It led to fortune-telling V

次の日の朝になり、軽い朝食をいただく。例の二人はまだ休んでいるようだった。朝食を食べ終えた頃、バンダナを着けていた方が起きてきた。

「おはようございます」

クローディアが先に挨拶をする。寝ぼけ顔の彼は、一瞬誰だかわからなかったのか立ち止まってこちらをジーっと見てきた。

「………………あ、昨日の……。おはようございます」

宿屋の主人が、彼が起きたことに気付き、朝食を運んできた。食べ終えていたクローディアは、ちょうど良いとばかりに彼に尋ねた。

「あなた方はどちらから来たの?」

「僕らはトラペッタの方から来たんだ。これからは南に行こうと考えてる」

「まあ……、私もトラペッタから来たの。南に行くんでしたら、方向は同じだわ。もし差し支えなければ、途中まで御一緒させてもらえないかしら?女の一人旅はいろいろとキツくて……」

困ったように笑いながら、彼女の願いを告げる。

「え、……僕は構わないけど、他がなぁ」

目の前の彼は驚きつつも了承してくれたが、仲間がどうするかはわからない。とりあえず一つの山場は越えたとそう感じた。

「申し遅れたわ、私はクローディア。とあるものを探して旅をしてるの。それが何なのかは言えないけれど、とても大事なものなの」

「僕はエイト。僕らは探し物というよりは、ある人物を探してるんだ。手がかりは昨日見つけたから、後は追いかけるだけだ」

お互い名乗り、それぞれの旅の目的を告げた。そして、朝食を食べようとしたところ、連れの強面の男が起き上がってきた。エイトが気を利かせて彼女のことを紹介する。山賊風情の強面の男は、名をヤンガスといった。色々な理由から、エイトに付いていく子分になったらしい。どうみても色々な面で違う気がするが、とクローディアは思ったが言わないでおいた。

ヤンガスにも朝食が運ばれてきた。見た目の通り豪快な食べっぷりである。彼は、エイトが言うことには従うそうなので、クローディアが仲間になることに反対していなかった。ただ、女が足手まといにならないかと心配をしてはいたが。そんな話をしていた折、エイトがとある疑問を尋ねてきた。

「それにしても、クローディア。君は今までどうやって旅をしてきたんだい?武器がなきゃ魔物に対抗できないじゃないか」

エイトは、彼女が荷造りをするところを見て思ったのだろう。武器になりそうなものがないのだ。

「……ああ、今はしまってあるの。あんなものを持ち運ぶのは大変だから……。心配しないで、あなた方の足を引っ張るような真似はしないから」

そうにこやかに笑って彼女は答えた。エイトはポカンとしていたが、ヤンガスはどうでげすかねと、なまった言葉で呟いた。

その後、彼ら二人はリーザス村に住まう名家のアルバート家に用があるとのことで、関わりのないクローディアは、村の教会で旅の無事を祈ることにした。入り口で待ち合わするようにしたので心配はない。

「早く見つかりますよう……」

膝をつき、手を合わせて祭壇に向かって祈りを捧げる。静かな教会には、小鳥がさえずるのが聞こえてきた。

暫くそのままでいると、教会の戸が開く音がした。クローディアは気にせず祈りを続けていた。カツカツと、ヒールがなる音がする。すると、その人物は同じく膝をつき、祈りを捧げた。

「兄さん、必ず敵討ちを果たします……」

声と足音から女だということがわかった。そして、彼女はすぐに立ち上がり教会を去っていった。

クローディアも、それに続くように立ち上がると深くフードを被り、入り口へと向かう。彼らはまだ来ていないと思っていたが、後ろから足音がした。予想通り、エイトとヤンガスであった。

「悪いね、待たせちゃったかな?」

「いえ、今来たところよ」

「そう。えーと、それじゃあもう出発して良いかな?」

エイトが買い忘れた道具がないかチェックをする。特になにもないようなので、そのまま村を出た。

「クローディア、ちょっと良いかな」

神妙な顔をしたエイトに話しかけられる。話があると言われ、連れていかれた先には、馬車と美しい白い馬がいた。だけではなく、緑色の幼児ぐらいの背丈をした奇妙な者もいた。あまりの奇怪な容姿に、クローディアは目を見開いて硬直した。

ようやく現実に戻ってきた彼女にエイトは、どうして旅をしているか、何でこんな奇妙な生物がいるのかという訳を話してくれた。

要約すると、エイトはドルマゲスという道化師に呪われてしまったトロデーン国の王と姫、そして国民たちを、元の姿に戻すために旅に出たそうだ。そして、ここにいる緑色をした奇妙な生物がそのトロデーンの国王トロデ、馬車を引く白い気品のある馬がミーティア姫だそうだ。この二人は姿を変えられてしまっただけで済んだそうだが、国民は植物に変えられ身動きも意思の疎通もできず、城も茨に包まれてしまったという。

「そんなわけで、ドルマゲスという道化師を探しているんだ。こんな事情があるんだけど、クローディア。君はこれでも構わないかい?僕たちと一緒では、何かと不便なことが多いかもしれないよ」

彼は申し訳なさそうな顔で彼女を見やる。その隣でトロデも見守る中、クローディアは目を閉じて少し思案した。

「……ええ、構わないわ。私も本当は人探しをしてるの。ドルマゲスじゃないけれど……。事情はわかったわ。どこかで別れることになるでしょうけど、それまで御一緒させてください」

そう言って、クローディアは頭を下げた。

「顔をあげなさい、娘さん。ワシらとて、人手が多い方がありがたい。ミーティアも、女子が増えて嬉しかろう?のう、ミーティア」

トロデが馬の姿のミーティアにすり寄る。馬の姿ではあるが、彼女は喜んでいるのだろうとわかる。馬のいななきの声がどこか明るい。

クローディアは頭をあげると、宜しくお願いしますと言った。エイトたち一行は、微笑みながら宜しくと返した。

「それじゃあ、ポルトリンクに向けて出発!」

こうして、クローディアは彼ら二人の旅人のもとに加わることになった。"彼女"のこれからの動きは、まだわからない。だが、彼らについていくことで、何かしらの情報は得られるだろうと予測していた。

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