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親が可笑しくなった切っ掛けは何だっただろうか。
家に帰ってこなかったあの日から、私の中では幾つもの疑問が湧いて出てくるようになった。親のこと。金のこと。自分のこと。将来のこと。それら一つ一つに結論を出しては撤回し結論を出しては撤回し結論を出しては撤回し____


私の親は借金のし過ぎで首が回らなくなって蒸発したのだ。
失踪届は出したが、今に至るまで何の消息も無い。受け取った警官の顔は哀れんでいるようにも、鬱陶しそうにも見えた。
親がいない子供というのは本来親戚等に預けられるべきなのだが、生憎、私の親は親戚からも金を借りていたというので、誰も引き取らがらなかったのだ。薄情だ、と言うつもりは無い。仕方が無いのだ。自分達が貸した金はもう二度と返ってこない上に、当の親は早々に子供を置いて失踪したのだから。
血の繋がりのある他者では駄目だったので、大人達は血の繋がりのない他者の中に引き取り先を探した。

すると妙な事に、私の親に金を貸していたという人物が私を引き取ると申し出たのだ。
それを聞いて、ほう、親戚だけから借りていたという訳ではなかったのか、と私はまるで他人事のように鼻で笑った。
もう何もかもどうでも良くなっていたのかもしれない。
申し出たのは熟年の男であった。仲介の人間によれば、その男から親が借りていった金を全額返済出来たら、私を独立させてくれるのだという。
それまでは男の経営する店で働かねばならない、ということだ。

今更、何を望むでもない。
今の私は親に見捨てられた、金を稼ぐ手段もろくに持たない、ただの無力な子供でしかない。
幸いなことに、今通っている高校を卒業するまで、あと2年といったところだ。順調に行けばの話だが。
それに、私には果たさねばならない夢がある。
かつて私には生きることを教えてくれた、恩師といっても良い存在から、言われたのだ。


それまでは、それまでは。

私は生き続けなければならない。






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