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「どこに行っていたんだ、蓮実?」
「散策よ。いちいち貴方に言わないとダメかしら?私は男子テニス部のマネージャーではないのよ」
真っ直ぐ自分を見下ろしてくる跡部を蓮実は見上げる。
「そんなこと言ってねぇだろ」
「蓮実お嬢様」
跡部と話していると西浦家に仕えている執事が蓮実に話しかけてきた。
「なに?」
「旦那様と奥様から言伝てです。急ぎの仕事が入ったそうで本日は帰国しないそうです」
「そう・・・わかったわ。下がりなさい」
寂しそうな顔を一瞬した後、蓮実は執事を下がらせる。
「俺様の家に来るか?」
「いいえ、大丈夫よ。でも今日はここで帰るわ」
軽く頭を下げると蓮実は去っていった。
「また強がりやがって・・・」
跡部は小さく呟くと部員の一人に声をかけて、蓮実を追いかけていった。
ユラユラと揺れて心地いい。本来なら喜んでいるのだが、今は恥ずかしさから顔を上げられず逞しい背中に顔を埋める。そんな喜美を見て、仲間たちは驚く。
「喜美、どうしたんだ?」
「足捻っちゃって***先に行ってって行ったんだけど」
神尾の質問に顔を伏せたまま答える。
「喜美は軽いからなんてことない」
「でもこれから試合***!」
パッと喜美は顔を上げる。彼はここに怪我をした自分を背負いにきたのではない。大事な試合がこれからある。それなのに疲れるようなことをさせてしまった。
「俺まで行かないだろ。俺はシングルス1だからな」
「そうですけど」
確かにみんな強い。それは分かっている。
「石田、手当してやってくれ」
喜美をベンチに下ろし、橘は石田に声をかける。
「はい、わかりました」
石田は慣れた手つきで喜美の足に包帯を巻いていく。
「ありがとう、石田」
「今度は気をつけろよ」
「うん」
小さく喜美は頷いた。
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