荒木先生と打ち上げに遅刻する

新多から打ち上げに来ないかとお誘いの連絡が来た。ユニットの集まりなら自分がお邪魔しても良いものかと少し気が引けたけれど、参加する人を聞けばユニットも学年もまちまちで、とあるイベントにみんなで参加した帰りらしい。賑やかで楽しそうなメンバーだなと思ったところで『先生も誘ったら来てくれるって。レアだよね』というメッセージが続いて、行きます!と迷わず打ち込んだ。
教えてもらったお店に到着すると、店先で佇む先生の姿があった。見慣れたスーツ姿も学校の外で見るとなんだか大人の男の人という感じがして、私は高揚感を抱えながら駆け足で近寄った。

「先生、こんばんは!」
「おー特待生、お疲れさん。お前一人か?」
「はい、他のみんなは先に行って待ってると……」

きょろきょろと辺りを見回しても私と先生以外にはまだ誰も来ておらず「まあもうすぐ来るんじゃねーか?」とのんびり言う先生と並んで待つことにした。しかしいつまで経っても新多たちは現れず、私と先生を不思議そうに見ながらカップルが一組お店に入っていった。お店の目の前で突っ立っているのもなんだか気まずくなってきて、横の先生をちらりと見上げると、同じ考えでいたらしい先生と視線が合う。

「なあ、ここで合ってるよな?」
「はい。イタリアンのお店って、この辺だとここだけですよね?ちょっと新多に聞いてみます」

メッセージを飛ばしても既読にならない。困ったな。早く気付いてほしいと念を送りながら液晶画面を見つめていると、突然ぐうとお腹が鳴った。ハッとして音の出所を押さえるもなかったことにはできない。ちょうど夜ご飯を食べようとしていたところにお誘いをもらったから、だいぶ空腹が極まっていたのだ。居たたまれない気持ちでいっぱいになってしまう私の頭上で、先生がふっと笑う気配がした。

「んー、もう二人でここ入るか?腹減ったろ」
「え!?」
「なんだよ、特待生は嫌か?」
「や、いやなわけないですけど……!」

願ってもない展開に思わず声が上擦ってしまい、どうしようどうしようと目まぐるしく思考を巡らせる。だってこんなの、いいのかな。でも別に最初から二人きりで行こうとしたわけじゃないし、こんな機会はもう二度とないかもしれない。ええい、頷いてしまえ。そう決めかけた瞬間、握りしめていた携帯が震えた。

「あっ……新多からです。ちょっと出ますね。もしもし?」
『あ、特待生!実は結局カラオケに行くことにしたんだ!ごめんね、連絡遅れちゃって』
「そうだったんですね。えっと、どこのカラオケですか?」

私と新多の会話に耳を傾けていた先生は、通話を切ると「カラオケかよ、全然違うじゃねーか」と呆れて苦笑していた。

「しかもここから歩くと地味に遠いしよー」
「まあまあ、みんな待ってくれてるそうなので行きましょう」
「しょうがねーなぁ……」
「私、先生のキャラソン聞きたいです。アイドルユニットのシリーズで何曲か出してましたよね」
「げ。何年前のだっけ、あれ……カラオケ入ってんのか?」
「入ってたら、絶対歌ってくださいね!」

ぶうぶう文句を言う先生の背中を押しながら、みんなが待つカラオケへ向かった。ちょっとだけ急ぎながら、でもあと少しだけ二人きりで歩ける時間を噛み締めるのだった。

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