イニシャルSの悩み事
ホグワーツに勤めて何年目か忘れた頃。新入生歓迎会で、僕は信じられないものを見た。
幼い頃から見間違えたことのない赤い髪の少女。
片時も彼女のことを忘れたことはなかった。
だが、呼ばれた名前は皮肉にも全く違うものだった。
「アルフォード、ラヴィニア!」
ラヴィニア・アルフォードなど、聞いたことない名前だった。所詮は他人のそら似か。だが、後ろ姿は―見間違えたことのない僕がいうのだから―とてもそっくりだった。いや、同じといっても過言ではない。
教員たちの席から、覗き込むように少女の顔を見た。少女は、唯一僕が焦がれたあの人によく似ていた、瓜二つとまでは言えないが。ラヴィニアは、瞳が髪と同じ赤い色だった。彼女はエメラルドグリーンの瞳。だが、瞳の色を抜きにしても、彼女の雰囲気によく似ていた。
「グリフィンドール!」
組分け帽子が寮名を叫んだ。ああ、僕が愛したあの人と同じ寮だなんて。神がいたずらをしたのか?だなんて、らしくないことを考えてしまった。
だが、あそこまで……リリーに似た少女がいると思うと。一つ気になることを思い出す。
8年前の事件。
ポッター家が例のあの人に襲われたとき。ポッター夫妻は殺された。あそこには娘と息子がいた。娘はマーガレット、息子はハリーという名だった。ハリーは例のあの人に攻撃されたが生き残ったということだ。娘はどうなったのか。
その娘は行方不明だそうだ。例のあの人からすれば、幼い四歳の娘を殺すなど、赤子の手を捻るごとく簡単なこと。なのに、一歳の弟は額に傷を作るだけで終わった。娘はどこに行ったのか。それだけが謎であった。捜索しても見つからず、とうとう死亡したことになってしまった。
もし、同一人物だったとしたら。なんて、あるわけのないことを考えてしまった。魔法省が一年も探して見つからなかったのだ。生きてるわけがない。
なんて、こんなことを考えてる場合ではない。授業中に間違えてリリーなどと、呼ばないようにしなければ……。それに、じっと見つめてたら変な先生扱いされてしまう。リリーに似た子に、そんな風に思われるのは、学生時代を思い出して辛くなるだけだ。
暫くは注意せねば……。これならあの男にそっくりな方が…、いや、それも虫酸が走るほど気持ち悪くなりそうだ。
これからのことを思うと、先が思いやられるイニシャルSであった。
イニシャルSの悩み事