第85話
「ハリー…負けてはダメ。貴方の身も心も貴方だけのものよ。お願い…戻ってきて…。貴方まで私を置いていかないで」
レンが抱きしめる腕に力を込め、その身にポタリと涙を零せば、ハリーの身を乗っ取ったヴォルデモートはもがき苦しみ始める。
ダンブルドアも近くで膝を降りハリーを見下ろし「どれだけ違うか、じゃよ、ハリー。」と優しく声をかけている。
少しの間、ヴォルデモートがもがき苦しみ、さーっと音をたて頭上に何かが登っていったと思うと離れた場所にヴォルデモートが姿を現したのと同時に、魔法省の暖炉が次々に人を吐き出していく。
「…レン、苦しい。」
小さくそう声がし、レンは慌てて魔法を解き腕の力を弱めれば、ハリーが小さく息を吐いた。
倒れた際に眼鏡を落とした所為か、周りがあまり見えていない様で、キョロキョロする彼に、レンは「良かった…」と再度きつく抱きしめればハリーは小さく笑う。
「苦しいよ。」
「あ…そうだった。ごめんなさい。」
「ううん、大丈夫。心配かけてごめん。」
「ハリーが無事ならそれで良いの。」
レンはそう言えば、ハリーの眼鏡を呼び寄せてハリーに手渡した。
目眼をかけ直したハリーに、ダンブルドアは「大丈夫か?」と声をかければ「はい。」と答えるが、体が激しく震えており、レンがハリーの体を支えながら、その肩に顔を埋める様にして抱きしめ、再度癒しの魔法をかけ始めた。
「レン、ワシが声をかけるまで術を頼んだぞ。」
「はい。」
「何処に…ヴォルデモートは、何処に…誰?こんなに人が…いったい…。」
「体を乗っ取られていたの…ハリー、貴方は自分の力でヴォルデモートを追い出したのよ。彼奴は逃げたわ…。」
暖炉から次々に人が吐き出され、小鬼やしもべ妖精の像がファッジをダンブルドアの側に連れて来れば、ファッジは唖然と「あの人があそこにいた!」と叫ぶ闇払いの言葉を聞いていた。
「あぁ、判っておる…私も『あの人』を見た。…なんて事だ…事もあろうに…魔法省で…!」
「コーネリウス…下の神秘部に行けば、脱獄した死喰い人が何人か『死の間』に拘束されているのがわかるじゃろう。『姿くらまし防止呪文』で縛ってある。大臣がどうなさるのか、処分を待っておる。」
「ダンブルドア!お前…此処に…私は…私は…」
ファッジが興奮で我を忘れ息を飲んだ。