山口君と亜希
まさかの片付けを放棄して水谷達を送りに行ってしまったハルを見送り、俺は3バカトリオと山口君を捕まえ、片付けをした。俺も水谷送りたかった。ハルずるい。だけどこここのままほったらかしには出来ない。そんな感情と格闘しながら片付けを終えて、俺もハルと同じように、4人の見送りに出た。しょうがない、俺はこっちで我慢。……、なんて思ってない大丈夫。今は3バカと別れて、山口君と2人きりで歩いている。すごく静かだ。
「……山口君、今日はアリガト」
「……気持ちワル」
「んだよ。せっかく人がお礼言ってやったのに」
まあ、いいか、と俺は笑う。掌を返したように態度を変えた俺は、山口君からしてみればとても気持ちの悪いものなんだろう。俺も山口君の立場だったら絶対気持ちが悪い。正直そんなやつ関わり合いたくもない。そんなことを考えていると山口君が口を開いた。一生懸命話題を考えたのだろう。まさかの恋バナ的なものだとは思わなかったけども。
「何でお前ら女の好みが一緒なんだよ」
「知らね。俺も水谷が好きだって気が付いたの、最近だし。双子だから、って言えばそれで片付いちまうのかもしれねーけど」
「へぇ」
山口君から聞いてきたくせに、あまり反応はなく、再び静寂が訪れた。まあ、嫌ではないけど。俺はとりあえず続きを、と口を開く。
「まあ、でも俺が水谷のコト見ているのには気が付いていないみたいだぜ、あいつ」
「はぁ?」
「俺は都合がいいんだけど。俺があいつのことシカトしてるのは気が付いてたのに……、何で気が付かないのか、不思議だわ」
「どんだけ鈍いんだよ」
フン、と山口君はハルを馬鹿にしたように鼻で笑った。わぁ、山口君らしい、少しイラッときたけど山口君の意見には同感なので何も言わない。
山口君がハルを鼻で笑い飛ばした直後、ピリリリ、と、何処からともなく電子音が鳴り響いた。初期設定の、味気も色気もないメールの着信音。俺のである。ポケットから携帯を取り出してみると、差出人にはみっちゃんの文字。俺はメールを開いてみた。メールの内容にさっと目を通してみると、物凄く衝撃的な内容だった。思わず固まる。ほんと、なんでこのタイミングなんだよ……。歩みを止めた俺を不思議に思ったのか、山口君は、オイ、と声を掛けて立ち止まった。
「えっと、山口君、泊めてくれたりしない?」
「何だよいきなり。しかも何で俺が」
お願いします、人助けだと思って、まじでお願い。俺はそう言って、山口君に携帯の画面を見せる。そこにはみっちゃんから届いた先程のメールが表示されたままだ。それを見た山口君も衝撃を受けたのであろう。見た瞬間にビシリと固まった。ハルにも一斉送信された、優山が来る、という内容のメール。山口君も優山が苦手なはずだ、理解してくれるだろう。いや出来なくてもしてくれ、しろ。
山口君は小さく息を吐き、しょーがねぇな、と言うと再び歩き出した。これで今日お泊まりコースなのは決定だな。
18.山口君と亜希
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