突如感じたおまじないの落ちる音。 垣間見えた何かは蒼い閃光を纏っていた。 蒼い閃光 波の国へと手紙の配達を終え、ミュウツーさんと一緒に街を歩いている時だった。 スリの男をいなした瞬間、突如胸の内に感じた糸が切れるような感覚。 私は頭の隅に映った青白い光に一瞬だけ目を眩ませた。 「…う」 「(…)」 ミュウツーさんが、よろめいた私の身体を支えてくれる。 その際に群がってきた街の住人たちは、目に見えないミュウツーさんの尻尾に払われていた。 怪奇だと言って去っていく姿が面白い。 「…だいじょ、ぶ。ありがとう」 「(……)」 体勢を整えれば、ミュウツーさんが私の腕を引っ張って路地裏へと私を連れて行く。 そして、路地裏に入った瞬間に私を抱きかかえて、少し離れた海辺にテレポートしてくれた。 そっと降ろされる身体からは、どくどくと逸る自分の心音が大きく聞こえてくる。 私はミュウツーさんに疑問を投げ掛けながら、おそらくミュウツーさんも感じているであろう気配を探った。 ミュウツーさんの横には、いつの間に出てきていたのか、スイクンさんがこちら心配そうに見遣っていた。 「…スイクンさんまで、出て来たの…?」 「(……)」 「(…)」 ミュウツーさんと顔を突き合わせているところが何とも言えない。 面白い。 「わたし、たぶん、感じた」 「(…)」 「ハクさんか、再不斬さんのおまじないが切れたこと」 「(……)」 私の言葉に二人はコクリと頷いている。 ということは、この感覚はまちがいではないんだろう。 …それに、これはおそらくハクさんの方だ。 私は、最大限の円でハクさんの居場所を感知した。 「…橋…」 すると、なぜか脳裏に浮かんできた先ほど垣間見た蒼い光。 それが何かはわからないけれど… 「(……)」 「…ん、きっとそうだね」 「(…)」 「その、蒼、が殺した…」 伝えられた言外の言葉に、ミュウツーさんとスイクンさんを見遣る。 二人もハクさんの気配を感知したんだろう。 もう間に合わないであろう気配を理解している眼をしていた。 「珍しく…ミュウツーさんが止めなかった人なのに…ね」 「(…)」 「…そっか。なんとなく…か」 私は、ミュウツーさんにゆるりと微笑むと、スイクンさんにそっと触れた。 ふわりと靡くたてがみに顔を埋めさせてもらいながら。 きもちー。 「ミュウツーさん、スイクンさん。私…お腹空かないし、何とも思わない、けど…なんとなく。ハクさんは、カモミール好きだって言ってくれたから…。どうしようかなって思った」 「(……)」 「ん」 「(………)」 「う…ん」 のそりと起き上がらせた顔。 私は、二つの両目でしっかりと二人の顔を視界に捉えると、ゆるりと笑いながら足先を動かした。 刹那、心臓を駆け抜けたもう一つの事切れたおまじない。 私はそれを感じながら、最後にもう一度だけ二人に笑い掛けた。 「…蒼ね」 三つの影がその場から姿を消した。 (蒼…) (ハクさん、白はきれいだね)