『そして決心したので御座います。
大切なアクアお嬢様の…初めてのヒトのお友達であり家族の為に何もできなかった役立たずの屋敷しもべへのお仕置きとして、勝手ながらもご主人様のこの命令に背き続けましたで御座います…。
レンお嬢様…どうかアクアお嬢様のご遺体をお連れ戻し下さい。
お1人を嫌うお嬢様でしたから、お嬢様はきっと寂しがっておられます。
ピーター坊ちゃまは生きてらっしゃいます…
きっとそれがシリウス坊ちゃまを解放する手掛かりになるとシャルめは思っているので御座います。
ピーター坊ちゃまやルシウス様にはご注意くださいませ……
シリウス坊ちゃま、リーマス坊ちゃまに…もしお伝えする事が可能で御座いましたらお伝えしてください。
この役立たずでとても悪い屋敷しもべの最期の気持ちを…アクアお嬢様をどうかお救いくださいと…。
屋敷しもべの分際でお嬢様にお願いする数々の無礼をお許し下さい。
シャルめは貴女様と過ごせました事、幸せで御座いました。
レンお嬢様がシャルめを同等に扱ってくれ慕ってくれた事アクアお嬢様の様な考え方をなさる様になってくださった事…レンお嬢様の全てがシャルめの幸せで宝物で御座います。
シャルめはいつも…お嬢様の…傍で見守っております。
お嬢様の未来が明るいものへありますよう、シャルめは願い続けております。』
レンはそう最後まで読むと袖で何度も涙を拭う。
「日付はシャルが亡くなる前日になってるわ。」
「屋敷しもべは命令なく家から離れる事ができない…シャルは全てを知っていて、何も出来ず話す事すら出来ず、動けない自分を悔いていたんだね。」
レンの背を撫で続けながらリーマスは優しくそう言ってくれる。
「シャルは一般的には悪い屋敷しもべだったのかもしれないが、私達にとっては良く出来た屋敷しもべだった。アクアを訪ねて私がここに来た時にはもう、この屋敷にいて若く初々しい屋敷しもべだった…アクアはシャルを気に入り友達だとそう私達に紹介した時の驚きを今も覚えている。」
シリウスは懐かしそうにそう言い、彼もまたシャルを気に入ってくれてたのだと思えばレンは嬉しかった。
「シャルの遺志は私が継ごう…今は身動きが取れないが…そうさせて欲しい。シャルの友の一人として唯一の償いをさせて欲しい。」
「シリウス、私もその手伝いをさせてくれ。アクアもシャルも私にとっても友だ。」
「あぁ、リーマス。一緒にやろう。…レン、構わないかな?」
「良いわ…私が母を探すより、2人がそうした方が喜ぶと思うから。」
その日、2人の男は、シャルの墓の前でお酒を飲みかわしていた。
レンはそれを邪魔せぬように早めに自室に戻れば窓の外で見えるその灯りに、少しだけ微笑み眠りについた。