第1話
夏休み前に魔法省大臣に食事に誘われていたレンは、社交辞令かと思い、OKの返事をしていた。が、そうではなかったらしい。
「親しくもない人と2人で食事など嫌よ」と子供の様に駄々をこねはじめたレンをリーマスは苦笑しながら正装のアドバイスをし、彼女を送り出した。
レンは早めに出てダイアゴン横丁に出向けば、マダム・マルキンの洋装店に行く。
シリウスに「出掛けるならば、そこで受け取って欲しい物がある。ついでに自分の寸法も変わってないか測って貰うと良い」と言われたからだ。
シリウスは「パッドフット」という名で自分の服を新調していたらしく、それらを受け取れば、自分が言う前にマダム・マルキンはレンの寸法を確認した。
どうやらシリウスから事前に知らされていた様子だ。
レンは魔法で受け取った物を家のリビングに飛ばし、更に其処で買い物をしてから、ファッジとの会食を済ませる。
知らない人と気を遣いながらの食事は、食事の味も良く判らないし緊張して楽しくない…が楽しい振りをしなければいけない。
なんだかどっと疲れたと思いながら帰宅すれば、何かがあったのだろう、リビングが異常な静けさを保っている。
「お帰り、レン。」
「ただいま、リーマス。いったいどうしたの?」
そう言われてリーマスの視線は床の上に行く。
シリウスもお手上げの様でソファの背凭れに背を預けている。
「森のケンタウルスから預かりものだ、レン。」
シリウスがそう言いながら視線を向けた床へレンも視線を向ければ、1人の屋敷しもべ妖精がちょこんと正座をしていた。
「お、お初にお目にかかります…」
その屋敷しもべは緊張しているのだろう声は張り詰めていたが、それよりもそれの外見に視線がいってしまう。
特徴のある大きな耳は、片耳だけ切り落とされたように半分なく、大きな瞳は片目が潰れている。
「私は…あるお屋敷に勤めていたのでございます…ですが良い屋敷しもべではなかった為、ご主人様に洋服を貰ってしまったのでございます…」
レンは移動し、その屋敷しもべの側に行き床に座れば、その屋敷しもべは飛び跳ねて距離を取ると土下座をしたまま顔を上げない。