「よかったら、どうぞ。」


「ありがとうございます。」



部屋の中に案内してソファに座ってもらいお茶を出す。
おじいちゃんが生きていた頃もこうしてファミリーの人が家に来るのはよくあることだった。


「あの、松野さんはその……、」


「暗殺部隊で主に参謀として作戦の指揮をとったりしています。
あと僕のことはチョロ松と呼んでください。」


まつ……チョロ松さんは一切表情を変えずに会話を繰り広げる。



「今日はどのようなご用件で…。」


「ボスからあなたに言伝を預かっています。いわば遺言のようなものでしょうか。
こちらになります。」


ジャケットの内ポケットから一通の封筒を出し私に差し出される。
おじいちゃん、遺言なんて残してたんだ……。自分が死ぬことわかってたのかな。



「頂戴します…。」


























「…………え?」


手紙を受け取ったあと流れた沈黙に耐えきれず思わずまぬけな声を出してしまった。


「……もしかして今読んだ方が…いい、ですか……?」


「あ、その方が話がスムーズなので読んでいただけると助かります。」


「ご、ごめんなさい。ちょっと、待ってください……っ!」



慌てて封筒から一枚の紙を取り出せば、びっしりと書かれた見慣れた字があった。






――――――菜緒へ。
 これを受け取ったということは、もうこの
 世にわしはいないということだな。お前と
 一緒に過ごした時間はとても幸せだった。
 こんな老いぼれと一緒にいてくれて本当に
 ありがとう。お前のおかげでわしは幸せ者
 だった。
 この先、辛いことがあっても溜め込むな。
 お前にはたくさんの友達もおるし、なによ
 りわしの部下はお前の家族だ。強いぞ、わ
 しの部下たちは。
 暴力で物を言わすのはよくないことだが、
 そのまま黙って言いなりになるのもよくな
 い。反撃しろ。時には戦え。それはお前に
 足りないものだ。何かあれば頼れ。
 おっと、少し色々書きすぎたな。お前の今
 後のことは全てチョロ松に任せておる。彼
 から話を聞きなさい。
 菜緒。
 お前は強い子だ。だが、我慢とは違う。
 空からお前を見ているぞ。  















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