不知火さんの顔がとても久しぶりに思えた。 帰ったときの第一声が「手紙は出せたか」だったけれど。 忍ぶ涙 「さてと、久しぶりに一緒に任務でもするか」 「…はい」 「一人任務から帰ってきても相変わらずか、お前は」 「?」 波の国から帰ってきて早一週間。 久しぶりに会った不知火さんは相変わらずでした。 不知火さんと今日の任務をこなしていると、私は不意に頭の端をチラつく白花の残像が気になった。 だからかは、わからない。 けれど、ぽつりと漏れ出る声を押しとどめることができなかった。 「…忍び、は…」 「あ?どうしたルカ」 「…は」 「おい、どうしたほんとに。何かあったのか?」 「涙…、きれいに、流せない…の」 私の様子に何か感じるところがあったのか、不知火さんは書類を分けていた手を止めると、徐に私の元へと来て、頭に手を載せながら私の顔を覗き込んでいた。 けれど、私の呟きを聞き取ったのか、覗き込んでいた不知火さんの表情が一瞬だけ強ばったモノになった。 すると、ゆっくりと私から距離を取っていく不知火さん。 私はそれに合わせて、自身の顔を上げた。 ぱちりと重なる視線。 不知火さんは書類を捌いていた席に腰かけると、ため息一つ吐いてから私を視界に収めた。 「おいルカ。なにがあったかは知らねーがな、人間泣き顔なんて汚ねェもんなんだよ」 「……」 「忍びは、ただそれ以上に泣き方が汚ェだけだ」 「…どうし」 「…泣き方なんざ、忘れちまうからな」 「…」 口に咥ええたままの枝を上下に揺する不知火さん。 面倒くさそうな態度は相変わらずだけれど、額に手を当てながら此方を射る瞳はやけに力強かった。 そして、少しの哀しみも映っているような気がした。 「別に俺は自分の思ってることが正しいとか思わねェけどな。ルカ、これだけは言っとく。忍びなら目の前の人間から目を離すな。それが生きていようが死んだ人間だろうとだ。それが俺たち忍びに課せられた業ってモンだ。逸らしたが最後、テメエがやられちまうからな」 「……不知火さんは、きびしい」 「フッ、たりめーだろ。俺を誰だと思ってんだ」 「……不知火さん」 「そういうことじゃねーんだよ」と、いつの間にか再び近くに来ていた不知火さんは、私の頭をぐりぐりと撫ぜつけながら口角を上げている。 私はそんな不知火さんを見ながら、こくんと、静かに頷いた。 ぽんぽんと降りてくる手は、出会ったころに比べたら幾分か優しいモノになっていた。 「それじゃ、任務再開といくか……って、おいおい、まじか。今から鷹かよ…」 「?」 満足するだけ人の頭を撫で繰り回した不知火さん。 書類捌きの続きを進めようと、私の席から離れようと足を動かした時だった。 不知火さんが窓の外に目を遣って、ため息を吐きながらその動きを止めていた。 その視線を追うと、私は「あぁ」とその理由に納得した。 「…招集ですか?」 「ん?あぁ。今から招集とは、火影様も忍び使いが荒いことで。俺いつか過労死すんぞ」 「……」 「はぁ、ルカ、ここは頼んでもいいか?」 「…はい」 「悪ィな。よろしく頼んだわ」 「はい」 「最後にもう一回だけ」と言いながら、私の頭を掻き混ぜた不知火さん。 してやったりの顔を私に向けると、口角を上げながら、部屋の扉に手を掛けていた。 「それじゃいくか」 「……いってらっしゃい」 「フッ、めずらし」 ひらひらーっと手を振って扉の影に消えていく不知火さん。 硬派なイメージがとことん最近崩れていく。 真面目でクールだけれど、あんなにも面倒くさがり屋だとは知らなった。 私は、窓の外を旋回する鷹にチラリと視線を向けると、茫然とその光景を眺めた。 もちろん、書類仕事の任務はきちんと片づけました。 (ルカ、中忍試験だとよ) (…) (出るか?てかお前出られんのか?ワンマンで) (……)