土曜日の朝なのに、なんで私は学校に来ているのだろうか。休みだというのにわざわざ早起きまでして、指定された時間に来てみれば見覚えのある茶髪がふたり。
 何やら話し込んでいるみたいだけど、見ないふりをしてもう帰ってもいいだろうか。

「あ、都! 久しぶり!」
「げっ」

 パチリと目が合ったと思えば一目散に駆け寄ってきたのは佐伯虎次郎。幼馴染その一で、小学校に入る前に引っ越してしまい、現在は千葉県の六角中に通っている。
 「久しぶり」なんて言われたけど、なんだかんだ月に一回以上は会っている気がする。

「あれ、都…どうしてここに?」
「…おはよう不二くん、それはサエに呼び出されたからだよ」

 不思議そうな顔をしこちらに近付いてきたのは幼馴染その二、不二周助だ。これとは幼、小、中が同じでサエより一緒にいる時間は長い。
 だけどこのルックスからファンの女の子が多く、関わると面倒だからあまり近寄りたくない男だ。

「僕が誘っても来ないのに?」
「サエは面倒じゃん。後が」
「確かにそうかも」
「酷いなぁ、そんなことないよ」

 悪びれた顔もせず笑う幼馴染。
 ただの合同練習でテニス部に一切関係のない私が呼び出されたのは本当に意味が分からないから早急に帰らせて欲しい。

「あ、佐伯。樹くんに呼ばれてるよ」
「次は俺たちの番か。あっ、都」
「なに」
「絶対に俺だけを見ててよ ね」
「ハイハイ、早く行ってきな」

 そう言ってニコニコと手を振るサエ。
 サエのいつもの構ってちゃんのような発言を適当にあしらって手を振り返す。その様子を見ていた不二くんは徐に口を開ける。

「昔から佐伯は変わらないね」
「うん。構ってちゃんだけは変わらないよね」
「…ふふ、これは佐伯も大変だな」
「何が?」

 訳が分からなくて不二くんの方を見れば「なんでもないよ」と言ってまた笑っている。
 サエの何が大変なんだろうか。答えを話すつもりのない不二くんは練習に戻っていってしまったし、結局何かは分からずじまいだ。


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