ゆっくりと顔を離した彼女の瞳にも涙が浮かび、柔らかく微笑むとそれが溢れ、私の頬へと落ちる。
「アンタのヒゲ、痛いわよ。やっぱり犬の毛皮には負けるわね。」
そう言いながら、優しく何度も何度もその髪を撫でてくれる。
「お疲れ様、シリウス。ずっと、ずっと見ていたわ。アンタは気付いてくれなかったけど、ずっと側にいたのよ。私を想って泣いた時も。」
「余計なところまで見ているんじゃない。」
「これからはずっと一緒よ。」
「ああ…先に逝った罰だ。ずっと離れずにそばにいろ。何があろうと。」
「えぇ。何処まででも付きまとってやるわ。トイレの中だって。」
「それは止めろ。」
死後の世界にトイレがあるのかどうかは判らないが、思わずそうツッコミを入れてしまえば、アクアは声をあげて笑っていた。
本当にこの女という奴は…。
私の愛しい…最愛の女は、憎まれ口が得意で、意地っ張りで負けず嫌いで、そして誰よりも暖かく輝いていた我らが太陽だった。
「鹿の角でお前はプロングズだな、ジェームズ。」
「ならお前は肉球でパッドフットだ。」
「それならリーマスは月でムーニーにしよう。」
「月で狂うから丁度いいね。」
「そしてお前は…そうだな、尻尾がミミズみたいだからワームテールだ。」
そう言いながら出来上がったばかりの地図に名を記し完成させた後、ムーニーは言う。
「此処には居られなかったけれど、梟にも我らと同じ様に名をつけないかい?」
「サニー。」
シリウスはそうはっきりと言った。
「あぁ、太陽みたいな人だしね。サンを名前っぽくしてサニー。良いじゃないか。」
「残念なのはその羽が太陽に似た色ではない事だな。まん丸で金色の梟…小さな太陽が飛び回っている様じゃないか。」
そうシリウスはいうと「なんだよ、見た目の事か!」とジェームズは腹を抱えて笑う。
仲間達はそう良い勝手にアクアの渾名が決定する。

サニー…陽だまり。
陽だまりにいる時の様に暖かく、その香りがする女。
愛しい最愛の女…。

やっとまた抱きしめる事が出来たんだ。
もう2度と離してやりはしない。
いつまでもいつまでも…このままふたりで…ずっと…。
そして、我らの愛娘の行く末をずっと見守っていこう…。
闇夜を照らす月の様に、柔らかな日差しに似た優しさを…無償の愛を持つあの子の行く末を…。
例え父親が違っていたとしても、我らの愛しい愛の結晶を…。
あの子が此処に来る事になる遠い未来のその日まで…ずっと…ずっと…。