こころまい
 朔、また釦が外れているよ。聞きたくもないのに聞こえてくる声に、深々と溜め息を吐きそうになった。苦し紛れに吹かす煙草の味なんて、最早感じられない。
(……一体いつから)
 僕の釦はもう、とめてくれないのかい? そう気軽に問えたら、どんなに、いいことだろうか。生憎、僕には駄々をこねる権利も、冗談を突く口も持ち合わせてはいない。
(ずるい、なあ)
 ずるい、ずるい、狡い。ずるい男。小賢しい、男。
 ちらり、と萩原くんの目が僕を見た。
(そんな顔もするんだね)
 あまり悠々としていられないかもしれない。

日常



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