ガール・ミーツ…

「休みだね」
「お、緑谷おは――……」
「おはよう!!」


 週末。今日は百ちんの予習会だけど、私は別の大事な予定が入っていた。
 玄関先で待っていると、待ち人とは別の二人組が出て来た。

「あ、講習組」
「そのまとめ方ヤメロ!!」
「結月はインターン事務所に行くんだったか」
「けっ」
「うん。まだ正式に決まったわけじゃないけど……。二人は今日から仮免の講習かぁ。行ってらっしゃい!」
「ああ、行ってくる」

 焦凍くんと爆豪くんの並んで歩く姿はレアだ。

「先生に感謝だな。権利はく奪になんなくてよ」
「うるせェな……」
「早くあいつらに追いつかねェとな」
「だァからうっせんだっつの!!後ろ歩けやクソ!!」
「歩幅はそんな変わんねえからな」
「アァ!?」

 二人の会話、噛み合わなさすぎて面白い。
 そんな二人の背中が見えなくなると、代わりに駆け込んできたのは……

「結月さん!待たせてごめんっ!」
「あは、待ち合わせ時間ぴったりだよ、でっくん」

 急いでやって来た、待ち人に笑って言った。

「じゃ、行こっか」

 紹介役の通形先輩とは、校門で待ち合わせだ。

「それにしても、太宰さんがオールマイトと知り合いってなんか意外だね」

 太宰さんに紹介された事務所は、なんとオールマイトのサイドキックのヒーロー事務所だった。
 そこはでっくんの希望先の事務所でもあって、通形先輩の現インターン先だという。

「私も気になってどういう知り合いか聞いたら……」

『幼気ない少年だった私が、ヴィランに誘拐された時に助けに来てくれたのがオールマイトさんだよ』

「……って。太宰さんが幼気ない少年って笑っちゃうよね〜」
「誰でも幼い頃は無垢なんじゃないかな……いくらあの太宰さんでも……」

(いやいや、太宰さんに限っては性善説じゃないと思うな〜)

 でっくんとそんな会話をしながら校門前に着くと、気づいた通形先輩が「おーい」と、大きく手を振ってくれる。

「なんかアレだね!?お似合いな二人に俺お邪魔虫かな!?後ろ歩く?案内するのに前歩けよってね!」ハッハッハッ
「ななな何言ってるんですか!?」
「先輩ってギャグセンスないですよね」
「朝でも結月さんの辛辣はキレキレだよね!」
「普通ですよぉ〜」

 朝からスベっている通形先輩につっこみながら(……お似合いに見えるのかな……)
 三人で駅へ向かう。例の事務所は、ここから電車で一時間ほどの所にあるらしい。

「ねえ、先輩。サー・ナイトアイって、どんな人なんですか?」

 電車に揺られながら、私とでっくんの真ん中に座る通形先輩に聞いた。(結局間を陣取るんかい!)
 あのオールマイトの元サイドキックって事ぐらいしか私は知らない。

「僕も気になります。実際はどんな方なのか……」
「サーという人物はね……」

 ヒーロー、サー・ナイトアイは、オールマイトの下で働いていたという数少ないヒーローだ。(でっくん情報)

 きっと、すごいヒーローに違いない。

「会ってからのお楽しみさ!」
「えぇ……」
「先輩、そういう引っ張り方よくないですよ!」
「ハッハッハッ」


 お気楽な通形先輩に連れられてやって来たのは、街中にあるビルの一角。

「ここがサーの事務所だよね」
「おォ……」
「あ、もう緊張してる」
「おいおい、角ばるなよ!良くないぜ」

 カチンコチンなでっくんに、やっぱりオールマイト関係者だと緊張するのかなぁと思っていると、別の意味もあるらしい。

「言いそびれてたけど、サーはとても厳しいんだよね」
「存じております」

 でっくんは強ばった顔のまま、サー・ナイトアイについて知っている事を話す。

「自分にも他人にも厳しく、ストイックな仕事が有名なヒーロー。モニター越しでもあの鋭い眼差し、ゾワッとしましたよ」
「オールマイトのイメージとは真逆な感じなんだね」

 オールマイト先生のイメージから、サイドキックの人も、なんとなく朗らかな人を想像していたけど。

「それもそうだけどね……サーにはメディアと違うもう一つの顔がある」
「……!?」

 もう一つの顔とは……?

「これからサーと会って話し終わるまでに、必ず一回サーを笑わせるんだ」
「へ?」

 また通形先輩の冗談かと思ったけど、どうやら本当らしい。先輩の顔が真面目だ。
 
「な……何ですかソレ!?笑わせる!?」
「サーはああ見えてというか……だからこそというか……ユーモアを最も尊重してるんだ」

 ……なるほど。全然わからない。

「それって私もですか?」

 私、つっこみタイプだからボケはちょっと……。

「結月さんは別ルートからだから、サーがどう対応するのかちょっと俺にもわからないんだよね、うん。頑張ってくれ!」
「逆に不安なんですけど!」

 そんな先輩に突き放されたら……!
 一抹の不安を抱えながら、ビルの中を進む。

「俺が出来るのは紹介までで、君を使うかどうかはサーが決める。俺も協力してやりたいけど、ここからは君一人でサーに認めてもらうしかない」

 通形先輩は、でっくんに真面目に話した。私も太宰さんの推薦とはいえ、ちょっとどうなるか分からなさそうだし、今からギャグのネタ、思いつくかな……。

「今更ですけど……会ったばかりなのに、先輩は何で良くしてくれるんですか……?」
「別に良くしてる気もないけどね」

 でっくんの質問に大した事ない、という風に通形先輩は答える。

「君はめちゃくちゃな目標を持って、それを実現しようとしてる。困ってる人がいたら、お節介やいちゃうのはヒーローの基本だろ」

 その笑顔と言葉に、先輩とでっくんは似ているなぁとちょっと思った。

「さて、あのドアの先だ。強くなりたいなら己で拓け!」

 サー・ナイトアイ事務所!
 一体どんな――……!

「昨日お伝えした1年生2名!連れてきましたよね!!」


 でっくんが開けたドアに、その後ろから覗くと……


「アヒャヒャヒャ」
「まったく……大きな声、出るじゃないか」
「「一体どんな!!!」」

 こ、これはどう説明したらいいか全く分からない光景が目に飛び込んできた!
 見たままだと、女の人がマシーンに固定されてくすぐられている。

「やめて――許して下ヒャヒャ」
「一体何が!!?」
「サイドキックのバブルガール。ユーモアが足りなかったようだね……!」
「ユーモアが足りない……?」

 足りないとあんなことされるの!?やだー
 こちらへ振り返った背の高い男性が、サー・ナイトアイらしい。

「……っ」
「うっ……おォ」

 確かに、眼鏡の下でギンッとこちらを睨み付けた目は、天喰先輩より鋭い気がする。

「結月さん……僕が先陣を切る……!」
「あ、ハイ」

 何やらでっくんは真剣な口調で言ったと思えば、その顔がみるみるうちに変化していった。

 !その顔は、もしや…………!

「緑谷出久です!!」

 オールマイトの顔マネだぁ!

 すごーい、似てる!いつものでっくんと画風が違う!

「オールマイトを馬鹿にしているのか?」
「「(スベった!)」」

 似てたのに!あんなに寄せられる人もそういないと思うけど……。

「貴様、その顔なんのつもりだ」
「いっ……」

 サー・ナイトアイはこっちに歩いて来たと思ったら、いきなりでっくんの顔を掴んだ。

「私をオールマイトの"元・サイドキック"と知っての狼藉か……」
「あっいっその……!!!」
(元サイドキックのプライドが……!)
「オールマイトにこんなシワはない!!」
「!?」

 シワとな!?

「目元のシワは通常フェイスにて役0.6p。シルバーエイジからは役0.8p」

 細かっ!

「今時ノンライセンス商品グッズでも何時代のオールマイトか識別できるよう作られる」
「ちょっ……待っ……!!」

 たぶん……サー・ナイトアイは、そのシワをでっくんの顔で直接指摘しているらしい。

「……。あれ、本当なんですか」
「サーが言ってるからそうなんだろうね!」

 思わず通形先輩に小声で聞いてから気づいた。
 よく部屋を見てみると……おやおやおや。
 そこらじゅうにオールマイトのポスターやグッズが飾られている。


 ――重度のオールマイトフォロワー!!


「非常に不愉快だ。お引き取り願おう……」
「"ビネガースーサイド事件"ご存知ないですか……?」
「………!」

 背をむけたサー・ナイトアイだったけど、でっくんのその一言に、ぴくりと反応を示した。

「水質を変えられる"個性"の中学生が川で溺れ、それをオールマイトが救助した件の事です」

 あ、その事件なら私もニュースで見て知っている。絶対、二人より全然詳しく知らないだろうけど。

「溺れた中学生はパニックで川をお酢に変えてしまい、オールマイトはそこに飛び込み目をやられてしまった……」

 そうそう。オールマイトも目がしょぼしょぼするんだなぁと思った記憶がある。

「救出直後のインタビューで見せた目をすぼめた笑顔。僕はそこをチョイスしたつもりだったんです!」

 ニッチ過ぎるチョイス……!!

「もちろん知っている。私が組む以前の事件。NHAテレビの番組"あの頃を振り返る"スペシャルでも少し触れていた」

 それデスそれデス、と頷くでっくんは嬉しそう。

ヴィランもいないし、他の活躍に比べて地味なんで、ファンサイトでも滅多に挙がらないんですけど、僕好きでして……」
(ファンの中でも濃いファンが好むエピソード的な……?)
「特に中学生が感謝を述べた後のセリフなんかすごくウィットに富んでて……」
「『こちらこそ、君のおかげでお肌10歳若返ったよ』」
「それです!!『お肌』ってのがまた!」

 ……なんか二人、意気投合していない?

「貴様……試したのか?」
「あ、いや……!学校だと御本人がいることもあって骨太な話がし辛くて……テンション上がって、つい……!」
「……あの事件の肝は、中学生の家庭環境だ」
「そうなんです!知ると知らないじゃ言葉の重みが……」

 ………………。

「通形先輩。私、ついていけないかもです」
「ミリオくん……あの子……何?」

 二人同時に話しかけられて、通形先輩はちょっと困惑した。(それはそうと、その中学生の家庭環境が気になるな……!)

「……仕方ない。話だけは聞いてやろう。して、次は君だが……」
「っ!」

 キタ……!という感じで、サー・ナイトアイはでっくんから私に視線を移した。

「まさか、あの男の弟子などが来るとはな……」

 なんか忌々しいという顔をしているけど、太宰さん……!?

「手早く済ませよう。君にユーモアはあるのか」
「いきなりですか……!?」
「(ああっ……結月さん、頑張れ……!)」

 うええ……。私、でっくんみたいにオールマイトに詳しくないし、モノマネなんて出来ないし、持ちネタなんてのもないし……!

 …………はっ!

「……サー・ナイトアイ。その眼鏡を、お借りしてもよろしいでしょうか」
「……ものボケか。よかろう」

 サー・ナイトアイに借りた眼鏡をかけると、かっこよく指でクイッと眼鏡を上げ……


「超推理……!!」


 決め台詞を言った。無論、世界一の名探偵のモノマネだ。


 ……………………。


「内輪ネタほど……つまらないものはない……」
「「(壮大にスベった!)」」
「お引き取り願おう!!!」
「待ってください待ってください!太宰さんから手紙を預かってますッ!」
「手紙…だと……?」

 慌てて太宰さんからの推薦状こと、手紙をサー・ナイトアイに渡す。

「………………」

 封を開き、手紙を黙って読むサー・ナイトアイ。


 ……………………。


「……………………ブフッ」
「「(笑った!!)」」
「……………………チッ」
「「(今度は怒って手紙をビリビリに破り捨てた――!――!――!!?)」」


 一体なんて書いたの太宰さーーん!?


「……よかろう。君のインターンを認める。あの男の元で育ったその曲がった性根は、私が正さねばならない。そして、最初の仕事だ。紙くずは片付けておけ」
「あの。私、性根が曲がってる前提ですか……?ビリビリに破いたのはサー・ナイトアイですよね……」

 太宰さんの弟子なだけで、性根は曲がっているとはなんとも心外な。

「そもそも、なんでそこまで太宰さんに嫌悪を?」

 いや、抱かない人の方が圧倒的に少ないだろうけど。

「あの男は……!オールマイトに救けられた命だというのに!一言目にはやれ自殺、やれ入水、やれ首吊り……!それも一度や二度ではない!」

 ……あー……

「何が自殺愛好家だ……!そんなユーモアの欠片もないおぞましい趣味など、私は決して認めない!!」

 なんか、国木田さんみたいな事を言っている。(同じ眼鏡だから似るのかなぁ)
 たぶん、サー・ナイトアイは太宰さんに人間的に嫌悪しているとみた。(いや、しない人の方が圧倒的に少ないだろうけど……)


 ***


「――今よりも強くなる為、私の下で校外活躍インターンがしたいと」
「はい!お願いします!」

 執務机の前で、私とでっくんは並ばされていた。ここに来た理由を問われ、でっくんは大きく答える。

学校の契約書プリント
「持ってきてます!」
「あ、私も……」
「話を遮る喋りはしない事。そのプリントにこの印鑑を押せば、契約成立となる」
「はい!!」

 一緒に大きく頷いた。一時は門前払いになりそうだったから、契約成立できそうで良かった。

「一般企業に見られる一日〜一週間の気軽な「就業体験インターンシップ」とは違う」

 サー・ナイトアイは印鑑を取り出しながら、インターンとは何かを話す。

「最低でも一か月以上の就労。もちろん有償だ。まだ授業の多い1年生であれば、公欠も増える。クラスの皆とも一律には歩めん」
「皆と歩みを合わせていては、トップにはなれない……!」

 覚悟を見せてでっくんは言った。じゃあ、私は……

「私を雇ったことを後悔させませんので、よろしくお願いしますっ!」
「…………」

 びしっとプリントを差し出す。サー・ナイトアイは、私を一瞥した後、タンっと音を響かせ印鑑を押してくれた。

 次はでっくんのプリント目掛けて――

 ッタアン!

 思いっきり外して、隣の机に押した。

「「…………」」

 そこにはくっきり「Sir Night Eye」と、印がついている。

「あの、外しましたよ」
「押す気がないからな」
「ええ!?」

 サー・ナイトアイはそう話しながらもそこに連打して……ああっ机がどんどん汚れちゃう!

「貴様がここで働くメリットは承知した」

 さらに、サー・ナイトアイは高速で叩きながら続ける。

「だが、私が貴様を雇用するメリットは?サイドキック二名、インターン生一名で滞りないこの事務所に貴様を入れてどんな旨味があるんだ?」

 例えば、私ならテレポートという"個性"自体に汎用性があり、雇用するメリットを見込めるからと説明した。(まあ、便利な"個性"ですしね)

「社会に対し自分はどう貢献できるのか、他者に対し自分がどう有益であるか。認めてもらう為には、それを示さねばならない」

 ヒーローと言っても、社会の一部には変わりないからだ。むしろ、一部になることで、その存在を認められている。

「オールマイトはパワーとユーモアを用いて示した。犯罪に脅える人々に希望を与えた。だから人々は彼を受け入れた」
「僕が……社会にどう役立てるのか……」
「貴様が我が社にどう利益となるか。言葉ではなく行動で示してみるといい」

 そして、サー・ナイトアイは席から立ち上がると……

「3分。3分以内に私から印鑑を奪ってみよ。私の下でヒーロー活動を行いたいのなら、貴様が自分で判を押せ」
「えっ……。……え!!!?」
「ユーモアではセンスの欠片もない貴様にチャンスをやろうというのだ。どうだ、私は優しいだろう」

 いきなりそんな実技試験みたい真似、と驚く間もなく、

「ミリオと結月、バブルガールは退室を」
「あっはい」
「元気がないな」
「イエッサ!!」

 言われた通りに退室する。でっくんに目でエールを送りながら、最後に私がパタムとドアを閉めた。

「ミリオくん。あんな実技面接やってたっけ?」
「俺はサーからの指名だったのでやってないですよね」

 確か、先輩はもう一年はインターンを継続していて、でっくんの話からも、去年の体育祭では先輩の成績は振るってなかったという。
 その時点でサー・ナイトアイが通形先輩を指名したという事は、その潜在能力を見抜いていたってことか。(先見の明がある人なのかも……)

「気に入られてんだよね、全くも――。あたしゃウラヤマですよウラヤマ!」

 そのバブルガールさんの言葉に、通形先輩はタハーッと独特な笑い方をしている。

「あっでも、すぐにサーに認められたあなたもすごいね!結月さんだっけ。私、バブルガール!よろしくね!」
「まだ認められてはないと思いますが……。結月理世です。ヒーロー名はトリックスターです。よろしくお願いします、バブルガールさん」

 気さくな笑顔と共に差し出されたその手を、握り返した。

「しかし、緑谷くんマズイよね……こいつはお先ダークネスだぞ……」
「お先真っ暗なんですか……?」

 ドアの向こうを見るように言った、通形先輩に聞き返す。

「サーの"個性"を相手に、その条件を達成するのはほぼ不可能だ……!」

 その言葉にバブルガールも表情を暗くさせた。

「サー・ナイトアイの"個性"って……?」


 ……――やがて、すごい音がドアの向こうから聞こえたと思えば、今はしんと静まり返っている。

「終わった感じ……?ちょうど3分経過したし」
「よォし、入ってみようか!――失礼しまァす!!」
「終わりました?もの凄い音立ててましたけど」

 元気にドアを開けた通形先輩に続いて、室内に入ったバブルガール。

 二人とも謎のポーズを決めている。

 何故?と思ったけど「……」私を見るサー・ナイトアイの視線に、ここではユーモアが大事だと思い出した。

「部屋が、大変なことになってますね☆」

 慌てて私も、二人と同じようなポーズを決めた。

「採用だ、ミリオ」
「わぁ、すごい!!!やったあ!!!」
「でっくん、おめでとう!」
「ええ!?全く達成できてないですけど」

 でっくんの言葉にえ、そうなの?と、サー・ナイトアイを見る。

「印鑑を奪り、自分で押せとは言ったが、出来なければ不採用とは言っていない」
「そんな……」
「緑谷くん、やったねえ!」
「何はともあれ、良かったよ」

 ――はい。でっくんにハンカチを渡した。
「あ……ありがとう、結月さん」
 鼻から流した血は、健闘した証だ。

「サー笑ってましたね」
「…………。結月、片付けを手伝ってもらおうか」
「……照れ隠しですか?」

 部屋の片付けは"個性"でちゃちゃっとできるからお安いご用だけど。

「貴様が来ると聞いた時点で採用は決定していた」
「え……」
「貴様が使えぬ人材ではないこともわかった」
「え……!!」

 ……それって、でっくんを試したってこと?

「だが、認めたわけではない」

 サー・ナイトアイは、そうきっぱりと言うと、膝をついているでっくんに向き合う。

「象徴無き今、人々は"微かな光"じゃなくて"眩い光"を求めている。たとえ、彼の意に反しようとも」

 そして、その手のひらに印鑑を落とすように渡した。

現代いま、誰がその力にふさわしいか。プロの現場で痛感してもらう」

 でっくんはその印鑑をしばし見つめたま、ぎゅっと握り締める。

「よろしくお願いします」

 きっと、あの3分間に二人の間で何か大きなやりとりがあったんだと……そう思った。


 ***


「じゃあ、でっくん。明日から頑張ろうね!」
「うん!また明日!」

 諸々の説明を受けて、翌日から正式にインターン活動だ。その間の寝泊まりは、私はバブルガールの所でお世話になることになった。

「理世ちゃんの師匠って、具体的にはどういう人なの?」
「天才というかすごい人ではあるんですけどね……写真見ます?」
「ちょっイケメン!彼女いる!?お姉さんに紹介して!」
「彼女はいないけど、一緒に心中してくれる美女募集中らしいです」
「……。やっぱ、なしだわ……」


 ――インターンが決まったのは、私とでっくん以外にも、切島くんがファットガムの所に決まり(ちょうど武闘派の人材が欲しかったらしい。切島くんなら適任だ)
 お茶子ちゃんと梅雨ちゃんは波動先輩の紹介で、リューキュウ事務所に決まったらしい。

 他の皆も、インターン先を探して奮闘しているという。


 翌日。


 ヒーロースーツに身を包むと、今まで以上に気が引き締まる思いだ。

「トリックちゃん。ヒーロースーツ、いい感じ!」
「ありがとうございます、バブルガール」


 自分が何者かと認識する事は大事なこと。
 私はヒーローなんだと認識して、更衣室を出る――。


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