部屋は大きなテントの中にいる様な装飾で天井と壁はエメラルド、紅、そして金色の襞飾りで優美に覆われていて、中は込み合ってムンムンしていた。
「はぐれない様に手を離さないでおいて。」
「え?えぇ。判ったわ。」
ハリーはレンと指が絡み合う様に手を繋ぎ直せばそのままきゅっと握り、レンもその手を握り返せば、ハリーはどこか照れくさそうに笑む。
天井の中央からは凝った装飾を施した金色のランプが下がり、中には本物の妖精がきらびやかな光を放ちながらパタパタと飛んでいて、ランプの赤い光が部屋中を満たしていた。
部屋の隅の方からはマンドリンの様な音に合わせて歌う大きな歌声が流れ、年長の魔法戦士が数人話し込んでいるところには、パイプの煙が漂っていた。
それに小さな屋敷しもべ妖精は足元をキーキー言いながら動き回っていたが、食べ物を乗せた重そうな銀の盆の下に隠されてしまい、小さなテーブルが1人で動いている様に見えた。
「これはこれは、ハリー!」
スラグホーンがハリーを見つけると嬉しそうに声をかけ、そしてレンを見た。
「あー…一緒に誰か連れてきても良いって仰ってたんで、レンを。招待された者同士が一緒に来てはいけない、って事はありませんよね?」
「勿論だとも。それにしても君達はいつも一緒なのだな。」
「はい。大切な…家族ですから。」
「あぁ、そうか。そうだったそうだった。」
スラグホーンはレンのドレスから髪など見た目を一頻り褒め、レンを紅く染め上げたが、スラグホーンはハリーに会わせたい人が大勢いるとその手を引っ張り、ハリーはレンの手をしっかりと繋いでいる所為でレンもそのまま引っ張られていく。
「ハリー、レン。こちらは私の昔の生徒でね。エルドレド・ウォープルだ。血兄弟―吸血鬼たちとの日々―の著者だ。…そして、勿論その友人のサングィニだ。」
小柄で眼鏡をかけたウォープルはハリーの手をぐいっと掴み熱烈に握手した。
吸血鬼のサングィニは背が高く窶れていて、目の下には黒い隈があり、かなり退屈していた様子だったが、興味津々の女子生徒がその周りを歩いていて興奮気味だ。
だが、レンと視線があった途端、その瞳を輝かせてズイッとレンの前に歩み出た。
「高級な蜂蜜酒の様な芳しい馥郁な香り…魅惑な香りだ。…ミス、お名前は?」
レンの腰を抱きしめてうっとりとした様な表情を向けるザングィニにレンは驚き、あまりにも近い顔に顔を真っ赤に染め上げては驚き変な声を上げてしまい、恥ずかしそうに「レン・クレスメントです。」と消え入りそうな程小さな声で言った。
「ザングィニ!大人しくしていなさい!」
ウォープルは慌ててレンとザングィニを引き離すと「申し訳ない。」と頭を下げてくれる。
「血に特殊な魔力が宿るクレスメントの血だ、仕方あるまい。」
スラグホーンは楽しそうに小さく笑う。
「え、えっと…こ、こちらこそ驚いてしまって失礼を申し訳ありません。改めまして、レン・クレスメントです…以後お見知り置きを。」
そうぺこりと頭を下げて言えば、思わずハリーの後ろに隠れてしまい、男性達は笑い声を漏らす。
「お噂の通り、控えめでお美しいご当主様だ。」
うー…とレンが小さな声で唸りハリーの背中に額を寄せると、ハリーは笑いを堪えるのに必死な様子だった。
ウォープルはハリーの伝記を出したがっている様子だったが「全く興味はありません。」とはっきりと伝えていた。