必死にあそこを離れようとするも、あの家に閉じ込められ続け、カビ臭く暗い部屋をたった1人で徘徊していたシリウスの記憶。
…それが付き纏うのが嫌なんだろう…。
レンも今の家はシリウスとの思い出も多くある。油断すれば森の中から現れたり、階段を何やら話しかけながら降りてくるシリウスの記憶としての姿が見えてしまう。
気持ちを落ち着かせようと俯いたまま小さく息を吐けば、ハリーはその視線をレンに向け、「大丈夫?」と言いたげな表情をしており、レンは曖昧に微笑んだ。
「気前の良い事じゃが、我々は一時的にあの建物から退去した。」
ハリーはレンの手を取りながらも「何故です?」と言う声の他に、バーノンが矢継ぎ早に頭を打たれてブツクサ言っている声を無視してはハリーに「そうじゃな。」と答える。
「ブラック家の伝統で、あの屋敷は代々、ブラックの姓を持つ直系の男子に引き継がれる決まりになっておった。シリウスはその系譜の最後の者じゃった。弟のレギュラスが先に亡くなり、彼には子供がおらんかったからのう。遺言であの家を所有して欲しいという事は明白になったが、それでもあの屋敷に何らかの呪文や呪いがかけられており、ブラック家の純血の者以外は何人も所有出来ぬ様になっていないとも限らんのじゃ。」
「きっとそうなっています。」
ハリーが言った。
「もしその様な呪文がかけられておれば、あの屋敷の所有権は、レンの父親が誠にシリウスであったならばレンに…そうでなければ生存しているシリウスの親族の中で最も年長の者に移る可能性が高い。つまりは従姉妹のベラトリックス・レストレンジという事じゃ。」
ハリーは立ち上がり「そんな…。」と声を漏らす。
シリウスとの思い出があるあの屋敷を、シリウスを殺した女に相続されるのはハリー的にも気分が悪いものなのだろう。
ダンブルドアは当然我々にとってもベラトリックスが相続しない方が好ましいと静かに言った。
「状況は複雑を極めておる。例えば、あの場所を特定できぬ様に我々の方でかけた呪文じゃが、所有権がシリウスの手を離れたとなると、はたして持続するかどうか判らぬ。今にも戸口にベラトリックスが現れるかもしれぬ。当然状況がはっきりするまであそこを離れなければならなかったのじゃ。」
「でも、僕やレンが屋敷を所有する事が許されるのかどうか、どうやったら判るのですか?」
「幸いな事に、1つ簡単なテストがある。」
だがダンブルドアからそのの続きが口から発するよりも早く「この忌々しい奴をどっかにやってくれんか?」とバーノンが叫ぶ。
レンは顔を上げると、ダドリーはこっそりとグラスを掴んでいたが、ペチュニアとバーノンは両腕で頭を庇ってしゃがみこみ、グラスがそれぞれの頭を上下に飛び跳ね中身がそこら中に飛び散っていた。
視線が自分達に注がれた事で、ダドリーは慌てて手を離し、ダンブルドアは「おお、すまなんだ。」と杖を振りグラスを全て消した。
「しかし、お飲み下さるのが礼儀というものじゃよ。」
バーノンは嫌味の連発で押収したくて堪らなそうな顔をしたが、ダンブルドアの杖にダドリーを引っ張ってはクッションに小さくなって身を沈め黙り込んだ。