先日。
大好きなおじいちゃんが亡くなりました。
両親に捨てられて土砂降りの中歩いていた私を保護してくれた優しい人だった。
高校生になったときに、マフィアのボスだということを知ってもちろん驚いたけど、だからと言っておじいちゃんの側を離れることはしなかった。
だって私にとって大切な人ということには変わりないから。



泣く暇もなく、慌ただしく葬儀や告別式は行われてたくさんの方がおじいちゃんとの別れを惜しんだ。
会葬者の中には顔に生傷があったり、眼帯で片目を隠していたり、義足の人もいておじいちゃんって本当にマフィアだったんだなってのんきに思ったり。



「ただいまー。」


家に帰ってもいつもの「おかえり。」は聴こえない。
部屋に響くのは静寂のみ。
いつも私の学校が終わる頃には必ず家にいてくれたおじいちゃん。いつもソファに座って「今日はどうだった?」って聞かれてクラスの子に好きな人が出来たとか体育でバスケしたとか。
そんな他愛のない話をしてる時間が幸せだった。


一緒に撮った写真や初めて買ってくれたくまのぬいぐるみ、おじいちゃんが大好きだった演歌歌手のCD。
おじいちゃんがそこに存在していた証が部屋いっぱいに溢れてる。
初めて実感した。おじいちゃんにはもうどんなに足掻いたって会えないこと。
























―― ピンポーン



「……はい。」


悲しみに浸る時間なんてない。
そう神様が言ってるようなタイミングで鳴った家のインターホン。
重い足取りで玄関の扉を開ければ、緑のYシャツがやたらと目立つ男性が立っていた。



「菜緒さん、ですね?」


「は、はい…。」


「初めまして。僕、松野チョロ松って言います。
この度はお悔やみ申し上げます。」









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