世界は広いんだということを、これから知ることができるそうです。 でも、ここは私の知る世界ではなかった。 国を知る これまた成長してから早数年。 私はようやく外に出ていました。 もちろん、家周りの庭と森の中だけですけど。 ミュウツーさんや他のみんなと一緒に仲良く食料集めなど、とっても楽しい日々を過ごしました。 そんな日々の中、気づいたことが多々あります。 それは、私の身体がよくわからないことになっていたということ。 「…ミュウツーさん、また手が…」 「(……)」 キュッと触れられた私の両手。 ミュウツーさんは、相変わらずの不思議な手で私の両手をするりと撫でた。 すると、ピキピキと筋張っていた両手がじんわりと落ち着いてきた。 鋭く尖っていた爪も、丸みを帯びた形に戻っていた。 その事実にほうっと息を吐くと、ミュウツーさんも安心したようにそろりと手を放した。 けれど、ミュウツーさんが私の傍から離れない。 どうしたんだろう? そっと見上げてみる。 「ミュウツーさん?」 「(……)」 今日はフ―ディンさんと三人で木の実を集めに森へと出てきていた。 各場所を決めて、各々担当箇所で木の実を集めていたのだけれど。 私の異変が落ち着いた今でも、ぴったりと私の横に張りついているミュウツーさん。 その眼はどこか、森の奥の方に向けられていた。 「(……)」 「え?」 同じ方向に、視線を向けようとしたその一瞬。 私の小脇に手を差し込んだミュウツーさん。 ひょいっと浮き上がった身体がいつの間にか木の上に移動していた。 「どう…んっ」 「(……)」 突然のミュウツーさんの行動に言葉を投げようとする。 けれど、咄嗟に抑えられた口元。 言葉を出せなくなってしまった。 刹那、ミュウツーさんの雰囲気が一気に冷たいモノへと変化していることに気づく。 その様子に私はキュッと口を結ぶと、十数秒後に木の下にいくつかの影が姿を現わしたことに気がついた。 「(……)」 「…」 その影をじっと見つめていれば、何かを探すように辺りをきょろきょろと見回す影たち。 その容貌は、まるで前の世界でも歴史や架空の存在として知られていた「忍者」のようだった。 ミュウツーさんが私を抱く腕に力を込める。 「…!」 「(……)」 そして、ミュウツーさんが一つ上の高い枝に飛び乗った瞬間。 その影たちがその場で血飛沫を散らし始めた。 瞬く間にパタパタと倒れていく影たち。 その中心で、一つの影が長い何かを周囲に回していた。 人影…?回し蹴り? じっとその場で見つめていれば、どうやら決着がついた様子。 中心にいた人影が動きを止めると、ミュウツーさんは力を込めていた腕を一瞬だけ緩めた。 そして、不意にとん、と押された背中。 「え」 「(……)」 私は、理解も何もないままに、気づけばそのまま落下していた。 下には相変わらずの一つの影。 どういうこと? 私は小首を傾げながら、そのままじっと落ちていった。 そして、地面に到着する頃には、ぼんやりと、空を背景に立つミュウツーさんを眺めていた。 彼の伝える言外の声を聞きながら。 (そう) (これがこの国の在り方なんだ)