魔法史は相変わらずのピンズ先生だった。
淡々と話し続ける歴史に、今回はハーマイオニーもいない。
レンは睡魔が来ぬよう、集中して先生の言葉に耳を傾けノートをとるのに必死だった。
レンは授業が終わると、んーっと思いっきり背伸びをし、後片付けをすれば昼食を取りに大広間へと向かった。
「レン。今授業の帰りか?やっと1人になったんだな。」
「えぇ、ドラコ。貴方が手を出してくれたお陰で、皆が守ろうとしてくれているわ。」
「キミを?キミが、の間違いじゃないのか?」
ドラコは可笑しそうに笑い声をあげレンは眉を顰めた。
「大事な幼馴染だから一言忠告しておくわね。もしなにか命令されているのなら気を付けなければいけないわ。…あの人は決して人を認めたり信頼したりはしないの。使える道具か否か…それだけよ。私も一昨年はドラコの様に思う事があった。私は大丈夫って。でも違った。その甘えた考えの所為で私は死にかけたわ。…ドラコ、あの人の言葉を真に受けるだけじゃダメなの。真意をちゃんと見極めて?貴方が大切に想っているご両親を泣かせないであげて。」
レンが至って真面目にそう言えば、ドラコは顔から笑みを消し、レンの杖腕を掴みそれを掲げれば、その腕に巻かれた包帯が晒される。
「此処に…同じ物を隠しているキミには言われたくない。キミは誇るべきだ。」
「彼奴に何を言われたのか判らないけれど、同じ物じゃないのよ。貴方のは忠誠を示す物で、私のは私を弱らせ私という人格を殺す物。全く意味が違うのよ、ドラコ。」
レンはそれでもドラコから視線を逸らさずに真っ直ぐと睨むように見つめれば、ドラコも同じように睨み続けていたが「いい加減離してくださる?」とレンが言えば、ドラコは仕方なさそうにその手を離した。
「助けを求めるならその手を私がとるわ。けれどあちらへ転び続けるなら、いつかは戦わなきゃならないって私も覚悟を決めるしかない。でも貴方は平和になるその時まで“死なない努力”をして生き続けて欲しいの。私がいなくなった後でも平和な世の中を生きてもらわなきゃ困るもの。」
「そんな…僕に強く握られたくらいで痣になる細腕で…なにが出来るっていうんだ。」
ドラコの声が小さく震えていた。
「命をかけて護りたい者を護り続ける事は出来るわ。それは勿論、貴方も含まれているのよ、ドラコ。」
レンはそう言い、ドラコは何かを考えるように言い淀んでいれば、ハーマイオニーがどこかから駆け寄りドラコを睨みながらレンの側につく。
「また何かしようっていうの?」
「穢れた血が粋がるな。彼女を護れもしない癖に。」
「お言葉ですけれど、貴方が無理矢理何かを飲ませた所為でレンは汽車での記憶が曖昧なのよ?そんな風に傷つけたりは少なくとも私はしないわ!」
それにドラコは鼻で笑い、さっさと大広間に入って行ってしまった。
ハーマイオニーはなにをされたの?と大広間についてからもレンを気にし、体をペタペタと触ったりしていれば、手首に赤く手の跡を見つけ、手当てをしておきましょう?と心配そうに見つめた。
レンはただの痣にすぎないから気にしないで、ともらすも、ハーマイオニーの肩に顔を埋めてしまう。
ドラコの腕に闇の印があるという事が確定した。あの忠告を否定すらしなかったという事はそういう事なのだろう…。
揶揄う事はあってもレンに対して嫌味を言う事のなかったドラコの態度もまたレンの気持ちを酷く落ち込ませた。
「なんか…食欲なくなっちゃったわ。」
「少しでも食べなきゃダメよ。」
レンの皿に軽めの物をハーマイオニーが取り分ければレンは小さくお礼を言う。
「ドラコに声をかけられて軽く嫌味を言われたついでに…言ったの。なにを命令されてるか知らないけれどヴォルデモートの本質を見極めないと貴方が危ないって。…腕に同じ物を持って誇らず隠してるキミに言われたくないって言われたの。」
耳元でぽそぽそと呟き零すレンの背をハーマイオニーは優しく撫でてくれる。
「私のは…”私“というものを殺す物なのに、ね…。あんなドラコ、初めて。」
「マルフォイは変わったのよ、レン。今まで通りじゃダメなの。」
「…変わったとしても幼子の頃から知っていてくれてる大切な幼馴染にも変わりはないの。…私、小さい頃から何不自由なく愛され育てられてきたドラコが羨ましかった。…きっと私が殺されるとしたらこの甘さを突かれてドラコに殺されるんでしょうね。」
そうレンが自嘲的に言えば、ハーマイオニーは「そんな事させないわ。」と言ってくれ、レンは顔を上げ切なそうに笑んだ。
「弱音を吐くだけ吐いたら前を向かなきゃ、シリウスに叱られちゃう。」
そういうもレンは大きく息を吐いてから食事をし始めた。
その後直ぐにやって来たハリーやロンにも手首が見られてしまい同じように心配をされたが、ハーマイオニーが「今はダメよ。」ときっぱりと話す事を断り、レンは小さく感謝をした。
(P.84/全P.208)
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