夜更けはまだ


「――え、なに、次の防衛任務京ちゃんとなの?」
「らしいな」
「京ちゃんお得意の嘘じゃないよね?わたし桐絵じゃないから騙されないよ?」
「なんなら忍田さんにでも聞けばいいんじゃないのか」
「あっ、そっか」

こういう時に限って佐鳥もとっきーも居ないんだから。わたしは頬を膨らませながらおかずを口に運ぶ。対する京ちゃんは大して気にしていないように、いつも通りの綺麗な食べ方だ。
――何があったのか、というのは、先程。約十前に遡る。

「京ちゃんいつ模擬戦出来るの?」
「さあ」
「玉狛行ってもいつも居ないじゃん、わたしが行くこと予知してるの?迅くんなの?避けてるの?」
「いや、避けてる訳じゃない。面倒臭い展開になりそうだから回避してるだけだ」
「回避と避けるって一緒なんだけど」

お弁当の箱を開けながら、京ちゃんは淡々と言う。京ちゃんが玉狛に移動してから、わたしは未だに、一度も、彼と模擬戦をしたことがなくて。もしや避けられているのか。そうなのか。今回もきっと駄目だろうけど、駄目元で玉狛に遊びに行こう。そう思いながら、箸を伸ばす。爆弾が落ちるのは、その直後だ。

「――そういえば」
「ん?」
「次の防衛任務、本部とやることになったんだが」
「、えっ、どこ、どこと」
「お前と」
「……ん?」
「七々原羽純と烏丸京介で防衛任務」
「七々原隊じゃなくて?」
「七々原隊じゃなくて」
「上は何考えてんの」

「さあ」、と言って、京ちゃんはわたしのおかずを取る。あ、と音が零れるけど、その声はもう遅い。困惑するわたし、いつも通りの京ちゃん。ここに佐鳥やとっきーも居ればまた状況が違ったのだろうが、生憎二人は嵐山隊の任務で今日はお休みである。

「京ちゃんと任務、かあ」

旬からもちーくんからも連絡はない。本当にわたしソロと京ちゃんで組むようだ。そっか、とふと出る声に、京ちゃんは溜息を吐いた。

「昔通りやれば良いだろ」
「……昔なんて、」

京ちゃんが本部にいた頃、一時期、組んで模擬戦をしていた時期がある。でもそれは、ずっと前の話だ。目を伏せるわたしを見て、京ちゃんの視線が、わたしを射抜いている、ような。……自意識過剰か。

//

「トリガー起動」
「……トリガー、起動」

夜の光が遠くでちかちかと瞬いている。

先の大規模侵攻の際、わたしは確かに、京ちゃんに言った。任せて、って。でも、なんだかなあ。いまとなっては効力もないと言ってしまって良いだろうか。

「宜しくね、京ちゃん」
「ああ」

とはいえ、これは仕事だ。トリオンで作られた刃に、アステロイドの射出出来るカードリッジ。わたしの、わたしだけの、羽月を振るう。オペレーションしてくれるのは、沢村さんだ。

『二時の方向に一体、七々原隊員の後ろに三体です。……カウント、3、2、今です』
「アステロイド」

けれども、端的に言えば、全く問題はなかった。京ちゃん、つまり玉狛第一の戦法は、暴れる桐絵をサポートするのが主。対してわたし、もとい七々原隊の場合、主立って戦闘するのはわたしで。無理に昔通りにしようとする必要もなかった。

「……楽勝だったね」
「まだ油断するなよ、羽純」
「はいはい」

あまりの呆気なさにぽつりと落ちた言葉は京ちゃんに拾われて、咎められる。トリオンだから血液なんて付かないし、実刀じゃないから錆びたりしないはずだけど、わたしは羽月を空振りした。そしてトリオン兵がうじゃうじゃと居る場所へ飛ぶ。

「――ねえ、もっと見せてよ」

京ちゃんの力。

「、言われなくても」

夜は、未だ更ける予感を見せない。

//

「おい」
「匡貴くんと、慶お兄さん……?珍しい組み合わせだね」
「……上からの指示でな」
「ま、交代の時間だ。高校生は帰れー」
「はい。お疲れ様でした」
「あ、待ってよ京ちゃん」
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