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靴を脱いでベンチに座っている男が蓮実の腕を掴んでいた。
ナンパされて手を掴まれたのだが、女性なら誰でもいいと思っている男がこの世で一番嫌いな蓮実の瞳は心底冷たい。
「貴方に興味ないわ」
ばっさりと冷たく言い放たれた氷のような言葉。
だが、尚も蓮実の腕を掴む手の力は緩まりそうにない。
「そんなこと言わないでさ」
「だらしがない人と一緒にいたくないのよ。さっさと靴を履いて失せなさい」
「わっ」
小さな悲鳴が上がる。三つ編みの少女が男の靴を踏んで倒れそうになっているのを横にいた桃色の髪の少女が支えていた。
「あー!俺の靴踏みやがって!」
「ご、ごめんなさい」
「いや、許さねぇ。クリーニング代2万寄越せ」
「もういいじゃない。謝ってるんだから」
「そんなところに脱ぎ散らかしている貴方が一番悪いのよ」
「うるせぇ」
殴ろうとする男の拳を掴む蓮実。
「だらしがないにダサいもプラスしましょうか?」
キリキリと手首を締め上げた後、蓮実は手を離す。
「おいおい、女の子に手を上げちゃいけねーないけねーよ!」
走ってきた桃城のラリアットを食らい男が倒れる。
「靴なんて洗濯しろ」
襟首を掴んで桃城は男を起こす。
「てめぇ」
「まったく最低な男だな。もっと靴を汚してやろう」
桃城に追いついてきたひとえが足を上げて男の靴を踏もうとする。
「わあ!やめろ!」
男は「覚えてろ」と言うと靴を持って去っていった。
「ありがとう、助かったわ」
「ありがとうございます」
桃色の髪の少女と三つ編みの少女が礼を告げてくる。桃城とひとえは笑顔でその言葉を受け止めた。
「蓮実」
「跡部」
名前を呼ばれると蓮実は跡部を見る。
「あーん?桃城と杏ちゃんじゃねぇか。なんで二人といるんだ?」
「なんでもいいでしょう?帰りましょう」
何となくややこしいことになりそうだと思い、跡部の手を掴むと3人に頭を下げて蓮実はその場を離れた。
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