「なァエロ仙人ってば!!一体どこ行くんだってばよ!!」 「まぁまぁそう慌てるな、とびっきりの美人に会わせてやるからのう」 「それってばただエロ仙人が会いたいだけじゃねーか!!」 白い花 大蛇丸率いる音忍一行による「木の葉崩し」が失敗に終わり、今日で一週間になろうとしていた。 火影の死体と供に見つけた大蛇丸の死体をもとに、音隠れの里に全面的戦争停止を言い渡したのはつい先日のこと。 三代目火影という大いなる存在を失った木の葉の里ではあったが、復興は着々と進められていた。 砂隠れの里との交渉も安定し、里は徐々に活気を取り戻しつつあったのだ。 「よ」 「…はたけ上忍」 里の復興に駆られる人々に加え、現在では里中の上忍たちが国内外の任務に駆り出されている。 勢力低下を示さないためとはいえ、多くの木の葉の忍びが疲れの色を隠せないでいた。 それは勿論、里随一と謳われる上忍はたけかかしであろうと、常に冷静さを欠かない特別上忍不知火ゲンマであろうと、誰一人とてその枠からは漏れていなかった。 「今から任務?」 「えぇ、そういうあなたは任務帰りですか」 「まーね」 任務報告の書類を提出するアカデミーの一室。 そこでたまたま出会った二人は、一週間ぶりに言葉を交わした。 「相談役たちも人使いが荒くて困りますよ」 「はは、確かにね。ま、この状況じゃ仕方ないでしょ」 「そうですね。下忍たちまで使われてるようですし」 「あー…そういやうちのナルトが自来也様の供に連れてかれたような」 「ナルト君ですか、面白い子に育ちましたね」 「ま、うちの班の意外性ナンバーワンだから」 「そうですか」と漏らされたゲンマの言葉はひどく小さい。 その様子にカカシはちらりと窓の外を見遣った。 言葉にはしないが、ゲンマの様子から見て何を思っているかなどすぐに予想がついたからだ。 カカシは頭の片隅で「なにしてんのよ」と言葉を紡ぎながらゲンマに視線を戻した。 「ま、元気出しなさいって」 「は?」 「いつかひょっこり戻ってくんじゃないの?」 「…」 「大して知ったような事言える立場じゃないケド、そんな感じの子だったでしょ」 「だからさそんな気負わなくてもいいんじゃない」そう言葉を漏らしながら、いつもの嘘くさい笑みとは違った笑みを見せるカカシ。 その表情を真正面から向けられたゲンマは、スッと窓の外に目を遣った。 別に不快だとかそう意味ではない。 ただ、今日も一週間前と同じ真っ青な空だと思ったからだ。 それに眼前の男に自身の思考がダダ漏れであることに苦笑が漏れそうになってしまったからである。 「いや、いいんですよ。気にしてませんから」 「…」 「アイツがどこでなにしてようと、俺は待つだけですから」 「そ」 「そうですよ」 目を伏せたゲンマの脳裏に浮かぶのはたったひとつ。 あの日を境に姿を消してしまったたった一人の部下。 窓に向けられたままのゲンマの顔には穏やかな陽光が当たっていた。 カカシはそんなゲンマの様子に眉尻を下げた。 「それならいいんだけど」 「それにあなたから離れてようやくアイツの安全も確保されましたしね」 「…え、なにそれ」 「そーいうことですよ」 フッ、と口の端から漏れた笑い。 ゲンマはニヤリといつもの表情を携えると「それじゃ失礼します」と一言カカシに告げて片手を上げながら去っていった。 その場に残されたカカシは「しょうがないね」と、顔布に隠された口元で笑みを漏らす。 そして、任務報告の部屋へと続く扉に手を掛けると、同僚の元気が早く戻るようにと心の隅で願ったのだった。 「…ルカ、俺はお前がどこにいようと、いつまでもお前の上忍だ」 ―――窓の外には白い花が咲いていた。 (完)