ワンマンでも可能だとよ。 よかったな。 特別予備試験 先日の不知火先生の爆弾発言から一日。 私の手元には一枚の紙きれがありました。 ―――『中忍試験志願書』。 担当上忍は私をワンマンで推薦したそうです。 それもかなりの反対を食らったと、笑って話していました。 ……私もどうかと思います。 「…ちゅう、にん」 右手に持つ志願書を太陽の陽光に翳す。 今いる場所は里の森の中。 私は、ここで今朝方からずっと茫然とした怠惰な時間を過ごしていた。 ミュウツーさんが私の横で不思議そうに、私と同じく志願書を覗き込んでいた。 ミュウツーさんは里の中でも、外に出るときは姿を消している。 だから、どんな人や動物が来てもその姿を露見させてしまうことはない。 私は、はたから見ればひとりごとを呟くようにミュウツーさんに話掛けていた。 「中忍試験…どう思う」 「(……)」 「ほかの同学年?…わからない。連絡とって…ない。それに会ってないから」 「(……)」 「『会う必要はない』?ミュウツーさんは、アカデミーの子たち…嫌い?」 「(…)」 「…そっか」 私は不意に触れられた頬にスッと目を細める。 冷たくて気持ちの良いミュウツーさんの手はとてもやさしい。 私は、襲い来る眠気に抗うことなく、そっと静かに瞼を下ろした。 「…おい」 「…?」 「こんなとこで寝てんじゃねェ」 そうして幾分かころころと芝生の上で転がっていれば、いつの間にか眠りに落ちてしまっていたらしい。 軽く揺すられるような衝撃に目を覚ました。 ポツリと声が降って来る。 …?だれ? 「起きたかよ。ったく」 「?だ、れ…」 「…はぁ。そういや口利いたことなかったな」 「?」 私はその場に身体を起こすと、傍に感じないミュウツーさんの気配に首を傾げた。 けれど、突如視界に現れた少年がその疑問を遮った。 どこかで見たような顔だ。 彼は…たしか、ナルトさんと一緒にいた…。 「うちはサスケ」 「…う、ちは?」 「…お前はたしかルカだろ」 「…」 むすりとした顔を向けられる意味が分からない。 うちはさんと名乗った少年は私の名前を確かめるように呟くと、こくんと頷いた私の様子にどこか安心したようにホッとため息を吐いていた。 徐に私の横に腰を降ろしてくる。 「…?」 「お前、アカデミーでキバとよく一緒にいただろ。もしくはシカマル」 「…(こくん)」 「聞こえてはいるんだな」 「え?」 「いや、前に話掛けたときは、返事しなかっただろ」 私はうちはさんの言葉に考え込むようなしぐさをする。 それに対してうちはさんは「覚えてねーのかよ」と漏らしていたけれど、私としてはとんと覚えていないので、どうしようもなかった。 それよりも彼は何か用なのだろうか? 「…あの」 「なんだ」 「…なにか、用ですか」 「いや。ただここで普段修行をしてる。そこにたまたまお前がいただけだ」 「じゃ、ま…でしたか?」 「そういうわけじゃない」 「……」 ならばどうしたんだろうか。 私は茫然とするだけになってしまった。 それよりもミュウツーさんはどこへいったのだろう。 私はミュウツーさんにテレパシーを送ると、家の方から返答が届いたことに、そちらに目を遣ってしまった。 「?何かあるのか」 「え」 「そっちの方に」 「いえ…」 突然、一方向を凝視した私の行動が不思議だったのか、無表情のようなうちはさんの顔が少しだけ動いていた。 私はそれを目の端で捉えると、ミュウツーさんに「あと少ししたら帰る」と伝えた。 けれど、そんな言葉を送った瞬間。 私は、それを削除するように、ミュウツーさんに「やっぱりもう少し遊んでく」と送り直した。 「…うち、はさん」 「?なんだ」 「四時の、方角…」 「は?」 「…二体来る。あと二分くらいで」 「!」 ゆくりとなくその場に立ち上がった私に怪訝の表情を窺わせたうちはさん。 けれど、私の言葉を耳にすれば、その表情は一気に真剣なものへと変わった。 ガサガサと風に揺らされる周囲の木々。 私はうちはさんからサッと離れると、遠くの二体の内、一体が私の方向に向けて動きを変えたことに気がついた。 どうやらそれぞれ私とうちはさんを狙っているようだ。 「おい、ルカ!どこにいく気だ!」 「…二体のうち、一体こっちに来る」 「なんだと?!ならなおさらここを離…!!」 「ひとり、一体ずつ。…効率がいい」 「っおい!!」 伝えた言葉を最後に、私はその場を一瞬で離れる。 後ろからうちはさんの呼ぶ声が聞こえたけれど、私は構わず森の奥からこちらに向かってくる一体を目掛けて走り出した。 走るの久しぶりだなんて思いながら。 「…くく、排除させてもらう」 「…」 そうして森の中を突き進んでいれば、読み通りのポイントで落ち合った相手の一体。 物騒な物言いの割に、当ててくる殺気は、ひどく抑えられたものだった。 …中忍試験と関係あるのかな? 私はそんなことを思いながら、目の前に佇む、笠を被った敵と相対した。 「ゆくぞ!!」 「……」 「っく」 いきなり飛び込んできた相手をするりと躱す。 木の上での攻撃に、枝移り状態が何度か続いた。 もし、これが中忍試験に関係するのなら、変に力を使ってしまってはダメだ。 私は相手の様子を見ながら、ひらりひらりと相手の攻撃を避け続けた。 「…ちょこまかと!」 「…」 けれど、だめだった。 この私が相手の云々を考えて行動するなんてムリでした。 すみません。 「っ!」 「…」 右後方から投げられた数本のクナイ。 それを飛ぶことで避ければ、その先に準備されていた起爆札。 私はそれに触れずに、するりと身体を捩ると、そのまま地面に着地した。 呼吸を吐く間もなく降り注いでくる、手裏剣。 そのときだった。 じっと我慢していた衝動が動いてしまったのは。 「ぐっアああああ!!」 「……」 テレポートで相手の背後に回り込んだ瞬間。 勝手に変形していた鋭い爪で心臓を抜き取りそうになった。 けれど、不意に見えた相手の正体。 変化しているだけだったらしい相手の正体を見抜けば、私は瞬時に爪の変化を解いた。 しかし、僅かながらに遅れてしまったその行動に、相手の背中が抉れてしまった。 …まずい。 私は、咄嗟の判断で周囲の空間を断絶すると、怪我を治癒させるためにリカヴァリィを相手の背に掛けた。 もちろん相手の意識を奪った後に、の話だけれど。 そして、相手の背中の傷が癒えた頃。 私はご都合主義をいかんなく発揮して、他所様の記憶をいじくり回させて頂いた。 もちろん、この能力を使っていることはミュウツーさんにすでにばれているだろうな、とドキドキとしながら。 私は「自分が敵様をただ単に気絶させたのだ」というシナリオに記憶を改ざんさせて頂くと、そっと彼を木の幹に寝かせた。 そして、これから対峙するであろうミュウツーさんの表情を想像しながら、その場をテレポートで一瞬のうちに去っていった。 (た、た、だいま…) (「…」) (あ、あのね、どこもケガしてない…) (「……」)