瞬けなかったわたし
その日、ステージに流星が落ちた。きらきらと点滅してRe:valeを照らしていた星が。どうして?だって、確認はきちんとしたし、何の問題も無くて、……なかったはずだ。暗転したステージ、倒れている兄さんと、兄さんの名前を呼ぶユキくん。「あ、」と声が出る。誰にも照らされない舞台裏で、がしゃん、という照明の落ちる音が、何度も聞こえる。流れていた「未完成な僕ら」のイントロが音にかき消されて聞こえなくなって、助けて、と呟いていた。いつも助けてくれたのはお兄ちゃんなのに、今倒れているのはお兄ちゃんだった。
「……お兄ちゃんはお前限定のヒーローだよ」
「嘘つき、お兄ちゃん、助けてくれないじゃない」
目を伏せれば涙が溢れた。瞼を開ける勇気が出ないの。辛いのはユキくんで、怖いのもユキくんで、混乱しているのもユキくんなのに、どうして私が先に泣いているんだろう。馬鹿みたいで煩わしくって、でも涙は止まってくれない。お兄ちゃんを呼ぶユキくんの悲痛な声と照明の光が私の視界を離してくれない。目を瞑っているのにどうして私に光を見せるの?
「助けて」
音楽が、聞こえないの。
結局私は、兄さんが目覚める前に、ユキくんと会う前に、大切なその場所から姿を消した。もう高校生になったよ、兄さん、ユキくん。音を紡げない約立たずのまま高校生になって、私は両親の居る外国に飛んだ。風の噂で兄さんもユキくんと会わないままだと聞いて、血は争えないな、と思いながらシンセサイザーを見る。私が触っている音は確かにドなのに、がしゃん、と音がして、音がかき消されてしまっていて、聞こえない。
「……ばかみたい」
二人の前から姿を消したのは弱虫な自分の意思だ。
「約束守れなくてごめんね、モモ」
「もし二人がデビューしたら、モモとコンビでも組もうかな」
「分かったよ……」
絶えず流れていたはずのRe:valeの音楽≠ヘ、もう、聞こえることはない。
「さよなら、大好きだったRe:vale」