It led to fortune-telling U
クローディアがトラペッタを出て暫くたつ。彼女の気配を感じ取った魔物は、皆彼女を恐れて近寄らなかった。たまに無謀な勇気をもった魔物が出てくるが、彼女の錫杖になぎ払われてダウンして終わった。
「雑魚の癖に……」
これで何匹めかわからないが、今しがた出てきたしましまキャットを倒して彼女は呟いた。倒されるとわかっているのか知らないが、わざわざ前に出てくるのは愚かだと思っているが故の発言だ。
また道なりに歩き、大きな橋へとやってきた。ここには橋の癖に国境だか何だか知らないが門があってその門番が居り、通るのに厄介だったはずだが。今見ると火事にあったのだか燃やされたのだか焦げ臭く、所々から少ないが煙が上がっており、門だったのだろうものは滅茶苦茶に破壊されていた。
そういえばと、クローディアはトラペッタの宿屋の隣にあった建物が火事にあったのだということを思い出す。そこにいたマスター・ライラスという魔法使いが亡くなったと聞いた。家は跡形もなく焼き尽くされて、未だに二週間が過ぎても煙が尽きないとのこと。同一犯では……と一瞬思ったが、まさかそんなことはないだろうと思いなおし、橋を渡った。
そこからまた暫く歩く。遠くに大きな風車がついた塔が見える。出てくる魔物も先程とは違うが、やはり弱いことに変わりはなかった。たまに毒の攻撃を食らったが、すぐにキアリーを唱え無傷の状態を維持することに努めた。
正午になる前にリーザスの村へ着いた。小さな村の入り口には、少し東へ行ったところにある塔と同じく風車が付いており、ゆっくりと回っていた。村に入ると、近くに立っていた女性がこちらに気づいた。
「まあ、旅の方ですか?」
「ええ、ここはリーザス村であってますか?」
敵意が無いことを示すために、フードを下ろして答える。女性はやってきた旅人が女だということに驚いた様子だった。
「……はい、ここがリーザス村です。のどかで何もないところですが、ゆっくりしていってください。……あの、お一人で来られたのですか?」
「ええ。連れはいないわ」
「そうなんですか!ついこの前来た旅の方々は、男二人でしたので……。今のご時世、女の一人旅なんて……。私も南にある港町まで一人でいくのは無理ですわ……」
「これでも長い間一人でやってきたので……。フフ、ご心配は無用です」
今までも宿屋の主人には驚かれてきたので、今更何を言われても驚かない。クスクスと笑って流すことにも慣れていた。
「そうでしたか……。あ、私ったら初対面なのに失礼を……」
「いえ、私も慣れてるので……。それでは失礼」
今の女性との会話で、例の夢に出てきた旅の者はここに居るだろうことがわかった。ならば、暫く村に厄介になり、女の一人旅はどうのと言って同行させてもらおうかと考えて、宿屋のマークがある方へと歩く。
途中、この村で最近誰かが亡くなったという話を耳にする。見ず知らずの旅人が内情に突っ込むわけにもいかないので、素通りした。小さな川の橋を渡り、宿屋にたどり着くと、早速主人に泊まりたいことを告げた。
「あらまぁ、こんなに若い娘さんが。すまないけど、今日は男二人も一緒の部屋になっちまうけど良いかい?なにぶんこんな小さな村だから、泊まる人がこんなに来るのは珍しいんだよ」
主人の言うことは、クローディアにとっては良い機会だった。例の旅人たちと接近するための。
「構いません、一人旅で慣れてますから」
「申し訳ないねぇ、夜までにはくるだろうから、湯を浴びるなら今行っといで。帰ってきたら留めておくからさ」
クローディアは言われた通り、先に湯を浴びてきた。その日、彼らが宿に戻ってきたのは夕飯をいただこうとした時だった。
主人が、クローディアが同室になった訳を彼らに話していた。黄色い服に赤いバンダナを巻いたクローディアより年下だろう若い男と、山賊風情の強面の三十路かそこらの男。どちらも夢で見たものと同じ容姿だった。
異論は無いようで、どちらも了承してくれた。
「すみません、急にお邪魔してしまい……」
「いえいえ、おきになさらず」
バンダナの男が答えた。強面の方はちらとこちらをみるだけだった。彼らが彼女の脇を通りすぎたとき、微かに血のような臭いがした。クローディアは不思議に思いながら夕飯を食べ終えた。