第60話
その日の夕食はアーサーの全快祝いとして豪華に行われていた。
レンは終始不機嫌な顔をしているシリウスの隣に座り、彼を見遣るも視線を合わせようとしてくれなかった。
「…止めに入って怒ってる?」
「いや。」
「誰もシリウスが臆病者だと思ってないわ。私、知っているわよ、シリウスが勇敢な戦士だって。その瞳から感じ取れるし、あの時危険を顧みず私を助けようとしてくれたもの。でも私もハリーも貴方が自由の身になって欲しいって願ってる。だから、貴方の出番はヴォルデモートが姿を現してから…そうなんじゃないかなって思っているの。…私…」
「お前の気持ちも考えもよく解っている。退学を許し此処にいてくれたら…なんてお前の為にならない事を考える程に。…だが、私は親としてそれを許す訳にもいかない。」
「ポリジュース薬を作って私とシリウスが入れ替われたらwin-winなのにね」
シリウスは瞳を丸くしてレンを見遣れば、悪戯っぽく笑う彼女のその頭を乱暴に撫でた。
「きっとシリウスの出番はもう直ぐよ。彼奴がそう隠れたままではいない。私それまでにたくさん力をつけて貴方の背中を守るから、十分に鬱憤を晴らすと良いわ。」
「あぁ…」
「私を置いて死んだりしたら許さないんだから。」
「お前は追いかけて来てビンタの一つでもしそうだからな。」
「えぇ。」
「…そろそろやすみなさい。体に障る。」
「えー。」
「その年で寝かしつけられないと眠れないのか?」
「愛しい父様が子守唄でも歌ってくださるのなら。」
「馬鹿を言ってないで寝なさい。」
「シリウス…貴方が此処で頑張って耐えているから…私もホグワーツで頑張って耐えてくる。…だから…そう。帰ったら思いっきりハグしてあげるわね。」
「私が抱きしめてもらうのを待っている方なのか?」
シリウスは思わず口元を緩ませ「まったく。お前には敵わん」と溜息混じりに漏らした。
「いつも私がしてもらっている側だもの。たまには逆も新鮮でしょう?…おやすみなさい、シリウス。」
レンはシリウスの頬に口付けそう言えば厨房を後にし、追いかけて来た双子が「俺達にも」と頬を突き出せば「おやすみなさい」とその頬に口付けて家へ戻ると其処にはリーマスがいてくれた。
なにやら作業をしていた様で、レンの姿を見つけると、その手を止めて此方へ来てくれる。