくでも二人が大好きな私がいる。
そんな日常がこれからも変わらないと思っていた。
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