こんな事をサエ本人に言ってしまうのは恥ずかし過ぎて絶対に無理だけど、ひとつだけ私には秘密がある。それはサエの背中、実の所アイツの背中が大好きなのだ。
 割とガタイが良く、頼りになる彼らしい広くて温かい、そんな大きな背中が好きだ。背もたれにするのも抱き着くのも。

 もちろん、絶対サエには言わないつもりだ。
 迂闊にそんなことを言ってしまえば、当分その事でからかわれて「俺の事好きなんでしょ?」なんてかなり拡大解釈されてしまう。これは経験談だ。
 だから、今日も気まぐれを装って大好きな背中に抱き着いてみるのだ。

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 都はバレていないと思っているだろうから敢えて追求はしていないけど、どうやら彼女は俺の背中が好きらしい。
 こうやって気まぐれを装って「何となく」とか言いながら抱き着いてくるのもだけど、何より酔った時にポロリとそんなことを零していたからだ。
 俺としては、都の顔が見えるし俺自身も都を抱き締めることが出来る前からハグする方が好きなのだけど。
 天邪鬼な彼女がこうして自分からスキンシップを図るのは稀だから、甘んじてこの幸せを受け入れるしかないのだ。


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