こころやまい▽2017/04/18(Tue)
決意
誰にも祝福されない。オメデトウなんて言ってくれない。求めても認めてもくれない。それはすこし寂しいように思う。
「そうかァ?」
君は自由人だからいいかもしれないけどさ。僕はそうじゃないんだよ。
「ちったぁ自由になってみろよ。自分のために生きるのはいいぞぉ?」
そうだろうけどさ。……そうだろうけど、やっぱりさ、僕は自己顕示欲が強いからみんなに認めてほしいんだよ。たとえ到底誇れるものでなくたって。
「それこそエゴじゃねーか」
……そうだよ。ただのエゴだよ。でも愛してしまったのだから仕方ないじゃないか。
「……」
帰りたいよ。
「……ああ。オレも帰りてえ」
誰にだって受け入れてもらえる関係だったならば、こうして身を隠す必要もなかったのだろう。
「今日はよく喋るな」
気分がいいんだ。すこぶるね
「そいつぁ何よりだ」
だからこそ冷静に考えてしまうのさ。
「悲観的になるのはやめてくれよ。慰める身にもなってくれってんだ」
いつもありがとう。
「どうもいたしまして」
僕は結局臆病なのだよ。
「今更かよ」
今更だよ。強気で偉そうなふりしてるだけで、根っこは怖がりなばけものなんだから。
「……言うほどばけもんじゃねーとオレは思うがな」
そうだろうか?
「そうだよ。もっとヒデーばけもんはその辺に転がってるだろ」
たとえば?
「モモノハナ野郎」
……んへへ、違いない。
帰りたい。……帰りたいねえ。
「そうさなぁ。何より酒が飲めねーのがつらい」
そこなのか。
「そこに決まってんだろ」
酷いなあ。僕じゃ不満だって?
「おまえはそもそも飲めねーだろうがよ」
でも会話はできるだろ?
「そういうことを言ってんじゃねーんだよオレはよ」
……中原中也殿。
「あんだよ特務司書」
逃げちゃおうか。
「……はっ」
嫌かい?
「まさか。清々するぜ」
ほんと?
「嘘じゃねーよ」
僕らきっと消えちゃうよ。
「そうだな。文字通り消えて、オレら二人だけになるだろうな」
いいの?
「覚悟はとうに決まってる。待ちくたびれたぜ」
そっか。……うん。……そっかぁ!
「にやにやしてんじゃねーよ気持ちわりぃ」
んふふふ。
「命懸けだぜ? おまえの方こそいいのかよ。文学を守る使命は? センセーは? 残した太宰は? どうなるよ」
…………うーん。酷いやつだって言われるだろうけど、なんだかもう、どうでも良くなっちゃったよ。
どうでもいいんだ。全てが。取り巻く環境も愛も憎悪も手のひらから落っことして、ゼロにかえしたいんだ。
「…………そうか」
君こそいいの?せっかく憧れの宮沢さんに会えたのに。
「愛するものにはかえらんねーだろ」
……おやおや、まあまあ……。
「……急に照れんなよ……」
だって……。
うーん。……うん。よしよし。
「いけるか?」
うん。大丈夫!
「その大丈夫、は自分に言い聞かせたもんじゃねーだろうな?」
違うよぉ。自信のある大丈夫です!
「……へへ、そいつぁ上等じゃねーの」
……行こうか。遠いところへ。
「そうだな」
僕らきっと、生きては帰れない。
「ああ」
見つかったなら、それが最期だ。
「……ああ」
死にたくはないよね。お互いね。
「当たり前だろ」
頑張って、遠い遠いところへ逃げ切ろうね。
「当然」
ずっと一緒だよ。
「わかってる。約束だ」
約束だよ。……ね。
▽2017/04/18(Tue)
ちゅーやくんとの駆け落ち録07
なんていうさあ。
「おう」
僕らを祝福してくれる人なんてきっとどこにもいないんだろうなって。
「……おう」
表面上では受け入れたって、底ではそうもいかないんだろうねって。
「そうだな」
なんでこうなっちゃったんだろうねって。
「……そうだな。どうしてだろうなぁ」
なんで好きになっちゃったんだろう。
「……本当にな。どうしてだか」
おかしいね。
「全くだ」
ごめんね。
「謝んじゃねえって何遍も言ったろうがよ。オレが好きでしてんだ」
僕がこんなんだからこうなったんじゃないかなって。
「……ばーか。おまえの気持ちがセンセーに向いてる時から、オレはおまえを」
▽2017/04/18(Tue)
ちゅーやくんとの駆け落ち録06
うーむむむむ。
「有無?」
いあ、ただの唸りです。
「ほーん」
……ねえねえちゅーやくん。
「おう」
ずっと本の中にいてもきりがないねえ。
「おいおい今更かぁ?此処が一番安全っつったのはおまえだろうがよ」
そうなんだけどさあ……こう……海とか見たいじゃん。
「見れるだろ」
そうじゃなくてさあ。
「それともなんだ?出る気になったのか?」
それは……うーん……。
「?」
君が悪者になるのは嫌だ……。
「……あー……」
やだ
「オレのことは気にすんなって」
悪いのは僕なのに。やだな。
「気にすんな」
それも嫌だ。僕ばっか守られてる。
「守ってるつもりはねーけどな」
……今本持ってるのって誰かわかる?
「センセー」
即答……。
「分かるもんは分かるから仕方ねーだろ」
よりによって芥川先生……。
「あの人も存外しぶといなァ」
先生か……。
「戻るか?オレは構わねえぜ」
それは断固としていやだ。
「イヤイヤばっかじゃねーかおまえ」
逃げたい……遠くへ……。
「駆け落ちとか柄じゃねーよ」
駆け落ちしようぜちゅーやくん……。
「出来るもんならやってみろよ」
うっ……ううううう…………。
「無理だろ?」
本が……仕事が……文学書……。
「クソ真面目かよ」
そうだよ!!!!
▽2017/04/18(Tue)
ちゅーやくんとの駆け落ち録05
僕らが結ばれたって誰にも祝福されないだろうね。
「そうだな」
それでもしあわせをつかみ取ろうとするのは、愚かなんだろうか。
「……他人と比べんじゃねえよ。お前が幸せなら、それでいいってんだ」
そうなのかな。
「そうだよ。いい加減ダレカノタメはやめろ」
……そうだね。そうだよね。
自分のために生きていいんだよね。
「ああ」
それを気づかせてくれたのが君なわけだけど。
「不平か?」
まさかぁ。最高だよ。
「はっ、言ってろ」
いくらだって伝わるまで言うさ。
「口だけは達者だよなあ、相変わらず」
それはお互い様だろうよ。
「……ああ、違いねぇ」
▽2017/04/18(Tue)
ちゅーやくんとの駆け落ち録04
ずっとここにいたいけど。
「ああ」
かくれんぼに終わりは来る。
「……ああ」
おしまいが来てしまう。
「へっ、ばーか。何遍も言わせんじゃねえ。……おしまい、の時まで一緒にいるよ。離れる気なんてない。そばにいるよ。綿毛に寄り添う春の香りのように、穏やかに揺蕩いながら」
サヨナラなんて、言わないよ。
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