「ただいま」の声が聞こえて出迎えに行ってみれば、珍しく窶れた顔が飛び込んできてびっくりして固まる。

「……サエ?」
「…ん?」
「えっと、その。大丈夫?」
「んー…ダメかも」

 これまた珍しくしょんぼりと笑ったサエの顔に胸がぎゅうっと痛くなる。
 サエがこんな風に落ち込んでいるとこを見るなんて全然ないから、正直どうすればいいのか分からない。

「えと、とりあえずリビング行こ?」
「うん」
「だいじょ…ばないか。荷物貸して。ほら、いこ」

 鞄を取り上げてそそくさとリビングに戻って鞄を置く。
 お風呂沸かしてあげた方がいいかな、どうしようなんて考えながら振り向けば至近距離に居たサエに驚いて「わ!」なんて声を上げてしまう。それでも特に反応のないサエが本気で心配になってきた。

「ねえ」
「な、なに?なんかしようか?」
「じゃあ少しの間大人しくしといて」
「わ、……うん、いいよ」

 何をするのかと思えば、すっぽりと抱き締められてしまいグリグリと首元に顔を埋めるサエ。
 甘えてくるのは珍しくないけれど、こうも弱っているところを見せられると困るな。背中に手を回しポンポンと撫でてやれば少し満足したのか「ありがとう」と呟いたサエ。
 たまには、こんな風に甘やかしてやってもいいかもしれない。

「いいんだよ、いつでも頼ってよね」
「…愛してる」
「私も」


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