寮まで話しながらたどり着けば、ハリーは「おやすみ」と笑んで挨拶をし手を離し寮へと戻ったハリーを見送り、レンは談話室のソファに腰を下ろした。
自分の中に“もしかして”とあり続けるある1つの事があの翻訳をした本やあの記憶によってだんだんと確かなものへと変わっていき、苦笑しか漏れない。
この可能性だけはハリー達には知られてはいけない。
それだけははっきりと判ってはいるのだが、まるでそれを認めたくないと無意識に思っているかのように、それと真逆の事ばかりしてしまう。
運命が怖い訳でもない、受け入れたくない訳ではない…けれど…もう少し、もう少し…と、希望や欲が生まれてしまう。
「欲深く…そして弱くなったわ。…昔ならこんな事気にもしなかったのに…。」
レンはそう呟くと大きく深呼吸をし、気合を入れるように頬を叩き気持ちを入れ替えれば寝室へと戻っていった。

次の日の朝、レンはハーマイオニーと共に朝食を食べに行き、授業に行く。
そして昼食後、直ぐに席を立ち「先に授業に行っていて。」とハーマイオニーに言い残しては、足早にある者の背中を追いかけた。
「ドラコ。」
レンが呼べばその背中は若干震えた様な気がした。
クラッブとゴイルに先に行ってろ。と一言言えば、レンが追いつくのを待っていてくれた。
ドラコは気を遣っているのだろう、呼び止められた廊下の壁に背を当て、人目につく場所で「どうしたんだ?」と中庭を見ながら口を開いた。
「どうしたんだ?じゃないわよ。」
レンが軽くパチッと音を立ててドラコの両頬を両手で挟む様にして此方を向かせれば、ドラコは驚いた様に目を丸くする。
「やっぱり…隈が酷いし、瞳も赤い。それに私よりこんなに大きくなったのに、痩せて私より細いんじゃない?しっかり眠っているの?食事は?」
「キミは母親みたいな口ぶりだな。」
「母様の言う事は聞くものですよ、ドラコ。って言ったら聞いてくれるの?」
レンは悪戯っぽく言えば、ドラコはその手を離させて小さく首を横に振った。