昨日2 今日6 合計2963 更新2018/12/25/16/03

投稿2018/12/25/16/03

【連鎖怪談 其の四】〜私を殺したのは私の夫〜


ある日、中年のおじさん(仮称 小林きよし)が面接にやってきました。
見るからに”ワケあり”な、その容姿は何か大きな悩み事を抱え疲れきった表情をしている。
実際、履歴書を見ると、住所もでたらめ、連絡先もない。
でも
「一生懸命やります」
と固く言うので、じゃあ
「明日から来て下さい」
という事になって、翌日、ちゃんとそのおじさん、小林きよしさんはやって来ました。

小林きよしさんの仕事ぶりは真面目で他のスタッフも
「いい人が来てくれて助かった」
と言われるくらい、とても真面目でした。

そうこうしているうちに、夕方の4時か5時頃になり、オーナー(仮称 筒井)は小林きよしさんの仕事ぶりをチェックしに行って、
「頑張っているね、助かるよ」
なんて声をかけながら指示を出していました。

その時です。

ふと風呂場を掃除する小林きよしさんを、洗面所の鏡越しに見ると…洗っている水が、血の海の如く赤黒く真っ赤に波打っていたのです。

「えっ!」
と思って、目を凝らしてちゃんと見てみると普通の水が流れています。
「おかしいなぁ?」
と思い、もう一回鏡に映った小林きよしさんを見たら、屈んで床を磨く小林きよしさんの背中に、全身血まみれで、右手首と顔の無いワンピース姿の女性がおぶさっていました。

筒井オーナーはビックリして、休憩時間に小林きよしさんに尋ねてみました。
「小林さん、あんた、何かやったでしょ?」
すると小林きよしさんは何も否定せず
「すみません、私、辞めさせていただきます」
と言いそのまま出て行きました。

そんな事を忘れかけていたある日、テレビのニュースを見ていた筒井オーナーは”ハッ”としました。

[ひき逃げ事件発生。ひき逃げ犯、全国指名手配へ]
[被害者は指名手配犯の妻、顔面識別不能、右手首捜索中]

何故なら辞めた、あの小林きよしさん、ニュースのひき逃げ事件の逃亡犯にソックリだったからです。

「絶対にそうだと思う」
なぜそこまで断言できるのかというと…
「背中に覆いかぶさっていた女性がまさに被害女性だった」と…
「被害女性は顔が判別不能なくらいぐちゃぐちゃだった」と…
ずっと自分を殺した逃亡犯に憑いていたのです。

”…私を殺したのは…この人…私の夫よ…”と。


- 5 -

*前次#


ページ:



しおりを挟む

コメント
前はありません次はありません
名前:

コメント:


編集・削除用パス:



表示された数字:



ALICE+