「サエ、お風呂…入る?」

 その一言は、今晩はお風呂に入るか入らないかという問いだと思ったんだけど。もちろん、お風呂なんて毎日入るものだろう。

「入るよ?」
「……ん、じゃあ先入ってて」
「えっ?都が先入りなよ。俺は後で大丈夫だから」
「えっ、一緒に入るんじゃないの?」

 キョトンとした顔でこちらを見つめて、なにかに気付いたのかはっと我に返ったように「いや、ちがっ、」なんてバタバタと手を振った都。
 つまり、先ほどの問いは一緒に入るか否かを訊いていた訳だ。相変わらず言葉が少しだけ足りないところがあるけれど、何度か言っても直らないから最近は少し諦めつつもある。

「ち、違くて。いや、そのなんでもない。待って、今何言っても墓穴掘りそう…!」
「いいよ、一緒に入ろう?」
「は……?」
「都が言ったんだろう?」

 脱衣所に向かって歩き出せば「えっ、えっ」なんて困惑した都の声が聞こえる。俺が全て脱ぎ終わる頃になってもリビングからは一歩も動いていない様子の都。
 言い出しっぺのくせに、俺を期待させたんだからきちんと最後まで責任は取ってもらわなきゃいけない。

「……早くしないと、俺が脱がして連れて行くよ」
「す、すぐいきます!」

 パタパタと走る音に小さく微笑む。というか、恥ずかしいなら普通は先に入るものじゃないのだろうか。
 先にやること終わらせて、湯船にでも浸かって洗い場空けておいてあげようか。そう考えながら髪の毛を洗い終わり顔を上げた頃、控えめにコンコンと扉を叩く音が聞こえる。

「……入っていい?」
「どうぞ」
「タオル巻いててもいい?」
「俺は何もつけてないのに?」
「ひょ…」

 あとは都さえ終わればお風呂はすぐに出れる。湯船に浸かりながら、ぼんやりと都の動きが見える扉を眺める。
 諦めたのかタオルを取り払って小さく深呼吸しているようで。未だに慣れていないのか、裸なんてもう何度も見せあった筈なのに。
 「……はいります」なんてぎこちない声の後におろおろとしながら入ってきた都。もちろん何も纏っていない状態で。

「ゔ、見ないで!」
「どうして?」
「……恥ずかしいから」

 一応と持ってきたのであろうタオルを俺に投げてくるけど、そんなことは無意味でしかない。笑いながら頭に被さったタオルを取り払えば「うぐぐ」なんて唸りつつ座り込んで、シャワーを浴び始めた都にまた思わず笑いが込み上げる。

「も〜さぁ、ほんと見ないで。あーあ…なんで一緒に入ろうって誘っちゃったのかなぁ……」
「俺にも分からないなぁ」
「ね、ほんとバカ……」

 長い髪をわしわしと洗い、泡だらけになっていく都を眺めていれば視線に気付いたのかじとりと睨みつけられる。
 何を今更恥ずかしがることがあるのだろうか。真っ直ぐに目を見てにこりと微笑んでやれば、小さく溜息をつかれてしまった。

「恥ずかしいんだけど」
「今更だろ?もう何回も見てるじゃん」
「……明るいとことね、暗いとこだとさ、だいぶ変わってくると思うんだよね」
「別にお風呂一緒に入るのも初めてじゃないだろ」
「それはそれ!これはこれ!」

 そう強く言いきって頭からお湯をかぶり泡を落としている。都を見ていれば怒られる、だから仕方が無いので排水溝に向かい流れていく泡でも眺めていようかな、なんて。
 ぶつぶつと文句を言っている都はクシュクシュとしたボディタオルを手に取り、ボディソープを丁寧に泡立てている。

「あ、背中洗ってあげようか?」
「ほんと?助かる〜」

 浴槽から手を伸ばし、泡だらけのボディタオルを受け取り小さな背中を軽く擦る。髪に泡をつけないためか、いつの間にか長い髪は結い上げられいて、普段隠れている白いうなじは露わになっていて。

「サエ?もう少し強めに擦っても大丈夫だよ」
「……そう?分かった」
「ん、それくらい。あ〜そこ痒い」
「ははは、他に痒いところはない?」

 一通り背中を洗い終わったあとはボディタオルを返して自分の手についた泡を流す。
 都は「ありがとー」なんて間伸びた声でお礼を述べた後、受け取ったボディタオルで腕から首、体から太ももを、全身を丁寧に洗って泡を流している。

「全身洗ってあげるのに」
「それはなんかヤダ」
「どうして?」
「はい、いいから詰めてくださーい」

 退けと言わんばかりに手を横に振って狭い浴槽に入る都。足の間に入り込み俺を背もたれにするように座る、いつもと同じ座り方。
 普段俺自身が座るように促しているからだろうけど、いつの間にかここは都の特等席になってしまったみたいだ。

「あったかい」
「ふふ、そうだね」
「狭いけどね!」
「まあ……大人ふたりは想定されてないだろうし仕方ないよ」

 足も伸ばせないし、なんなら肩まで浸かれすらもしない。ピッタリと身体同士がくっついて、意識しなくても意識してしまう。一体、都はそれが分かってこういう風に座ったのだろうか。
 熱気のせいか少し赤くなったうなじを見つめていれば少し無言の時間。

「……何見てるの?」
「うなじ」
「なんで?」

こっちを見ずに首を傾げた都。首元に顔を埋めて擦り寄ってみるけど、少し子供っぽいかもしれない。

「どうしたの、寂しんぼ?あ、最近出張あったりで忙しかったから?」
「……ちょっと静かに」
「うぇ、あ、ちょ!待て、こら!」

 きっと明日、首筋が見える服なんて着てしまったらこれが見えてしまうかもしれない。ほんの少しだけ赤い首筋に、小さな赤色が散る。
 もう少しつけたい。つけても許されるだろうか。また首筋に唇をくっつけてぢゅうと吸ってやれば、俺のものだなんて主張する様な所有の印。
 「んっ」なんて擽ったいの身を捩りながら離れようとする都を捕まえて自分の方へ引き寄せる。

「ちょちょ、当たってる待って」
「待てない」
「いや、だってお風呂だよ?」
「お風呂じゃなかったらいいってこと?」
「もしかして私、また墓穴掘った?」

 この状況を作ったのは彼女自身だ。きっちりと責任を取ってもらわなければならない。

「都、こっち向いて」
「やだ」
「いいから、ね?……おねがい」

 ほんの少し、おねだりするみたいな声を出せば彼女が断れないことを知っていて敢えて使う自分が少しあざとすぎるような気がして、心の中で小さく舌を出す。
 「ええ…」なんて声を漏らして身体をこちらに向けて膝の上に座った都は都で少し心配になるんだけど。

「キスしたい」
「拒否権ないじ、んっ」

 ちょっと水っぽい、膝の上に乗せた都の顎を掬いくちびるをくっつける。うっすらと目を開ければ、ぎゅうと強く目を瞑った都が見えた。
 身体同士が引っ付いて柔らかいものが当たるんだけど、こんなのを我慢できる方がどうかしてると思う。
 長らくくっついていたくちびるを離してやれば少しだけとろりとした目でこちらを見つめる都。たかだかキス一回だけでスイッチが入ってしまうなんて、この子は少しちょろすぎるかもしれない。

「みやこ」
「ん……」

 上半身同士はぺたりとくっついてトクトクと少し早い心音がする。大好きな彼女に、ぎゅうと抱き着かれてドキドキしない男の方がきっとおかしいだろう。

「さえ、あのさ、おふろ出たい」
「うん、逆上せる前に出ようか。身体は自分で拭ける?」
「……ふけない」
「そっか、わかった。少し待ってて」

 先に上がって雑に身体を拭いていれば、浴槽の縁に座りじぃっとこちらを見つめている都と目が合う。
 濃いグレーの瞳はとろりと蕩けて、目があった瞬間ふにゃりと微笑まれる。これは少し、いや…かなりまずいかもしれない。

「何見てるの?」
「……サエ?」
「ふふ、都のえっち」
「うるさい、ばか」

 おいで、なんてタオルを広げて彼女を呼べば当たり前のように包まれて、大人しく身体を拭かせてくれる。
 こうなってしまえば多分、少し強引に事に及んでも都は強くは怒らないだろう。信頼して身体を預けてくれているのは嬉しいけど、もし突然……そんな邪な考えをしつつポンポンと優しく身体を拭いてあげる。
 いつもは嫌だ、恥ずかしいなんて言いながら拒む都だけど、さっき都が言ったように出張とかで俺が忙しかったこともあって、ここ最近二人でゆっくりすることが少なかった。
 もちろん俺は都にずっと触れたかったし、これは希望的観測になってはしまうけど、彼女も俺に触れたかったのかもしれない。
 だからキスひとつでふにゃふにゃになってしまったのだろう。

「さえ、きすしよ」
「うん?」
「…ちゅー、」

 俺より小さな彼女は背伸びをした上で、俺が少しだけ屈まなければ当然くちびるには届かない。
 意地悪ついでに、対抗するように背伸びすれば不満そうな顔で俺に凭れかかりながらぶつくさと文句を言い始める。
 そんな都が可愛くて意地悪をたまにしてしまうんだけど、そんなことがバレたら怒られてしまうだろう。

「ねぇ、都」
「……なに」

 ちゅ、なんて可愛らしいリップ音を立てくちびるをくっつけてあげれば、都は満足そうに微笑んで「んふふ」なんて笑うのだから何度だってしてあげたくなる。
 可愛いなぁ、なんて考えながら髪もきちんと乾かしてあげて、一通り終わった頃になれば都は既に微睡み始めてしまった。
 ここに来てお預けなんて、そんなこと許されるわけがない。

「都、起きて」
「ん…?起きてるよ」
「じゃあベッド行こう?」
「いく」

 手を広げて持ち上げろと言わんばかりの都を軽々持ち上げてみせる。
 テニスで鍛えていた甲斐があったかもしれない。……まあ、都を持ち上げるためだけにテニスをしていた訳では無いけど。
 ゆっくりとベッドに降ろせば俺に向かって手を伸ばす都は何を望んでいるのだろう、顔を近付ければ都は口を開く。

「サエはかっこいいねぇ」
「……なに?誘ってるの?」
「誘ってるかも」

 ほんの少しだけ、さっきまでのとろりと蕩けた目は幾分か真剣さを含んでいる気がする。
 普段、天邪鬼で自分からは中々言い出さない彼女が誘ってくれたのだ。それに応えない訳がない。ぎしりとベッドのスプリングが軋む音が部屋に響く。
 大人ふたりが一緒に寝るには少し狭いベッド、そろそろ大きいのに替えようか。…なんて話も幾度か出たけれど毎回流れてしまっている。
 俺自身、狭くて…とかくっつける口実がなくなってしまうから話をあやふやにしているのだけど、都も同じことを考えてくれていればいいのに。ぼうっと考え事をしていた脳を現実に戻す。
 考え事をしていた間、都はじっと俺を見ていたようでやっと目が合ったのが嬉しいのかにこにこと笑っている。

「確かに、じっと見つめられるのは少し恥ずかしいかもしれないな」
「恥ずかしいけど、サエならいいよ」
「いつもそれくらい素直でもいいんだけどな」
「……要相談で」

 さらに顔を近付けてくちびるを重ねる。何度か近付けて離してを繰り返してみるけど、本当はずっとくっつけていたい…とか。
 都も同じなのか次第にキスは長く深いものに変わっていく。お互いの舌が当たった時のにゅるりとした感覚、自分のものではない温かさ。
 なんとなくそれが気持ちよくて、深く、貪るように求めればポンポンと背中を叩かれて、我に返ってくちびるを離す。

「さえ、くるしい」
「ごめんね、わざとじゃなくて…」
「うん、知ってる。サエってキスするの好きだもんね」

 違う、とは言いきれないから言い訳は出来ずに曖昧に微笑んでみる。キスが好きなのではなくて、都とが好きなんだけどな。

「ハグしたい」
「うん、いいよ。いっぱいしよう」
「…もっと、きすもしたい」
「他には?」
「……言わなきゃダメ?」

 上目遣いで可愛く言われても、君の口から聞きたいんだ。答えはダメに決まっている。
 彼女を抱き締めながら自分もベッドの上に寝転がる。耳元で「聞かせて?」なんて囁けばこそばゆいのか少し身を震わせて、小さな声でおねだり。

「……えっち、したい」
「……俺も」

 そのまま都に覆いかぶさりまた何度もくちびるを重ねる。必死に応えるように舌を動かすのが可愛くて夢中で貪る。
 ふわふわした胸に手を伸ばせば「んっ」なんて小さく身じろいだ都。片手に収まるか収まらないか、それは柔らかくふにふにしていて気持ち良い。ずっと触っていたい気持ちと同時に少しだけ、ちょっとだけの違和感。

「…胸、大きくなった?」
「わかんない、んっ……でも、ちょっとブラきついかも」
「ふぅん…ふふ、そっか」

 硬く尖った先端をピンと指先で弾けばまた一段と悩ましい声を上げる。片方をぱくりと咥えて、飴を転がすみたいに舌でつついたり吸ってみたり。
 そうしていると突然頭を撫でられて何かと思いじっと都を見つめれば、相変わらずふにゃりとした顔で続ける。

「子供みたいで、可愛くてつい」
「君は子供とこういうことする訳?」
「しない、けど……ひぅ、!」

 何も身に着けておらず露わになっている割れ目を撫で上げれば、快感から逃げるように腰をくねらせた都。
 上目遣いで見られても煽られるだけだ。焦らすように太ももを撫でながら少し足を開かせて、また割れ目の辺りに触れてやればそこはじっとりと濡れていて、この先の事を期待しているのがよく分かる。
 入口はヌルヌルとしていてほんの少し、うっかり指を滑らせれば簡単に中に入り込んでしまうだろう。くちゅりと厭らしい水音と都の吐息だけが部屋に響き渡る。

「触って欲しいの?」
「んっ、ぅ…触って……ほしい…」
「いいよ。ここ?」

 ぬるりとしたところに指を滑り込ませて入口のコツコツとした所を押し上げる。
 身体の中へと侵入してきた異物を押し出すようにナカがうねるけれど、それでも都の好い所では無いのかふるふると首を横に振る。
 「じゃあここ?」なんて、違うことは分かっているのにわざと意地悪するように軽く刺激する。もどかしいのか目を潤ませながら、はくはくと口を動かす都が可愛くてもう少しいじめたいけれど。

「…っ、こじ、ろ……」
「……ん?どうしたの?」
「みやの……きもちぃとこっ、さわって…」

 突然名前で呼ばれたことに若干動揺しつつ平静を装っていたけれど、その後が問題で。どこでそんなに可愛らしいおねだりの仕方を覚えたのだろうか。
 入口からほんの先、二本の指でグチュグチュとかき混ぜるように擦ってやれば「あ゙ッ」なんてさっきまでの甘い声とは違う、いちばん気持ちいい時の声が漏れ出ている。
 目はとろんと蕩けて肩で息をする都の姿はさらに劣情を煽るものだから仕方が無い。

「ぁ、っ…やだぁ さえ、だめ、んッ…!」
「うん、気持ちいいね。ここ好き?」
「きもち、ん…そこッ好き…… ひ、あぅ……っ!」

 指の動きを早めればビクビクと身体を痙攣させながら果ててしまった都。まだほんの少し余韻が残っているのか深く息を吐きながらぶるりと体を震わせている。
 「偉いね」なんて頭を撫でながら褒めてやれば、少しだけはにかみながら呼吸を整えているのうで。
 怒張した自身にゴムを取り付けて都の入口に宛てがう。擦り付けるように何度か往復すれば期待するような目で僕のモノを見つめる。
 目にはハートが浮かんでいそうなくらいうっとりしていて、……少しだけいじめたくなってしまった。

「もうやめておく?」
「な、んで…?」
「ほら、都もうイッちゃったし疲れたかなって」
「えっ、やだやだ…なんで、そんないじわるするの…?」

 宛てがっていたモノをゆっくりと離していけば、今にも泣きだしそうな顔をするところが愛おしい 。離れようとする俺に半泣きになりながら手を伸ばす姿は、加虐心を煽る材料にしかならない。

「可愛くおねだり出来たらたらいいよ」
「……み、みやのね、ここいっぱい…奥まで……突いて欲しぃ、ひ、あ゙ッ……!」

 恥ずかしそうに自分の手で恥部を開いておねだりをする姿に我慢なんえ て出来る筈もなく、言い終わる前に自身を沈み込ませれば突然の事に何も分からなくなったのか、目を白黒とさせ声にならない言葉を発している。
 浅く息を吸い、はくはくと口を動かし息を取り込むそんな姿に更に興奮してしまうなんて、いつから俺はそんな趣味に目覚めてしまったのだろう。
 それもこれも普段はツンケンしているくせにセックスの時になれば、どろどろに蕩けて虐めて欲しいなんて顔をしている都のせいだ…なんて言ったら多分怒られてしまうだろう。

「さえので、おなかいっぱい…」
「苦しい?」
「ううん、きもちくて、……サエのこといっぱい感じれて、すき」
「ふふ、そっか。俺も都のこと、好きだよ」

 彼女が気持ちよくなっている時、一人称が幼い頃と同じの「みや」に戻って素直に俺を求める、正直そんな姿が愛おしくて堪らない。俺しか知らない彼女の姿に充足感。
 都の手を捕まえてシーツに縫いとめる。手をぎゅうと握れば嬉しそうに笑うから俺までにやけてしまう。
 グリグリと奥の方まで擦り付けるように押し付ければ「ひっ、ぅ」なんて小さく悲鳴をあげながら逃げようとする。

「都、逃げるな」
「あ゙ッ……ゔぅ…ひぁッ、!」

 腰を掴んで引き寄せる。いつもは使わない、少し強めの言葉を使えばナカがきゅうっと締まるのは、そういうのが好きなのかもしれない。

「反対向いて?」
「ぅえ…ばっくやだ…」
「ダメだよ、ほら」

 一度自身を抜いてから体勢を変えるように促すけど、イヤイヤと半分しか横に転がらない都。
 ぺちんと軽い力でおしりを叩けば「ひぅ、んッ」なんて甘い声を漏らす。

「ほら、早く」
「……バックでしたら、おなか…ぎゅーって痛くなる…」
「俺が酷くしたこと、ある?」

 少し考えた後、ふるふると左右に首を振って覚悟を決めたのか四つん這いの体勢になる。おしりを上げればヒクヒクと動く秘部が丸見えだ。
 枕に顔を埋めた都はグズグズと鼻を鳴らす。どうも都は後背位が苦手らしい。
 そういえば、膣には付き方があるらしく前寄りになっている人は後ろからの挿入が少し難しく、そのせいもあってちょっとだけ辛くなるようだ。もしかしたら都もそうなのかもしれない、今度確かめてみるのもありだろう。
まあ、それでもすんなりとナカに招き入れられた辺り、充分に解れていたからなんだろうけど。

「あ゙……ふっ、う……」
「大丈夫?」
「おなか、ぎゅうぎゅうす…りゅ…あ、ひッ」

 ぺちんとおしりを軽く叩けばぎゅうぎゅうと痛いくらい締め付けられる。両手でおしりを触りながらゆっくりと抽挿を続ければ、征服欲がジリジリと湧いてきて少し危険な扉が開きそうだ。
 このまま自分の欲のままに動けばどうなるのだろうか…いや、俺を信じてくれている彼女に酷いことはしたくない。
 正直な所、都はこの体勢苦手みたいだけど俺は視覚的にも気持ちよさでも割と好きだ。だからもう少し……だなんて思うけれど、ひぃひぃと肩で息をしている都からは限界も感じられて。

「よく頑張ったね、都。おいで、ぎゅーってしよう」
「ゔ〜……さえのばか、」

 彼女から離れて横に転がる。ぽんぽんと頭を撫でれば涙目で耐えていたのであろう都がボロボロと涙を流した。
 ぎゅうっと抱き締めてやれば「ばーか、ばーか」なんて小さく抗議しているけど、その姿も可愛くて仕方がないのだ。

「無理させてごめんね。もうおしまいだから大丈夫だよ」
「……もうおしまいなの?」
「都に無理させちゃったから今日はおしまい」
「やだ、…サエも気持ちくなって欲しい」

 上目遣いにうるうるとした目で見られてしまえば、正直めちゃくちゃにしてやりたい……なんて汚い欲望が顔を覗かせてしまうからあまり煽らないで欲しい。
 俺に気持ちよくなって欲しいと言ったものの、どうするつもりか。都はふにゃふにゃの頭で考えて、やっと思い付いたのかゆらりと身体を起こす。

「く、口でします」
「……ほんとに言ってる?」
「ほ、ほんとだもん!」

 本当に俺は満足だったし、もしなにか続きをするのであればあとはもう一度身体をひとつにするくらい思っていたのに。
 頼むことが元々無かったとはいえ、今まで頑なにしようとしてこなかった、いわゆるフェラ。
 手で……なんてことはあったけど、まさか都自身が提案してくるなんて思いもよらず、ほんの少しの期待だけで自身がまた熱を取り戻してくる。

「やって、みて…いい?」
「いいけど…、やったことないよね?」
「あ、当たり前でしょ!?」

 まあ、それもそうか。俺以外で経験があったとすれば、小一時間問い詰める程度では済まない。
 少し怒りながら都はいきり立つソレにそっと手で触れる。すべすべとしたほんの少し冷たい指に触られてぴくりと身体が揺れる。
 ごくり、都の喉が上下したのがよく分かる。ゆっくりと近付いてくるくちびる、吐息が当たってそれがちょっとだけ擽ったい。試すように、先端に軽いキスを落とされて、ソコで触れたことなんて無い柔らかい感触が珍しく、気持ちよくて少しだけ眉を顰める。
 一度離れていったくちびるはゆっくりと開き、生暖かい空気がまた自身を撫でつける。そのまま一拍置いた後、意を決したようにパクリと先は都の小さな口に食べられてしまった。
 温い口の中はぬるりとしていて、思わず都のナカを思い出すけれど、でも、あのナカとは違い口には自由に動き回る舌がある。

「う…ふッ……」
「んんっ…しょっぱ、」

 所謂我慢汁と呼ばれるものはやはりしょっぱいらしい。体液だし、そうだろうけど。
 都は一度口を離して少しだけ舌を出す。

「やめてもいいんだよ?」
「…したくてしてるから、止めないで」
「……うん、分かった」

 ……どうやら彼女の決意は固いらしい。
 舌を出してべろりと竿の裏側を舐める。突然の感覚にぞわりと背筋に何かが走りびくりと揺れてしまった。そんな俺の反応が珍しいのか面白いのか、初めての癖にしては積極的に口を動かす。
 垂れる涎を吸うためか、じゅるりと軽く吸われてしまい自分でも驚く程に甘い声が漏れ出てしまう。そんな声を聞いた都も驚いたのかピタリと動きを止める。

「…っ、すけべ」
「んなっ…!」
「…冗談だよ」
「すけべはそっちでしょ!」

 そうも言いながらまた咥え直してしまう都の方がすけべだと思うんだけど。
 頭を撫でながら軽く髪を梳いてやる。都の髪は昔と変わらず長く、艶やかな烏の濡れ羽色。こちら側に垂れるインナー部分を手に取る。
 今でこそ、真っ黒な髪をしているが少し前までインナー部分は他の色で染まっていた。いきなり染めたかと思えば一年程度でもう満足したらしく、少し前に色が抜けきっていたインナー部分を真っ黒に戻しえいた。
 地毛部分に比べれば少し絡まりやすくなっているけど、それでもブリーチで何度か色を抜いて染め直した割には綺麗な髪をしている……と思う。 
 ここ数年は俺自身も一緒に手入れをさせて貰っているが、手触りが良いからずっと触っていたくなる。
ふと、都に目を落とせば満足そうににまにまと笑っているのが見えた。

「都、初めてなのに上手で偉いね」
「…褒めても、なんも出ないよ」

 出なくてもいいし、寧ろ君が嬉しそうに笑う顔を見ることが出来れば俺はそれで満足だ。
 少し楽しくなってきたのか熱心に舐めている都のくちびるをじぃっと見つめていれば、ほんの少し口が寂しい気がして。

「ねえ、キスしたい」
「えっ、サエの、その……舐めた…口だよ?」
「都だから良いんだよ」
「訳わかんな、んっ」

 目線を合わせた都をそのまま押し倒し夢中でくちびるを重ねる。
 さっき、都にキスが好きとか言われたけどほんとに好きかもしれない。もちろん都とだけ、都だからというものはあるけれど、キスひとつでころころと表情を変えてしまうのは何度見ても飽きないものだ。
 角度を変え、自分から求めてくれる都に余計興奮して歯止めが効かなくなってしまいそうだ。
 破裂しそうなくらいに痛い、めちゃくちゃにしてやりたいなんて少しの酷い欲がフツフツと湧いてきてどうしようもなくなりそう。そう考えていればすっと伸びた都の手は俺の自身を触り、恥ずかしそうに顔を赤らめなが口を開く。

「は、やく…したい……かも」
「どうなっても知らないよ?」
「も……好きにして、ください…!」

 もう限界と言わんばかりに真っ赤にした顔を横にぽてんと倒して「ん!」なんて身を差し出す都。
 煽るのが本当に上手で困ってしまう。いつこんなことを覚えたのか逆に不安になってきた、でもきっと、それを無意識のうちにやっているからタチが悪い。
 ゴムの封を切り本日二度目の装着、何度か扱いて入口に当てればぐちゅりと厭らしい水音。早くしろと言わんばかりに自分の人差し指を食みうるうるとした瞳で訴える都。
 そんな目に抗えず、ゆっくりと怒張したそれを沈めていけばすんなりと全て入ってしまう。
 きちんと慣れるまで動かないでおこうかとも思ったけれど、我慢の限界か自分の気持ちいいところに当てたいのか、都自身が腰を浮かせ小さく喘ぎながら息を荒くする。

「動いてもいいの?」

 こくこくと頷く都を信じてピストンを始める。ゆっくりと抜いては挿すを繰り返せばナカはうねり、悩ましい声をあげては身体が揺れる。
 それと同時に上の突起を弄ってやれば更に嬌声は勢いを増して、縋るように俺の背中に手を回した。

「爪、立てて大丈夫だよ」
「やぁ、っ…!こじ、ろぉのせなかぁっ…きずついちゃ、うぁ…」
「…はっ、平気だよ。大丈夫、寧ろ付けて欲しいくらい……っ」
「んっ…きもち、こじろうの…おっきくて…っ、ナカごりゅ、って、す……!」
「みやこ…っ、奥のとこまでぎゅうってした…い、っ、」

 奥にゴリゴリと擦り付けるように押し付けてやれば、涙を浮かべながらふるふると首を振って俺にぎゅうっと抱きつく。

「あ゙ッ…! ゔ〜っ、おなか、ごりごりしゅ…る、もぉ、やぁ…!」
「っは、きもちいくせに」
「ひッ…!すき、これ好きぃ…」
「素直で、可愛いよ……っ、ふ」

 きゅうきゅうとナカを締め付けられ自身が痛いくらい気持ちいい。
 「あッ、あぅ」なんて、少しずつ息が荒くなっていく都。こうなってくると彼女の果てる瞬間が近くなっている頃で。
 寸でのところで止めて焦らしてもいいけれど、今回は俺が持ちそうにないから。

「イ、きそッ…こじろ、ちゅうして…?」
「ん……自分で、言えてッ……えらいね、」

 くちびるに吸い付けば嬉しそうに笑う都。繋いだ手をぎゅうと握って、腰を動かすスピードを徐々に早める。
 口を真一文字に結んで声を我慢するように「んッ」と隙間から漏れ出る声では物足りない。

「声、聞きたい…っ、」
「んえっ、ら、らひふ…んッ、あ、イッ……」

 口の中へ指を突っ込んで強制的に開かせれば我慢していたであろう嬌声はダダ漏れで、恥ずかしいながらも気持ち良さそうに喘ぐ都に思わず心臓がぎゅっとなる。
 早く、気持ち良くなってとろとろに蕩けてしまって惚けている顔が見たい、そんな一心で己の欲のままに動けば腰に回っていた都の足がぎゅうっと俺を抱きしめる。

「こじ、ろ…ぅ!すきっ、だい、すッ…んッ、あっあッ、」
「んッ、俺も…好きだよ、ッ…だぁいすき」
「あ、やぁっ ふ、イっ〜、く、あッ…!」

 全身がびくびくと痙攣して俺に縋るように抱き着く。同時に俺自身も火花のように一瞬のうちに快楽に達し、ゴム越しに欲を吐き出す。
 未だにぴくりと肩を跳ねさせて荒い呼吸の都。もう少しだけ、くっついていたいけど重いだろうしなんて気怠い体に鞭を打って都の上から退く。ほんの少し、名残惜しそうな顔をしていたように見えたけど多分…気のせいだろう。
 彼女のナカから既に少し萎えつつある自身を抜いて、欲の溜まったゴムの口を縛る。お風呂に入ったばかりだったのにお互いの汗と体液でぐちゃぐちゃだ。

「都、大丈夫?」
「んっう…、へいき」
「眠たい?」
「……ちょっとだけ」

 疲れきってしまったのかまた微睡み始めてしまつた都。ふたりの体液でベタベタになってしまった彼女の秘部をせめて拭おうと、ウエットティッシュを持った手を伸ばせば、ぱっと気付いたよう「あ、だめ!」なんて声を上げる。
 急に言われても止まれるわけもなく軽く触れてしまったかと思えば都はまた小さく艶かしい声を漏らす。
 ……まさか、少し触れただけなのに軽くイってしまったのか。

「…イった?」
「う、まだ……きもちいの終わってないの!」

 ……少しの出来心でつぅと彼女の身体で弱い部分なぞれば身体をまた跳ねさせて甘イキして、怒ったようにこちらを睨みつける。だけど、とろんと気持ちよさそうにしながらの怒った顔はさして怖くはない。
 正直、こんな反応をされてしまえばまた自身をナカに挿れて揺さぶって、彼女が気持ちよくのに善がる所をずっと見ていたいけれど、流石にそんな事をすれば次の日は口を聞いて貰えないのは確実で。
 それでもムラムラと来てしまったのものはどうしようもなくて、それを解消するようにまた身体をなぞってみたり息を吹きかけてみたり。
 そうすればまた気持ちよさそうに「あッ」なんて声を上げるのだから、それくらいで我慢出来ている俺を褒めて欲しいくらいだ。

「もっ、怒る…よ……!?」
「ごめん、やりすぎたね。悪かった」

 感じ過ぎて疲れたのかぐったりとした様子で力なくも怒られてしまい、流石に調子に乗りすぎたかな…なんて反省。
 こんな素直な反応が見れるのはこういうことをしている時だけだから、やりすぎてしまったかもしれない。機嫌を取るように優しく頭を撫でてやれば満更でも無い顔で「まあ、良いけど…」なんて呟く。

「汗……ちょっと気持ち悪いけど疲れたしもう寝ちゃおうか」
「ん、起きてからお風呂入ればいいよね、それで」
「でも風邪ひいちゃうから、服だけでも着ようか」

そこら辺にかけてあった都のパジャマだと思われるTシャツを取る。都にそれを着せてから自分も同じくTシャツを着る。
 もう半分寝落ちている都のおでこにキスを落として「おやすみ」と声を掛ければ言葉にならない声で何かを呟いたあと、すぐにすぅすぅと寝息が聞こえ出す。
 横に並んで目を瞑れば、案外自分も疲れてしまったのかすぐに深い眠りに落ちた。


────────


 少し眩しい光でゆっくりと意識が覚醒する。
 まだ眠たい目を開けて時間を確認すればもうすぐ時計は午前十時半になろうとしていた。休みで良かった、なんて身体をゆっくりと起こせば隣で眠っていた都も目を覚ます。

「おはよう、よく眠れた?」
「んん゙っ…、ゲホッ…お゙…あ゙……?」
「ど、どうしたのその声、……あっ、昨日…!お水持ってくるから待ってて!」

 とんでもなく掠れた声で、なんで?と言ったようにきょとんとしている都にびっくりして、ふと昨晩のことを思い返す。
 そうだ、声が聞きたくて沢山声を出させてしまっていたから……多分。そんな事を思い出して、大慌てでキッチンに向かえば少しガサツいている大きな声を上げて笑う都。

「はい!お水。ごめんね、昨日……」
「ふ、あはは!サエ、慌てすぎ!フルチッ、ふっ、あははは!」

 慌てていて気が付かなかったけど、そういえばお風呂上がりにそのままベッドへ来てしまったし、下着を履くのを忘れていた。
 ……ちょっと、いやかなり恥ずかしいな。

「…笑いすぎ」
「んふ、いやぁ笑った笑った」

 笑いすぎなのか目元に涙を浮かべながらゴクリと水を飲み下す。
 コップをベッドサイドに置いて「は〜、お風呂入ろ!」なんて言いながら大きく伸びをして、ベッドから降り立ち上がろうとするけどよろりとよろけてそのままベッドへ逆戻りする都。

「……立てないんですけど」
「……ごめん。怒らないで?」
「もー、お風呂行けないじゃん!」
「ほら、手貸して」

 立ち上がらせてやればよたよたと歩く都が面白くてぷっと吹き出してしまう。じろりと睨まれてしまうけど、面白いから仕方がない。

「お風呂一人で入れる?」
「入れます!」
「そうか、残念だなぁ」
「残念って何……!?」

 そう言ってTシャツを洗濯機に投げ入れ、また一人よたよたと浴室に入っていってしまう。
 さて、都がお風呂に入っている間にシーツ類を洗って、遅めの朝ごはんでも作ってあげようか。大きく伸びをする。今日は気持ちの良い快晴で、良いお休み日和になりそうだ。


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