こころやまい▽2017/04/19(Wed)
申し上げます
太宰「ずるい」
中原「ああ?」
太宰「中也はずるい」
中原「……何がだよ」
太宰「全部」
中原「そいつはあれか? オレとおまえがやたらと対称的に比べられるから」
太宰「……それもあるな」
中原「はっ……そう思うんなら死にたがるのはやめやがれ。みっともねえったらありゃしねえよ」
太宰「でも、一等ずるいと思ったのは、やっぱり司書さんだ」
中原「…………チッ」
太宰「中也はずるいよ。ずるい男だよ」
中原「芥川センセーだから手を引きましたーってか?」
太宰「当たり前だろ」
中原「へっ、御生憎様、オレァあいつを離す気はねーぞ」
太宰「そうだろうね、知ってるよ。だからなおのことずるい。……ずるい、ずるい、ずるいなあ。ああ、憎らしいったらありゃしねえ。許しておけねえ。絶対にあいつと心中を完遂させてやる」
中原「今日は珍しく面と向かって言うじゃねえか。やれるもんならやってみろよ、させる気はねえし、あいつ自身死ぬ気はもうねえがな」
太宰「そりゃあ、ずっと傍らに置いていた意中の人をお前みたいななめくじに横取りされていい気はしないだろ? 道化を気取るのも限界があるんだよ」
中原「青鯖がほざきやがる。で、要約するとなんだ? 宣戦布告か?」
太宰「さあ? どうだろうね」
中原「ああ……? はっきり言いやがれ。相変わらず女々しい野郎だなおまえはよ」
太宰「中也にだけは言われたくない」
▽2017/04/18(Tue)
うるさいな
太宰「穂吉って本当は優しいよね」
そんなことないよ。悪い奴だよ。
太宰「悪人になりきれてないよ」
そんなことないよ。
太宰「じゃなきゃ、俺のお願い聞いてくれないでしょ」
……お願い?
太宰「顔は傷つけないでってやつ」
…………ああ。
太宰「本当に悪い人なら、聞きやしないさ」
僕はお前のそういうところ、好きじゃないよ。
▽2017/01/25(Wed)
いいよ
朔「司書さんは役目を終えたらどうするの」
「以前の職場に戻るだけだよ」
朔「自分たちはどうなるのかな」
「消えてしまうだろうね」
朔「……人間になる方法があるって、聞いたよ」
「……」
朔「ねえ司書さん、……穂吉、どうか自分を」
「人間になった君に敬慕することは出来ない」
朔「……」
「僕は人が嫌いだ。こうして曲がりなりにも対等に対話できているのは、貴方達が不完全な人の肉を纏った生命体だからだ」
朔「……(ぎゅっ)」
「なんだよ、怒るのは筋違」
朔「なら、ならなくていい」
「い……」
朔「人間じゃなくていい」
「……あのさあ」
朔「(ぎゅぅ)」
「痛い」
朔「自分が本当の意味で人間に成ってしまったら、孤独に逆戻りしてしまう。そうだと言うのなら、自分は人間じゃなくていいよ」
「……」
朔「ずっとこのままでいい」
「……(僕は、なんて言葉をかけたらいいんだろうか)」
▽2017/01/25(Wed)
ひとりになんて、させないよ
「おいてかないでね」
「大丈夫、ここにいるよ」
「ひとりにしないで」
「ひとりになんてさせないよ」
「孤独は嫌」
「孤独なんてやっつけてあげる」
「胸が痛いよ」
「抱きしめてあげる。少しはましになるから」
「誰もいない」
「僕がいるよ。大丈夫、そばにいてあげるから」
「……本当に?」
「ほんとだよ」
「自分のそばにいてくれるの?」
「うん。朔のそばにいるよ。孤独になんてさせないよ。ひとりぼっちになんて、させない」
「ずっとだよ。約束して」
「……わかった、約束」
「ずっとだからね」
「うん。ずっとだよ」
──その言葉、忘れないでね
▽2017/01/25(Wed)
誰そ彼
「僕は自分がわからなくなりました」
「わからなくないよ」
「僕は芥川先生が好きです」
「うん」
「でも僕が好きなのは今の先生じゃなくて生前の先生なんです」
「どうしてそうなるんだ」
「だって、転生してしまったら、それはもう先生であって先生じゃないじゃないか」
「僕はここにいる。僕も芥川龍之介だ。辰年辰月辰日辰の刻に生まれた、芥川龍之介だ」
「僕が愛しているのは貴方じゃない」
「違う。僕は僕だろう」
「僕が愛したのは妻子がいて、常に精神を病みながらも小説に情熱を注いでいた貴方だ」
「転生したのがそんなに不満だったのかい」
「それは違います」
「何が違うと言えるんだ」
「貴方が生まれ変わってくださった時、僕は本当に、心の底から嬉しかった」
「ならどうして」
「わからない」
「……」
「貴方を尊敬していると、愛しているのだと胸を張れなくなってしまった」
「……」
「貴方も芥川先生だ。それは事実だ。変わらない真実だ。生まれ変わった芥川先生なんだ」
「……ああ、そうさ、僕は芥川龍之介。君が恋い焦がれていた、新思潮派の小説家」
「なのになんで、なんでなの。苦しくて苦しくて、どうしたらいいのかわからない。……ごめんなさい」
「……謝罪されても、困るよ」
愚か者だと、救いようのない阿呆だと、地獄に落ちるべき馬鹿なのだと、突き落としてくれたらどんなにいいことか。
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