ヴォルデモートの姿が一瞬消え去り噴水の脇に再び姿を現した。
首なしの像はハリーを戦場の場から遠ざける様にゆっくりと後ろに押しやり、ダンブルドアがヴォルデモートの前に進み出た。
「ハリー。レンを任せたぞ。決して渡してはならぬ。」
「はい。」
ハリーはレンを片手で抱きかかえる様にその身を支え、もう片手で杖を構える。
伝わるレンの温もりと鼓動が、ハリーに力を与えてくれる様だった。
「今夜、此処に現れたのは愚かじゃったな、トム。闇払い達が間も無くやって来よう。」
「その前に俺様は娘を連れいなくなる。そして貴様は死んでおるわ!」
ヴォルデモートが吐き捨てる様に言うと、死の呪文がダンブルドアを目掛けて飛ぶが、外れて守衛のデスクに当たり忽ち机が炎上した。
ダンブルドアが杖を素早く動かした。
その杖から発せられる呪文の強さたるや、黄金のガードに護られているハリーでさえ呪文が通り過ぎると髪の毛が逆立つのを感じた。
ヴォルデモートも、その呪文を逸らす為には、空中から輝く銀色の盾を取り出さざるをえない程だった。
その呪文が何であれ、盾には目に見える損傷は与えなかったが、ゴングの様な低い音がした。
背筋が寒くなる様な音に、レンの体がピクリと動きハリーはハッとする。
「レン?レン!」
ハリーがレンの耳元で彼女の名を何度も呼べば、レンはゆっくりと目を覚ました。
「あれ…私…。ハリーが助けてくれたのね…有難う。」
「ヴォルデモートを離れさせてくれたのはダンブルドアだよ。僕はこうしてるしかなかった。」
それにレンはハリーを一度強く抱きしめ「それでも、守っていてくれた事に変わりないわ。」と優しく言えばそっと離れた。
ハリーはそれに僅かに頬を赤らめて微笑み、空いている手を指を絡ませてぎゅっと握れば2人ともダンブルドアの戦いに視線を向けた。
「俺様を殺そうとはしないのか?ダンブルドア?そんな野蛮な行為は似合わぬとでも?」
ヴォルデモートが盾の上から真っ赤な目を細めて覗く。
「お前も知っての通り、トム、人を滅亡させる方法は他にもある。」
ダンブルドアは落ち着き払ってそう言いながら真っ直ぐにヴォルデモートに向かって歩き続けた。
この世に恐れるものはないかの様に、ホールのそぞろ歩きを邪魔する出来事何も起こらなかったかの様に。
(P.23/全P.49)
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