逆サプライズのハッピーバースデー!


 "青の監獄ブルーロック"は監獄という名が付くように、厳しい環境だという。

 閉鎖された空間で、ストライカーとして生き残りをかけた戦いをしていると廻から話を聞いた時には、なまえは最近流行っているデスゲーム漫画を思い出した。

 それでも、廻にとっては一日中サッカーができて、強い人たちと試合ができ、相棒もできたこの環境は最高だとわかる。
 U-20代表との試合での廻の輝いていた姿は、なまえのカメラアイを通して鮮明に記憶に残っていた。

 そんななまえの眼が映すのは、机に置かれた卓上カレンダーだ。季節の花と動物のカレンダーで、今月は向日葵と犬の写真である。

(もうすぐ廻の誕生日だけど、ビデオ通話でお祝いできるかな?プレゼントは贈れないみたいだし)

 こっそりと玲王に聞いてみたら(廻には内緒に贈りたかったから)そう教えてもらった。食事も甘いものがほとんどでないらしく、お菓子とか廻の大好きなパイナップルの缶詰を差し入れしたかったけど。

(私は……)

 会えないけど、声が聞こえて、画面越しに顔が見えて話せるだけでも嬉しい。
 BLTVブルーロック・ティービーで、廻の頑張っている姿を眼にすることはできていたが、それは一方的なものだ。

(せっかくの誕生日だから、廻があっと驚くようなサプライズがしたいけど……)

 クラッカーを鳴らしたら、誕生日感が出るかな?
 うーんと、なまえは少しでも廻が楽しめないか考えた。


 そして――やってきた8月8日。誕生日当日。


「いぇーい、ハピバ俺♪今日1日、ちょー楽しも?なまえ!」
「!?えっ、待って待って!?」


 ――なんで、廻がここにいるの!?


 チャイムが鳴り、玄関を開けるとそこには眩しい笑顔の廻が立っていた。なまえは口をぽかーんと開けて、眼をぱちぱちさせる。……ま、まさか。

「廻、脱獄してきたの!?だめだよ!早く戻らないと……!」
「ちょちょっ、脱獄は脱獄でも、せいとーな脱獄だって!」

 正当な脱獄……?慌てて帰らせようとしたなまえに、廻は説明する。
 なんでもゴールポイントというものがあって、貯めると1日外出券がもらえるという。それを使って、今日は正式な手続きを踏んで脱獄をしてきたとか。(ちなみに玲王がそのことをなまえに教えなかったのは空気を読んで、だ)

「誕生日はなまえと過ごしたいし、この日のために、俺、頑張ったんだよ?」

 確かに……少し前から廻は活躍していたのをなまえは思い出す。ゴールもたくさん決めていた。

「ありゃ、もしかして疑ってる?」

 未だにぼんやりと、反応が薄いなまえに廻は顔を覗き込むように声をかけると、なまえは慌てて首を横に振った。

「なんか……廻がここにいるのがまだ実感が湧かなくて……。廻の誕生日になにかサプライズしたいって考えてたのに、逆にされちゃった」
「逆ドッキリ大成功!なんちって♪」

 ……画面の向こうの廻は、プロも混じる世界で戦っていて、遠くに行ってしまったようにも感じていた。でも、こうして会う廻は、なまえの知っている廻だ。変わらない関係と会えた嬉しさに、なまえの胸はいっぱいになる。

「じゃあなまえ、出掛ける準備して!」
「どこ行くの?」
「んー……全部!」
「全部?」

 不思議に思いながらも「早く早く♪」と急かす廻に、なまえは自室へ向かった。途中、あっと気づいて声をかける。

「廻、ちゃんと優さんに顔出した?」
「ん、さっき会ってきたから大丈夫!」

 メイクやちゃんとデート向きの服に着替えたいが、もたもたしていたらしびれを切らした廻が乗り込んでくるだろう。絶対。ささっと身なりだけ整え、なまえはバッグとあるものを手にして部屋を後にした。

 玄関で待っている廻に近づくと同時に。

「――廻!」
「わっ」

 パンッ!背中に隠すように持っていたクラッカーを廻に向け、糸を引いて鳴らした。色とりどりの紙テープや紙吹雪が廻の上に降り注ぐ。

「誕生日、おめでとう!」

 本当に廻は驚いたらしく、丸い眼をさらに丸くしたが、すぐに歯を見せて笑う。

「にゃはっ、最高のサプライズ♪」

 大好きな人からお祝いされるのが、廻にとって、一番のサプライズであり、誕生日プレゼントだ。

「今日はたくさんお祝いするね!廻の行きたいとこ、やりたいこと、全部やろっ」


 手を繋いで二人は玄関を飛び出す。
 真夏の太陽が眩しいなか――廻の最高の誕生日は、始まったばかりだ。





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あでぃしょなる⚽たいむ!
#ちょっと前の裏側


 "忙しい中、ごめんね。ブルーロックって、差し入れできたりする?"

「(あーこれ絶対、蜂楽の誕生日のことだよなぁ)」
「どうかした、玲王」
「ん、なまえから連絡きてさ」
「へぇ、なまえ、俺には連絡くれないのに」
「そりゃあ凪はめんどくさがって返信しねえの知ってるからだろうな」
「あ、たしかに。で?あっちのサッカー部のこと?」
「いや、たぶん蜂楽の誕生日について。プレゼント贈れないかどうか」
「そりゃ残念だね。絶対無理じゃん」
「まあ、結局必要ねえだろうけどな。蜂楽、1日外出券手にする気満々みてえだし」
「最近の活躍はそれかー」

 〜〜〜

「なあ、蜂楽。なまえちゃんに会ったらよろって伝えといて。俺のアゲな活躍を楽しみにしてくれって」
「は?なんで。やだよ」
「あーじゃあ俺もう蜂楽に協力しませーん」
「別に乙夜に協力してもらわなくたって、自分でゴール決めるからいいよ」
「じゃあ、なまえちゃんの最新の写真撮ってきて」
「写真は撮るけど見せんし」
「代わりに俺の新しい忍法見せんから。ニンニン」
「え、見た……ダメ!」


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