満月の晩餐

 かたりと椅子を鳴らして、執務机に腰掛ける。今日の助手は誰だったっけ。有魂書がいくつも詰まった部屋に目を向けながら、ほうと溜息を吐いた。――懐かしい。けれども、なんとも厭な夢を見てしまった。あの夢で良かったことは久作くんが全ての起点になってくれたことくらいだ。インクを手に取った。報告書を書くのは嫌いじゃない。

「鶫、入るよ」
「どうぞ白秋さん」

 ……白秋さんが助手だったか。夢見が悪かった、で、終わらせられる話なら良かったのだけれども、それでは終わらないから、私は困っているのだ。何せ白秋さんは私の育て親と言ってそう間違いないような人である。私のことなら久作くんか白秋さんに進言するというのはこの図書館の暗黙の了解で、久作くんも私に関してはそう狂気を表に出すことは無いので、二人は私のことについて良く理解しているのだ。

「ホットミルクを夢野くんに頼んでおいたよ」
「仕事が早い……」
「当たり前だろう。僕を誰だと思っているんだい?」
「私の育て親の白秋さん。……にしても夢見が悪いって良く分かったね」
「ああ、それに気付いたのは夢野くんだ。あんまりあたふたしていたものだから、ホットミルクの話をしてやったのだよ。それに、今日の助手は梶井くんだろう?」
「……」
「……、忘れていたね?」

 す、とあらぬ方向へ視線をむける。麗しい人が先の私よりもずっと品のある溜息を吐いて、う、と背を縮こませた。
prev : next