鶏小屋
夏目の買い出しも終わり、佐々原と仲良く戻ってきた。みんな無事集まり、作業開始。ノコギリで木材を切っていた。心無しかみんなげっそりしている。俺もげっそり。つかれた、めんどくさい。みんながぐちぐちと文句を言い出す。頼むから手を動かしてくれ。
「木ー切るのってめんどくせえな」
「だから店でカットしてもらおうって言ったのに」
「だいたい、こんな立派な小屋、オレらだけでってのがムボーだよねー」
「それでもいちばんわかりやすいサイト、選んだんですけどね……」
「お前ら、ぐちぐち言ってないで木を切れ、木を。頼むから」
「亜希は切るの上手だよなぁ……」
みんなが俺を見ているが気にしない。切るの上手とかじゃなくて切らなきゃいけねーからとりあえず切るんだよ畜生め。ノコギリで必死に木材を切り続けていると、みっちゃんがひょっこり現れた。
「お、なんだなんだ。もうへばってんの?」
「こいつらダメ、まじ使い物になんねぇ」
「電動ノコギリとかあるけど」
「はやく言えよ!」
みっちゃんがそう言うと、ハルが怒鳴った。そりゃものすごい勢いで。あんなら早く言ってほしかったわ、ぎゅいーんってすぐ終わんじゃねーか。俺、頑張ったのに。
ハルが電動ノコギリをとってくると言って倉庫の方へと動き出す。そして、数歩歩いたところでくるりと振り返ると、亜希も、と言って俺の腕を引っ張った。遠慮したい。すげー遠慮したい。俺のその思いを感じ取ってか、ハルは拒否する暇も与えてくれず強引に引っ張る。倉庫についたころにはもう諦めた、ちゃんと。そっと小さく溜め息を吐き、電動ノコギリを探す。ちゃちゃっと見つけ出して戻ればこの気まずい空間もすぐに脱出できる。そう思いながら探し回っている最中、ハルがぼそりと呟いた。
「亜希は、なんで俺を無視するの」
「は、」
呆気に取られた。ハルは避けられているのを気付いていたのだ。気付いていたくせに、今まで何も言ってこなかったのか。……いや、俺が何も言わせなかったんだろうけど。ハルはもう一度、なんで、と小さな声で問いかけてきた。
「いや、別に……、無視してねぇし」
「そんなことない!」
「そんなことない」
何も言えなくて、とりあえず鸚鵡返しすると、ハルは膨れた。むー、と唸っていたと思ったら、閃いたのか、もしかして! といきなり俺の肩を鷲掴んできた。地味に痛いから止めてほしい。つーか気付かれたのかよ、勘いいなハル。そう思っていた時だった。
「シズクに取られると思ったのか!」
「……、あー、もうそれでいい」
かなり的外れな答えが返ってきて、物凄く呆れた感満載な声が出てしまった。やっぱりハルはハルだった。大丈夫なのかこいつ。ハルはえー? と言いながら首を傾げる。ハルはもうだめかもしれない。
「おら、ノコギリ。見付けたんだからさっさと出んぞ。」
そんなこんなの間に電動ノコギリを見付け、ハルに声をかける。ハルはなんだか少し嬉しそうだ。しょうがねーし、とりあえず避けんの止めることにする。こいつバカだし。見付けたノコギリを担いで、行きとは逆に、俺がハルの手を引いて外に出る。
倉庫の外に出ると、少し賑やかさが増しているような気がした。つーか、明らか人数増えてんだろ。
「あーっ、てめえら!!」
ハルがそう、いつの間にか増えていた奴等に向かって叫んだ。まあ、お察しの通りバカ共なんだけども。山口君以外はみんな悲鳴を上げて逃げた。特にチビなんかはフェンスを乗り越えようとしている。投げられたからなんだろうけどもビビりすぎだろどう考えても。山口君はまあ落ち着きなさい、と言って、にやにやしながら水谷の肩に腕を回した。
「シズクにさわんな」
ハルは山口君の頬をグーで殴った。俺は思わず足が出てしまった。なんか、すげーイラッときた。ハルよりもイラッときた。だから足が出たのはしょうがない。不可抗力。
「いってーなてめえら!! 話聞けよ!!」
「「なんかイラッとした」」
「シンクロしてんじゃねぇ! 双子だからって許される訳じゃねぇぞ!!」
「「別に許して欲しくねーし」」
山口君が怒る。すげー、なんかくだらないやり取りな気がしてきた。やめねーけども。山口君がハルの胸ぐらを掴む。その手を押さえつけて、とりあえず3人で睨みあっていると、水谷がこの人たちは仲直りしたいそうだから鶏小屋作りを手伝ってくれるそうです、と言った。そりゃもう清々しい顔では言い切っていた。素晴らしい程。奴等から反感の声が飛んでくるが、佐々原が当然だなー、と言っていた。しかも俺のすぐ傍では、ハルが仲直りという言葉の響きに目を輝かせてしまっている。
「なんだおまえら、それならそうと早く言えよっ。いーぜ、いーぜ、やってけやってけ」
ハルが少し照れたように言う。ハルまじで単純すぎる。そのすぐ近くでは、NOと言えなくなった奴等が立ち尽くしていた。ははは、ざまあみろ。今までのしっぺ返しが来たんだな、諦めろ。なんてそう思っていたけども。
……なんか少し可哀想かもしれない。
「アイス買ってきましたー!!」
そう言ってアイスの買い出しに出ていた夏目が帰ってきた。取り敢えず夏目から袋を受け取り、みんなにアイスを配る。奴等の分は当然だけどない。夏目は知らぬ間に増えた男共に可哀想な程怯えていた。奴等の夏目への食い付き方まじで半端ない。そしてハルはあれからずっと嬉しそうだ。四六時中これだからな。
切れていない板を持ってきたところで、水谷が人を使うことでうんたらかんたらと言ってるのに少しビビったりしたり。勝手な想像だけど水谷は将来社長になりそうだ。
まあ、そんなこんなで、鶏小屋は完成いたしました。
夏目はかわいくない! と心底嫌そうだが、俺は内心かっこいいと思っていたり。迷彩いい。いかしてる。そう思っていることは夏目には内緒だ。絶対センス悪いって言われる。
佐々原が名古屋を連れてきて小屋の前に降ろすとと、あらかじめ小屋の前に撒いておいた餌に食い付いた。はらはらしながら見守る。皆同じような様子で少し安心した。暫くしてから、名古屋は小屋に興味を示して、それから回りを伺うように見渡せば、ぽふりと入っていってくれた。
『入ったー!』
ほぼ同時に全員で声を上げた。みんな嬉しくてしょうがないという様子だ。一生懸命作った小屋だしな。気にいてもらえたならなによりだ。夏目なんかは跳び跳ねて喜んでいた。
17.鶏小屋
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